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【レビュー】日本テレガートナー M12 GOLD SWITCH

 魔境深淵注意

 みんなおこらずに楽しく読んでね。


ネットワークオーディオの魔境を往く


【魔境】ハブで音は変わるか?
【魔境】ハブで音は変わるか? 完結編

【レビュー】JS PC Audio NH100
【レビュー】JS PC Audio HFS1000


 「オーディオマニアとしての私」と「オーディオ趣味の狂乱を冷徹に眺めている私」の間で繰り広げられた過去最大規模の戦いの末に導入した「オーディオ用スイッチングハブ」JS PC Audio NH100は、あっという間に二世代も前の旧製品になってしまった。

 そしてWaversaSystems WSmartHubが登場してヒエーとなり、今回紹介する日本テレガートナー M12 GOLD SWITCHが登場してギョエーとなった。もはやうちのアンプより高いぞ。いまさらながらすげえなオーディオ業界。

 ハブに関しては、JS PC Audio NH100の導入には渋々同意しつつも「音が変わらなかったら覚悟しとけよ」と息巻いていた「オーディオ趣味の狂乱を冷徹に眺めている私」でさえ、既に「変わる」と判断してしまっている。
 とはいえ、「オーディオマニアとしての私」にしても「ハブで音が変わったWhoo!」などと大喜びする勇気があるはずもなく、何かしら意見を求められたら魔境の奥底でぼそぼそと「困ったことに変わっちゃうんだよね……」と呟くのが精々である。
 とにかく、「より良い音を」というオーディオの一側面の追求には畏敬の念を抱かずにはいられない。

 というわけで、あまりの畏れ多さに避けていた感があったけれど、色々あってついに真剣に聴くことになった日本テレガートナー M12 GOLD SWITCHをレビューしたい。



・外観

 ※ハブです


 ※ハブです


 本体。
 硬くて重いが、いわゆるオーディオ機器とはまるで異質な佇まい。


 付属の電源アダプタ。
 定価30万越えの製品に付属するにしては……な代物に見える。


 こういう感想を抱いたのは私だけではなかったようで、こういうものまで登場している。


 「外来ノイズをシャットする完全シールド型サークルコネクタ(M12 Xコード)」(HPより)を採用。ハブとケーブルの接続はねじどめであり、他のいかなるオーディオケーブルよりも強固に行える。そんな気がする。


 片方がM12コネクタ、片方がRJ45コネクタの専用ケーブルが付属する。



・運用所感

 使い勝手は最悪
 「音を良くするためにはいかなる苦行をも受け入れねばならない」という、オーディオ業界の暗黒面を体現するかの如き代物である。

 そもそもオーディオとは無縁の世界で使われるはずの製品をオーディオ用途に使った結果、ある意味で物凄くオーディオらしいことになったというのは実に業が深い。

 まず、特異な形状のせいで各種ケーブルを「上から」接続せざるを得ず、多くの場合、この時点でオーディオラックの中に入れることを諦めざるを得ないと思われる。ラックの上に置く、という選択肢もあるものの、その場合でも常時LANケーブルがにょきにょきと林立する異様な光景を受け入れる必要がある。
 さらに、特殊なコネクタを使っている関係で付属するLANケーブルを使う必要があり、それがとにかく硬い。本体の特異な形状もあいまって配線は困難を極め、頑張って作り上げた空中配線&立体交差を容赦なく破壊し、本体は重さが足りずひっくり返って右に左に大暴れする。「配線なんてきちんと繋がってりゃ別にぐちゃぐちゃでも構わねえよ」と思えるのなら幸いだ。
 本機の設置と接続には細心の注意が要求されるし、設置後に配線を変えることは可能な限り御免蒙りたい。カタログにある「利便性も大きく向上させる」との文言は悪い冗談にしか思えない。

 ただ、まぁ、本機を導入するような人は、きっと配線の難しさがまったく苦にならないほどの広大なラック裏スペースを持っているか、あるいは「音を良くするためにはいかなる苦行も受け入れる」という覚悟をお持ちだと思うので、使い勝手の悪さなどたいした問題にならないのかもしれない。私は……辛かった……



