BDガルパン劇場版

画質:10
音質:15☆
(評価の詳細についてはこの記事を参照)

映像:AVC
音声:センシャラウンド リアルムービーエディション(DTS-HD Master Audio 5.1ch)
20160527ガルパン02


○画質
 デジタル制作のアニメらしいパリッとした解像感と、描線の滑らかさが巧い具合に同居する見事な画。といいつつ少々滑らかさに転びすぎるカットも散見されたが、甘くなるほどでもない。それほど大量にディテールが炸裂する類の映像ではないものの、とにかくあるものをすべてが漏れずぼやけずしっかりくっきり提示される。
 目に付くようなバンディングは皆無。某600mm臼砲が巻き起こす爆炎はいかにもグラデーション破綻が起きそうなオブジェクトだが、こちらも問題なかった。素晴らしい。
 言うことなし。

○見どころ
 戦車


○音質
 ガルパン劇場版の音に関して比較言及されることが多かった『プライベート・ライアン』『マッドマックス 怒りのデスロード』、そして戦車繋がりで『フューリー』
20160527ガルパン01

 皆最高クラスの音を誇る作品である。特に『プライベート・ライアン』はもはや神話級。
 こんな化物連中と同じ文脈で語られてきたガルパン劇場版の音に対する私のハードルも、これ以上ないくらいに高まっていた。
 そして……

 こりゃ参った。
 とてつもない威力だ。
 私の視聴環境における音量を参考としてあげれば(ほんのりネタバレ注意)、


・冒頭30秒足らずで戦車砲が100.7dB
参考:『パシフィック・リム』より、ジプシー・デンジャーのエルボーロケット直撃が97.4dB
 
・カール自走臼砲の砲撃・着弾が101.2dB
参考:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のラスト近辺のタンカー大爆発が99.5dB

・最後の一撃(二撃?)のシークエンスが101.4dB
参考:『GODZILLA』の放射熱線が100.9dB

・観覧車大暴れが102.9dB
参考:『プライベート・ライアン』のティーガー戦車の駆動音が102.4dB

・砲撃されたロケットがメリーゴーランドに激突粉砕するシーンが103.5dB
(今回の計測ではこれがピークだった)
参考:『GODZILLA』の咆哮が103.2dB

参考:『フューリー』におけるティーガーの砲撃は103.4dB、駆動音は104.6dB

※視聴環境の暗騒音はプロジェクターオンで34dB、オフで31dB


 「大きい音」が必ずしも「いい音」であるとは限らないが、ここまでやられるともう拍手喝采である。容赦のない爆音と激震、こんな音をハリウッドの大作ではなく日本のアニメが出すのか、と驚嘆を禁じ得ない。
 砲撃から駆動から激突から何から何まで輝かしく心を躍らせ、戦車の奏でる戦場交響曲は終始絶頂感を維持する。朗々と鳴る劇伴も威力・品位ともに申し分ない。
 キャラクターの声は常にいかにもな強調感が付き纏うが、耳に痛いほどでもなし、明瞭さに富むと好意的に受け取ってもいいだろう。ヱヴァ序もこんなもんだったし。
 サラウンド感も素晴らしい。決して爆音の全方位炸裂だけに留まらず、前方から撃たれた砲弾が後方へ、後方から撃たれた砲弾が前方へ、当たり前のように火線が飛び交って大いに臨場感を高めている。戦車それ自体の駆動音も重苦しく火花を散らしながら縦横無尽に走り回る。
 しかし、マルチチャンネル・サラウンドの全面活用による空間表現はいまひとつ。『ローン・サバイバー』ほど精緻な音響構築があるわけではなく、『フューリー』のような「彼方から飛来する砲弾に撃ち抜かれる感覚」・「目標を逸れた砲弾が恐ろしい響きを尾に引きながら飛び去っていく」という体験もなかった。全体的に空気感と響きに乏しく、シーンによっては露骨な演出なら多々あるものの、あくまで直接音の怒涛の積み重ねによって作られる音響になっている。もっとも、これは究極的なレベルでの話であって、「感覚的に大迫力!」という点では間違いなく両者を凌駕し、『プライベート・ライアン』や『ランボー 最後の戦場』の領域にまで突撃している。とにかく狂気的な高密度、音的においしいところがぎっしりである。しかもそれが後半の一時間近く継続するのだから汗びっしょりだ。
 一方で、ガルパン劇場版の音はたいして怖くない。いわゆるドンパチ系作品の音は極まれば極まるほど死の恐怖を覚えるレベルになっていくのだが、ガルパン劇場版の音は恐くない。やっぱり誰も死なないと最初から分かり切っているからだろうか。
 その代わりと言ってはなんだが、色々な意味で透徹した狂気を感じる。感触こそ違えど、同じ狂気という意味では『AKIRA』以来久しくなかったものだ。

 音質評価を15にするか、15☆にするかで死ぬほど悩んだ。『パシフィック・リム』や『ローン・サバイバー』にすらあげなかった15☆である。
 しかし、他でもない“あの”『AKIRA』の音質的絶対値に到達したこと、そして日本のアニメ作品の新たな地平を見せて(聴かせて)くれたということを記念して、『ランボー 最後の戦場』以来の音質評価15☆を進呈する。
 これをもって、本作のスタッフが成し遂げた偉業を全身全霊で讃えるものである。

○聴きどころ
 すべて


○総評

 ガルパンはいいぞ



○再生環境(詳細はコチラ

・ソース
OPPO BDP-103

・映像
Victor DLA-X30
KIKUCHI SE-100HDC

・音響(センターレス6.1ch)
Pioneer SC-LX85
Nmode X-PM7
Nmode X-PW1 ×3(サラウンドにモノラル×2、サラウンドバックにステレオ×1)
Dynaudio Sapphire
Dynaudio Audience122
Dynaudio Audience52
ECLIPSE TD316SWMK2



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