画質:10
音質:限りなく15と同質な10
(評価の詳細についてはこの記事を参照)
映像:HEVC 65mmフィルム/IMAX撮影・4Kマスター
音声:DTS-HD Master Audio 5.1ch/16bit
○画質
『ダークナイト』のBDで初めてIMAX撮影のシーンを見た時、そのあまりの高画質に、「いっそ全編IMAXで撮影すればいいのに」と思わずにはいられなかった。
それがこれだ。
IMAXならではの強調感皆無なのに究極的な解像感と情報量が両立する画。冒頭のダンケルクの街並みからして思わず声を上げてしまった。
HDRは輝度ピークを伸ばすよりも画面全体の輝度レンジに余裕を持たせ、光から闇に到る稠密なグラデーションが印象的であり、『ダークナイト ライジング』で見られた「自然」な感覚がさらに強まっている。曇天の下、濡烏の髪の一本一本の質感まで克明に描き分ける強烈な暗部階調は圧巻。それでいて、陽光の降り注ぐ海面の描写など、ここぞというシーンでは輝度ピークが鋭く伸びて、輝かしく鮮明な表情を余裕綽々に映し出す。原色的ではないが実に深々として濃厚な色彩も実に素晴らしい。
ちなみに正確には全編IMAX撮影ではなく、主に船内や車内といった比較的狭い空間内での撮影では65mmフィルムが使われているのだが(画面の縦横比が変わるのでわかる)、さすがに光量ではIMAXに及ばないまでも、解像感や情報量といった要素は非常に高い水準を保っており、以前のノーラン作品ほど画質的な落差はさして生じていない。
フィルム特有の空気感があるおかげで『レヴェナント』・『猿の惑星:聖戦記』ほどの切れ上がる解像感はなく、『トランスフォーマー/最後の騎士王』のように光輝が乱舞するようなHDRの活躍もないが、いずれも極めて高いレベルでの比較であり、画面にみなぎる情報量は8K撮影の『マリアンヌ』と完全に同等かむしろそれ以上。今まで画質評価10点を付けてきたタイトルと、純粋なフィルム撮影で肩を並べている。
今まで10点を付けた作品のようなパッと見の凄さはなく、もしかしたら地味と思われる類の画かもしれないが、これはこれでひとつの頂であることに疑いはない。10点満点。
○見どころ
なぜか登場するシーンがことごとく超高画質なコリンズ操縦士
○音質
非常に悩ましい。
というのも、本作の音響からは「楽しませようとする意図」がまったく感じられないし、派手な活用はなくとも心に残る音楽で映像を盛り上げる……といった類のものでもない。(例:『鑑定士と顔のない依頼人』・『かぐや姫の物語』)
ダンケルクの音響は徹底して娯楽作品的なケレン味を排しており、衝撃はあるものの昂揚はない。ただただ冷徹に、無慈悲に、淡々と、観る者をその場に打ち据える。銃撃や爆撃の威力、空を征く戦闘機の激烈な機動音、重厚にして鋭利なダイアローグの質感、ほぼ全編に渡って使われる心臓の鼓動を思わせる旋律の不穏な存在感、真摯に作り込まれたマルチチャンネル・サラウンドなど、品位においては間違いなく最高峰にある。特に冒頭の「見えない銃撃」は、死の恐怖を覚えるレベルである。オブジェクトオーディオ? こまけえことはいいんだよ。
しかし、【UHD BDレビュー】では、11点以上を付ける条件として「色々小難しいことを抜きにして、一線を越えた興奮や感動を味わえれば」としている。ダンケルクは一線を越えることを許さなかった。「凄まじい」とは思えど「面白い」「楽しい」という感覚はなかった。ゆえに、15点を付けることはできない……んだけど、付けたかった。
強いて言えば、なぜ16bitなんだ。別に構わんけども。
○聴きどころ
What do you see?
Home.
○総評
現時点における、画質音質双方におけるUHD BD最高品質タイトルの最有力候補。
AV的なクオリティがことごとく高止まりしているノーラン作品おそるべし。
○再生環境(詳細はコチラ)
・ソース
Panasonic DMP-UB90
・映像
LG OLED55B6P
・音響(センターレス6.1.4ch)
Pioneer SC-LX59(AVプリとして使用)
SOULNOTE A-2(フロント)
Nmode X-PW1 ×4(フロント以外の全チャンネル)
Dynaudio Sapphire(フロント)
Dynaudio Audience122(サラウンド)
Dynaudio Audience52(サラウンドバック)
ECLIPSE TD307MK2A ×4(トップフロント・トップリア)
ECLIPSE TD316SWMK2(サブウーファー)
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