・再生環境詳細

JS PC Audio NH100

fidata HFAS1-XS20
↓LAN直結
SFORZATO DSP-Dorado

Nmode X-PM7
Dynaudio Sapphire


上の状態から、

JS PC Audio NH100

日本テレガートナー M12 GOLD SWITCH
↓↓
fidata HFAS1-XS20
SFORZATO DSP-Dorado


このような接続に変えて聴いた。

私の環境では、「普通のハブ < JS PC Audio NH100 < fidataからLAN直結」の順で音が良くなるため、直接的な競合は「fidataからLAN直結」となる。



・聴いた曲

Nicogi / DigiFi No.28付録音源 / Akatonbo
Kygo / Kids in Love / Kids in Love
Sam Smith / The Thrill Of It All (Special Edition) / Too Good At Goodbyes
Eagles / Hell Freezes Over / Hotel California
Radka Toneff / Fairy Tales / The Moon Is Harsh Mistress
Corrinne May / Beautiful Seed / Leaving
Iona / Beyond These Shores / Treasure
奥井亜紀 / 魔法陣グルグルのサントラ / Wind Climbing ~風にあそばれて~
etc…



・音質所感

 なんでこんなに音がいいんだ……

 「Akatonbo」「Hotel California」「Treasure」など、「もうちょっと音に厚みが出ればいいなあ」と思う音源には見事に厚みが出る。そして「なんだ、元々じゅうぶんに厚みがあったんじゃないか」と気付く。
 「Kids in Love」「Leaving」「Too Good At Goodbyes」「Wind Climbing ~風にあそばれて~ 」など、「もうちょっと音に滑らかさが出ればいいなあ」と思う音源には見事に滑らかさが出る。そして「なんだ、元々じゅうぶんに滑らかだったんじゃないか」と気付く。

 さらに解像感が高まる。「Kids in Love」「Treasure」などでは、音の分離がかつてないレベルとなり、コーラスや各楽器が重なり合う部分の「間隙」が如実に見えるようになる。結果、描き出される空間の立体感、ひいては音楽全体の情報量が増大する。

 低音がどうとか、高音がこうとか、機器として「音の傾向」と呼べるようなものが一切なく、「ただ良くなる」

 JS PC Audio NH100を導入した際の「これ以上何も気にする必要がない」という安堵は細切れになって消し飛んだ。
 今でもハブを変えることの意義は「プラスに転じさせる」ことではなく「ボトルネックを減らす=マイナスを減らす」ことだと思っているが、つまりまだまだマイナスを減らす余地があったということか。しかも「電源を変える」という、すぐ目に見える余地すらある。

 遥かな異界より出現した、ネットワークオーディオのシステムの音質を劇的に改善するブラックボックス。
 これが、日本テレガートナー M12 GOLD SWITCHに対する正直な感想である。


 歴然たる差に「オーディオマニアとしての私」は感激、「オーディオ趣味の狂乱を冷徹に眺めている私」も口あんぐり。なにせ両者の耳は同じなので、やはり良いものは良いと感じるのだ。

 ここまでの違いを聴いてしまうと、無限の資金力があれば(勿論そんなものはない!)使い勝手の悪さを度外視してでも導入してしまいそう。
 それどころか、総額七桁以上のシステムでネットワークオーディオを実践している人にとって、かなり現実的な投資対象になり得る。

 というより、聴いている最中に「どうすれば使い勝手の悪さを克服できるか」なんてことをわりと真剣に考えてしまった。



 写真のとおり、本機にはいかにも「ねじ止めしてください」と言わんばかりの部位が両端から伸びている。
 それを使って、じゅうぶんな重さのある台座的な何かにねじ止めすれば、まず本体が転ばないうえにケーブルを横差しできるようになり、使い勝手はある程度改善するはず。

 つまりこういう感じの……



 買ったらどうにかしてコレを作りたい。
 本体の形状を抜本的な変えた新型が出るというなら話は別だが。



 ……ハッ!

 私にそんな資金力はなかった……



 あと、何度も言っているけれど、この手の製品やこの手の記事をもって、ネットワークオーディオそのものに失望するということだけはどうか勘弁してもらいたい。

 少なくとも私が考える限り、ネットワークオーディオの本質は別にある。



【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

【レビュー】 視た・聴いた・使った・紹介した機器のまとめ 【インプレッション】

【Roon】関連記事まとめ

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