【音源管理の精髄】の「はじめに」において、私はネットワークオーディオの基礎基本となるノウハウの提供や蓄積にはまるで力を入れないくせに、実体の伴わない「快適性」や、むやみやたらな「音質向上」ばかりを喧伝するオーディオ業界にひとしきり文句を言わせてもらった。
 「LANケーブルで音が変わる」「NASで音が変わる」とかなんとか言い出す前に、やらなくちゃいけないことが腐るほどあるだろ! というのが私の論だ。

 そんな現状をほんの少しでも改善できればと、【音源管理の精髄】などという仰々しいタイトルで記事を延々と書いてきた。そして、9章『クラシック音源の管理運用』をはさておき、基本的にコンテンツは完成した。ネットワークオーディオで「快適な音楽再生」を手に入れる上で、理解すべきこと・把握すべきこと・実践すべきことをある程度網羅できたと考えている。

 というわけで、「やらなくちゃいけないこと」を達成したと判断し、あえて触れてこなかった領域に足を踏み入れようと思う。
 具体的には、

・LANケーブルで音は変わるか?
・WAVとFLACで音は変わるか?
・リッピングソフトで音は変わるか?
・サーバー(ハード)で音は変わるか?
・サーバー(ソフト)で音は変わるか?
・ハブで音は変わるか?
・有線と無線で音は変わるか?

 といった「魔境」である。
 魔境と言いつつ、PCオーディオやネットワークオーディオの文脈で数限りなく登場するトピックでもある。

 【音源管理の精髄】では客観的な検証により、第三者の環境でも再現可能で、なおかつ参考にもなるノウハウの蓄積を目指した。
 ところが、上で示したような問題は、もはや主観でしか判断できない。【音源管理の精髄】の記事で書いきたような、「△△というソフトで〇〇というボタンをクリックすれば◇◇という挙動を示す」といった客観的事実は何一つとして存在しない。ただ、自分がどう感じたかというだけだ。

 それゆえの「魔境」。
 しかし、そうだからこそ、オーディオは面白い。

 私も一応オーディオマニアの端くれとして、音質を追求したいとの欲求は当然持っている。
 また、上記の領域に頭から突っ込んでいく気はないが、試しもせずに結論を出したくはない。最後に判断するのは感覚だとしても、きちんと検証することには価値があるはずだ。
 音が良くなるならそれに越したことはないし、変わらなかったら変わらなかったでそれはそれ。自分の中で明確な理解が出来上がるわけで、無駄にはならない。


 私なりに魔境を歩いてみようと思う。



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