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【UHD BDレビュー】第30回『ハクソー・リッジ』 米国盤 【Dolby Atmos】




画質:9
音質:15☆
(評価の詳細についてはこの記事を参照)

映像:HEVC 2.8K撮影・2Kマスター
音声:Dolby Atmos トップスピーカーの活用:大 オブジェクト効果:大


○画質
 BDでは出せまいと思える解像感に情報量、HDRによる強靭な光と闇、両者が合わさって生まれる「現実感」など、UHD BD――4K/HDRに求められる画質を高いレベルで実現していることはもちろん、それにも増して本作が素晴らしいと思えるのは、他の優秀なUHD BDタイトルに比べて抜群に画質が安定している点だ。
 2.8K撮影・2Kマスターという仕様ながら、全編通じて解像感に優れ、衣服のディテールは実に稠密、医師や看護師の白衣の「白の中の白」の表現なども素晴らしい。主人公がぶち込まれた営倉のシーンでは、薄暗い室内と小さな窓から差し込む陽射しによって凄まじいダイナミックレンジの広さを感じさせ、HDRの精華と言えるシーンとなっている。
 『レヴェナント』『マリアンヌ』にはピークの画質でこそ一歩劣るものの、光量に余裕のあるシーンで見せる圧倒的現実感をはじめ、ちょい光量の落ちる室内でも濃密なディテールとキレの良さを見せ、さらに夜闇のシーンにあっても解像感が高く維持される。これは「良いシーンは物凄く良い一方で、シーンによって画質が乱高下する」という傾向のあるUHD BDの中にあって、希少な美点と考えるべきだろう。
 物語の後半は戦場に舞台を移して阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるわけだが、ここでも画質の基礎体力の高さが存分に活かされる。まぁ、いろいろと撒き散らされたものが丸見えになるだけの容赦のないディテールに加え、火炎放射器から放たれる焔の襞の一枚一枚すら克明に描写する輝度&色彩表現が炸裂する。砲火と土塊で汚れ、その上に血と汗を滴らせる兵士たちのクローズアップは克明そのもの。本作は戦場シーンも含めてそれほど彩度が高いわけではないが、そのぶんダイナミックレンジを上から下まで活用する深々とした画で、色彩の不足で画面が単調になるということはない。

○見どころ
 全部


○音質
 10点満点中15点+α。
 この評価は『ガールズ&パンツァー 劇場版』以来、1年4か月ぶり五度目。
 本作の音は一言で言えば、「Dolby Atmosで強化されたプライベート・ライアンである。もうどうすんだこれ。そりゃアカデミーも獲るわ。
 ドラマが主体の前半部も、細部まで力強いダイアローグと広がりのある音楽で食い足りなさを感じさせることなく、そして基地での訓練シーンなどで非凡な音響の出来映えを大いに予感させつつ、後半の戦闘シーンでついにその本性を露わにする。
 『プライベート・ライアン』は5.1ch。『ランボー 最後の戦場』は7.1ch。そして本作はDolby Atmos。チャンネル数の増加は音数の増加に大いに寄与し、トップスピーカーによってかつてない包囲感を醸成する。トップスピーカーの活用はカメラワークと完全連動した素晴らしいもので、カメラが兵士と同じ目線にある時は頭上を行き交う砲火の軌跡を描くのを中心とする一方、足元から見上げるようなカットになると着弾を受けて舞い散る砂礫や頭上を舐める火炎放射や迫撃砲の直撃を受けてちぎれ飛んだ手足などが潤沢な情報量でもって通り過ぎ、降り注ぐようになる。
 単に銃声で空間が埋まるわけでもなく、戦艦の艦砲から歩兵銃まで様々な銃の銃声の描き分け、ヘルメットを直撃・貫通する鋭い音など、個々の音作りも非常に凝っている。さらに戦場においても台詞がクローズアップされるシーンではしっかりと声が聴こえるという具合で、聴かせる音と聴かせどころを完璧に把握した音響構築が成されている。
 銃撃・砲火・爆発の威力は最上級。音数の豊富さも最上級。空間構築も最上級。そしてなにより、恐怖。戦闘の火蓋が切って落とされた途端におぞ気で全身が強張る感覚。全方位から逃げ場無く銃弾を撃ち込まれて蜂の巣に成る感覚。死ぬ。この「死ぬ」という感覚こそ、評点15に☆が加わる決め手である。

○聴きどころ
 前田高地


○総評
 現時点(2017/09/08、見たけどレビュー書いてないタイトルも含む)で、言の葉の穴の【UHD BDレビュー】における最高得点。
 「UHD BD最初に何買うかな」と思ったら、コレを選べばまず間違いはない。
 『ブレイブハート』にせよ本作にせよ、こと映画製作に関しては、メル・ギブソンはほんと凄い映画をこさえるのな。

 そして日本じゃUHD BDが発売されないのか……



○再生環境(詳細はコチラ

・ソース
Panasonic DMP-UB90

・映像
LG OLED55B6P

・音響(センターレス6.1.4ch)
Pioneer SC-LX59(AVプリとして使用)
Nmode X-PM7(フロント)
Nmode X-PW1 ×4(フロント以外の全チャンネル)
Dynaudio Sapphire(フロント)
Dynaudio Audience122(サラウンド)
Dynaudio Audience52(サラウンドバック)
ECLIPSE TD307MK2A ×4(トップフロント・トップリア)
ECLIPSE TD316SWMK2(サブウーファー)



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