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【魔境】ハブで音は変わるか? 完結編

 魔境深淵注意。


ネットワークオーディオの魔境を往く


【魔境】ハブで音は変わるか?

JS PC Audio NH100


 私の中では、理性と常識と現実に従う「私」と、より良い音を追い求める「オーディオマニアとしての私」が終わりのない戦いを繰り広げている。可能な範囲で妥協なくシステムを構築してクオリティの向上を図るのが「オーディオマニアとしての私」であり、その成果をもってコンテンツを楽しむのが「私」という構図である。オーディオとは言いつつ、これはビジュアル面も含んでいる。
 画質音質の向上で一定の成果を得ると、「オーディオマニアとしての私」は満足して休眠状態に入り、「私」は心置きなく楽しみと感動を得る。そして「私」が現状のクオリティに慣れ始める頃、また「オーディオマニアとしての私」がもぞもぞと蠢き始めるのである。

 「私」の意識はクオリティの向上ではなくもっぱら「楽しむ」という行為に向いており、その意識は「音質云々を言う前にやることがあるだろ!」ということで、【音源管理の精髄】&【ネットワークオーディオTips】を作り上げる原動力ともなった。

 「オーディオマニアとしての私」は言うに及ばず、なんだかんだ言って「私」もオーディオが大好きで仕方がない。
 音が良くなること、良い音を追求することはそれ自体で楽しい。そりゃもう最高に楽しい。そしてそれを楽しいと思う時点で、私は間違いなくオーディオマニアである。
 しかし、オーディオという趣味の素晴らしさを知り、その発展と拡大を願う者の一人として、「私」は「オーディオマニアとしての私」を細心の注意を払って警戒し、監視している。世間一般の常識からあまりにも乖離した「音質の追及」それ自体にのめり込み、「楽しむ」という側面をあまりにもないがしろにしてしまったことこそ、昨今のオーディオ趣味の凋落を招いたと考えているからだ。
 立ち位置の自覚とバランス感覚。せめて自分は同じ轍を踏まないようにしたいのである。それが達成されているかどうかは限りなく謎だが。


 さて、「○○で音が変わるらしい」という情報を耳にするたびに、「オーディオマニアとしての私」はあっという間にざわざわと心落ち着かなくなる。で、「私」に「まったく、これだからオーディオマニアは……」と呆れられ、批判され、経済的現実を突きつけられ、我に返り、しょぼくれ、束の間の落ち着きを取り戻す。それでも火は燻り続ける。

 一方で、楽しむ主体である「私」自身、オーディオ・ビジュアルがもたらす楽しみや感動は「オーディオマニアとしての私」の妥協なき姿勢の結果もたらされたものだということは理解している。そのため、「まったく、これだからオーディオマニアは……」と思いつつも、やれるだけのことはやってみる。出せる範囲で投資もする。そんなわけでLANケーブルも換えたしWAVとFLACの比較もしたのである。

 とはいうものの、スピーカーのセッティングなど、オーディオの文脈で常識として語られている領域ならばさておき、「私」が【魔境】と認識した領域に関しては、「私」は基本的に「変わるはずがない」・「変わってたまるか」という姿勢で検証に臨んでいる。それどころか、正直なところ「変わらないでくれ」とさえ思っている。「せっかく金を出したんだから良くなってくれ、頼む!」などと願ってはいない。
 実際に検証して、もし本当に変わってしまったのなら、「変わらない」と言い張ることが自分自身に嘘を吐くことに他ならないのだとしたら、その時は素直に受け入れるのみ。もし変わらなかったら、それはそれでこれ以上投資する必要がなくなるので実に喜ばしい。とりあえず検証に必要な資金があれば、あとはどっちに転んでもいい。
 誤解してほしくないが、別に変わってもいいのである。本当に音が良くなるのなら、「オーディオマニアとしての私」だけでなく、「私」だって嬉しいのである。

 ただし、それはあっという間に新たなオーディオ無間地獄の始まりとなる。しかも、音を良くするために「楽しむ」という行為を犠牲にしなければいけないようなことにでもなったら最悪だ。「オーディオマニアとしての私」でさえ、音が良くなったやったぜと喜びながら、内心では恐ろしさで一杯になる。


 そんなこんなで、この【魔境】において、私は最大限の疑念と恐怖と共に各種の検証を行い、その結果を表明している。
 「変わる」と言えば「馬鹿じゃねーのwwwwwww」と嘲笑され、「変わらない」と言えば「糞耳糞機材なだけだろ」と罵倒される。

 つまるところ、この記事は魔境でのたうちまわることそれ自体を楽しむ、あるいはその様を深淵の縁から覗き込んで笑い飛ばす、ただそれだけの話である。



 それでは。



 ハブで音は変わるか?



 JS PC Audio NH100の通電も300時間を越えたし、そろそろいいだろう。

 今まで使ってきたコレガのBSW08GTXとJS PC Audio NH100。
 前段のハブからのLANケーブルと、LUMIN A1とLUMIN L1に繋がるLANケーブルを繋ぎ変えながら、好きな曲を聴いた。



 ○再生環境

LUMIN A1
LUMIN L1(SSD 1TB)
Nmode X-PM7
Dynaudio Sapphire


 ○音源
20160630ハブ01



 ハブで音は変わるか?



 ………



 ……



 …



 変わる



 変わった。変わってしまった。
 NH100で喜ばしいことに、良い方向に。


 検証時に書き殴ったメモの内容を書き出すと、

「低音の沈み」「情報量(特に響き)」「高音の伸び(ピアノの透明感)」「フツーのハブでは音が間引かれたようで音と音の間の隙間が広く、結果的にコントラストが高く聴こえる」「雑味が減り、S/Nが良くなることで真に高コントラスト化」「左右の広がり」「音のキレ、存在感」「雑味が減って見通しが良くなる、音がほぐれる≒解像度の上昇」「S/N向上」「声の伸び(天井が一段高くなる)」「色彩感と躍動感」「全体的なエネルギー感の向上」

 とある。うーむ。
 「変わらないでくれ」という姿勢で臨んだうえでこんな有様なのだから、少なくとも自分の感性に対して結論で嘘は吐けない。
 無論これらの変化はすべての曲で一様に起こったものではなく、曲によって変化の幅も大小あった。
 全体的にはQNAP TS-119にアナログ電源を入れた時のような変化である。

 ただし、改善があった(と感じた)ことは事実でも、これらは「激変!」などと仰々しく騒ぎ立てるほど大層なものではない。そうそう簡単に激変してたまるか。

 そもそもハブ(スイッチングハブ)なんてものは、ネットワークオーディオにおいてシステムの構築上使わざるを得ないから使っているセレクターみたいなもので、ハブの使用によって音に何らかの影響があるとしても、少なくとも「良くなる」ことはないと思っている。
 ならば、スイッチング電源の存在やら何やら、せめて悪影響を減らそう、ボトルネックを排除しようというのがJS PC Audio NH100を導入した動機だった。
 そして幸いにして、システムにおけるマイナスは見事に減った。


 こうして、「オーディオマニアとしての私」は(結果的に)音が良くなって満足し、「私」もNH100のおかげで自分の中のハブ議論を打ち止めにすることができ、安心した。安心は大切である。

 JS PC Audio NH100は、ハブとしてこれ以上何も気にする必要がない
 これはある意味、現時点で私にできる最上最高の音質評価である。

 もっとも、価格的に「これ以上あるまい」というのはコレが登場したおかげであっという間に過去のものとなってしまったが。ま、オーディオなんてそんなもんだ。



 ハブで音は変わる。

 が、別にそんなもん気にしなくてもいいよ



【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

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