【BDレビュー】第318回『ガールズ&パンツァー 劇場版』


画質:9
音質:13
(評価の詳細についてはこの記事を参照)

映像:AVC
音声:DTS-HD Master Audio 5.1ch/24bit


○画質
 基本的な画の方向性は劇場版と同様。
 突き抜けた解像感はないにしても、デジタルアニメらしい切れ味の良さとなめらかさを上手い具合に両立している。いかにもバンディングが出そうな光の演出でもグラデーションの破綻は特に感じられなかった。
 が、戦車戦の3Dの背景の一部にジャギーが出ているのが気になった。

○見どころ
 大洗のヨハネスブルク


○音質
 ブックレットによれば、『プライベート・ライアン』のTVシリーズ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の劇場版に続き、最終章の音は『ダンケルク』の方向性だそうだ。相変わらずチョイスがえげつない。いいぞもっとやれ。
 『ダンケルク』の方向性、というのは、最初の音からして明快だ。 
 でかでかと映し出されるあんこう。無音。ん? 無音? と思った次の瞬間、最大威力で叩き込まれる砲撃。背筋にびりびりと来る衝撃。まさに『ダンケルク』の冒頭における、突如静寂を切り裂く激烈な銃撃そのものだ。そのまま雪崩れ込む砲撃戦は劇場版に勝るとも劣らないテンションで展開され、全チャンネルのスピーカーが咆哮する。いいぞもっとやれ。戦車の走行音や移動感は劇場版以上に明瞭かつ精緻になったようだ。
 というわけで、戦闘シーンにおける、少なくとも戦車と砲撃の音に関しては劇場版と遜色のない昂揚感が得られる。一方、劇場版にあったカール自走臼砲の一撃や観覧車先輩といった「巨大なもの」は出てこないため、相対的に低音の量は少なく、そこまで部屋の空気が揺さぶられる感覚はなかった。さすがにこの辺のスケール感的には劇場版に軍配が上がる。
 砲撃の量自体は非常に多く、走行音と同様に位置関係(どこへ撃ち、どこから撃たれたか)が劇場版以上に明瞭に感じられたこともあいまって、『デスペラード』といったシューテムアップ映画の音も連想した。「戦車戦」なのに「銃撃戦」をイメージさせるくらいの弾の量って頭おかしい(褒め言葉)。いいぞもっとやれ。
 さて、そんなこんなで戦車の音は期待通り。そして、まったく予想外の大幅な変化/進化があったのが、日常/ドラマパートの音である。
 画面内に複数のキャラクターが並ぶシーンではステレオ音場を目いっぱい使って上下左右に位置関係を演出するなど、とにかく劇場版に比べて声・効果音問わず空間性の向上が著しい。位置的に「後ろから聴こえるべき音」に関しては、ほとんどすべてサラウンドチャンネルに割り振ったのではないかと思えるほどの徹底的な空間構築が成されている。日常シーンにもかかわらず異様な凝り具合であり、全チャンネルを活かした声の演出は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のヤシマ作戦すら連想させた。中盤の主観視点になるところなどは『●REC』とか『DOOM』みたいなテンションである。いいぞもっとやれ。
 こんなことを思いながら見終わった後にブックレットを読んだら、「やっぱりな」という感じである。
 総じて、狂気的な戦闘シーンの連続で音質評価15☆をもぎ取った劇場版に比べて絶対的な威力は低下したが、日常的なシーンでの音の使い方など、作品全体の「音の凝りよう」は劇場版以上である。脱帽。ガールズ&パンツァーという作品は、いい意味で「アニメにおける音響の実験場」になっている感すらある。少々やり過ぎ感を覚えなくもないが、「マルチチャンネル・サラウンドとはこういうものだ」ということをデモンストレーションするために、これほど有用なタイトルもそうそうあるまい。
 第2話以降は是非ともDolby Atmosでの収録を期待したい。

○聴きどころ
 すべて


○総評

 ガルパンはいいぞ



○再生環境(詳細はコチラ

・ソース
Panasonic DMP-UB90

・映像
LG OLED55B6P

・音響(センターレス6.1.4ch)
Pioneer SC-LX59(AVプリとして使用)
SOULNOTE A-2(フロント)
Nmode X-PW1 ×4(フロント以外の全チャンネル)
Dynaudio Sapphire(フロント)
Dynaudio Audience122(サラウンド)
Dynaudio Audience52(サラウンドバック)
ECLIPSE TD307MK2A ×4(トップフロント・トップリア)
ECLIPSE TD316SWMK2(サブウーファー)



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