愚痴の書き散らし。
 何度同じことを書いたかわからない。



 LUMIN A1を導入するにあたり、販売店や輸入代理店とネットワークオーディオについて色々と話す機会があった。


 今さら、というか、今なお、というか、やはり、というか、聞こえてきたのは「サポート」の問題。
 ネットワークオーディオという領域が盛り上がらないのは、サポートの点で大きな問題を抱えているからだということ。

 悲しいことに、私が【音源管理の精髄】で指摘していることを再確認する結果となった。


 国内メーカーに目を向けてみる。
 ネットワークオーディオプレーヤーと言っても、本当にネットワークオーディオプレーヤーの単機能に絞ったプレーヤーは驚くほど少ない。
 多くの場合、スペック的にも位置づけ的にも、USB DAC、あるいはAVアンプやミニコンポの“オマケ”になってしまっている。
 それはなぜか、と考えた時に、この「サポート」という問題が現れる。
 私が常々言っていることだが、“ネットワークオーディオとは決して簡単ではない”。生まれたばかりのジャンルであり、ユーザー間のノウハウの共有や蓄積もほとんど進んでいない。
 メーカーはネットワークオーディオについて「簡単」「便利」「快適」と謳う。絵に描いた餅をひけらかすばかりで、「便利」「快適」をどうすれば実現できるか、そのノウハウをオフィシャルに最初から最後までユーザーに提供しているメーカーは、私が知る限り存在しない。
 なぜ?
 面倒だからだ。
 分からないではない。
 たかだか数万、高くても六桁前半の機器を売るのに、ネットワークの構築からサーバーの設定、コントロールの方法までいちいちサポートしていられない、というのがメーカーの偽らざる本心だろう。オーディオという夢を扱う業界とはいえ、ビジネスはビジネス。理解できなくはない。
 しかし、メーカーとしてノウハウを“提供しない”のではなく、そもそも不勉強で“提供できない”のだとしたら? ユーザーはどうすればいい?
 ……以上のことから、メーカーは当然、“ネットワークオーディオプレーヤーとして使えない・動かない”というリスクを見越して、文句を言われないように、あらかじめ機器にそれ以外の機能も与えるだろう。すなわち、“USB DACとしても使える”という機能を。USB DACなら、よほどのことがない限り、挿せば繋がり、とりあえず音が出る。音が出るまでのハードルはネットワークオーディオに比べて遥かに低い。つまりこの場合、“USB DACとしてもネットワークオーディオプレーヤーとしても使える”という製品は、「攻め」ではなく「逃げ」になってしまう。最初からネットワークオーディオプレーヤーとして勝負する気などないのである。
 この手の製品は売れるだろうし、“ネットワークオーディオの裾野を広げる”という意味はあるかもしれないが、メーカーがユーザーに対するノウハウの提供を放棄している以上、その効果は期待できない。そして実際、裾野はほとんど広がっていない。当然の話だ。



 メディアに目を向けてみる。
 基本的にメディアはメーカーと二人三脚を組む以外に何もしていない。
 「簡単」「便利」「快適」と合唱するのみである。
 為すべきことを見て見ぬふりして「簡単」と謳い、ふざけたユーザビリティしか提供できない製品を「便利」と嘯き、そこに到るための道も示さぬまま「快適」とのたまう。
 勿論、オーディオのメディアもビジネスである。メーカーにとって都合の悪いことなど書けるわけがない。そんなことは分かりきっている。
 しかし、良心はないのか?
 散々言っているように、PCオーディオだろうが、ネットワークオーディオだろうが、その前段に共通して【音源】が存在している。そのことについて、いったいどれだけのメディアがいったいどれだけの情報を伝えてきたというのか。音源の存在を無視し、あたかも“ネットワークオーディオプレーヤーを導入しさえすれば快適な音楽再生が手に入る”と喧伝してきたのはメディアであり、業界自身だ。
 その結果、どうなった?
 何も言う必要がない。ただ、辺りを見回すだけでいい。
 生暖かい関係性の上に胡座をかき、伝えるべきことを伝えてこなかった結果が、現状だ。
 可能性は花開かず、ユーザーは離れ、業界は萎む。



 メーカーとユーザーの間に立たなければならない販売店は大変だ。
 メーカーに聞こうにも、肝心のメーカーのサポートがまるで機能していないのだから。
 こうなるともう、販売店はメーカーをアテにせず自前でノウハウを積み重ねていくか、あるいは匙を投げるかしかない。
 販売店も暇ではないし、得意不得意もあって然るべきなので、「こんな手間のかかる製品なんてやってられるか! ネットワークオーディオなんてクソだ!」となったところで誰も責められない。ただし言うまでもなく、こうなってしまってはネットワークオーディオの普及など夢のまた夢だ。
 ちなみに私の手元にはNetAudioが全巻揃っている。この雑誌には毎回「全国のPC/ネットオーディオマスター」という特集が組まれているのだが、そこに登場する販売店の数は、創刊号に比べてどうなった?
 販売店がネットワークオーディオプレーヤーを取り扱う時、取り得る選択肢がもう一つあった。それは“メーカーにサポートを丸投げできる製品しか扱わない”ということだ。この場合、もはやLINNしか残らない。LINN DSの製品としての完成度がずば抜けているのは確かだが、大多数のユーザーにとっておいそれと手が出る価格ではない。となると、やはりネットワークオーディオの普及など夢のまた夢になってしまう。価格的にも性能的にも、LINN DS一強時代が続くだけでは、ネットワークオーディオプレーヤーというジャンルは盛り上がらない。



 メーカーが目に見える形でノウハウを提供しないことで、最終的に不利益を被るのはユーザーであり、ひいてはメーカーやメディアを包括するオーディオ業界自身である。
 目先の利益を追わず、刹那的な売り文句に逃げず、ネットワークオーディオというものに業界がもっと真摯に向き合ってさえいれば……いつもそう思う。
 そしてここで述べた「現状」は、現状であると同時に既に三年以上継続している常態でもある。このことをLUMIN A1を買う際に再認識した。

 私はネットワークオーディオのスタイルこそオーディオの未来であると信じ、可能な限りノウハウの共有に努めてきたし、これからもそのつもりだ。しかし、所詮プログラマーですらない個人の情報発信力などたかが知れている。
 メーカー、メディア、業界が本気で動かない限り根本的な解決にはならない。
 その日が来るかどうかは分からない。

 ただ、座して待つつもりはない。