【BDレビュー】第112回『許されざる者』
画質:8
音質:10
(評価の詳細についてはこの記事を参照)
映像:HEVC
音声:DTS-HD Master Audio 5.1ch
○画質
なんて美しい映画なんだ……
光量の多いシーンであれば、近作にまったり見劣りしないどころか凌駕さえしそうな素晴らしい画が拝める。
BDに比べて解像感や情報量も間違いなく良くはなっているが、それ以上にHDRの恩恵が著しい。HDRという器を得てフィルムに本来写し撮られていた豊潤な光量を存分に活かせるようになった結果か、特に抜けるような青空が全編通じて実に美しい。青空を背にして登場人物が逆光になるシーンでは、青空はさらに光量を増しつつ、BDに比べて明らかに人物の描写が明確になっている。これぞHDRである。他にも雪原の中の小屋でのシーンや、強烈な日差しが差し込む崖(山岳地)での銃撃戦など、HDRのおかげでBDとは別次元の力強い描写を獲得したシーンは枚挙に暇はない。
ただ、夜の酒場兼娼館に顕著に見られるように、過剰とも思えるほどに暗いシーンが暗くなっており、ちょっと首をかしげたくなるような場面もあった。「暗いシーンがきちんと暗い」こともまた「自然」な描写を実現するHDRの本懐とはいえ、ここまで暗いとなると……難しいところだ。あるいは西部劇時代の夜の室内の明るさなんてたかが知れている、これが本来の明るさなのだ、ということなのか? とりあえず暗いとはいえ、BDのように暗部にノイズがざわつくこともなく、凄まじく暗い領域の中でもきっちりと階調が出ているため、そういう画だと思えば普通に見られる。むしろ、非常に暗いために見る側も集中力を最大限発揮させているのか、余計に見入る。
フィルム撮影の往年の名作も、4K/HDRリマスターで化ける。BDとはまるで別物であり、今後の(特にフィルム撮影作品の)UHD BD化に大きな希望を持たせることとなった。本作は『インデペンデンス・デイ』より古いが、それよりも高画質である。
○見どころ
屋外の風景
崖での銃撃戦
○音質
BD版はHなんとかのせいで圧縮音声オンリーという許されざる仕様だったのが、ようやく晴れてロスレス音声での収録がなされた。まずはそのことを喜びたい。
ロスレス音声の威力は音楽の浸透力・ダイアローグの迫真性・銃声の威力と全領域に渡っており、作品を鮮やかに彩る。
環境音は想像以上に存在感を増している。夜の酒場、屋外の激しい雷雨は全チャンネルを活用して空間を濃密な音で満たし、落雷は強烈な重低音を発して続く破滅的な展開を示唆する。
これ以上は望むまい。
○聴きどころ
クライマックスの酒場
○総評
かつてリリースされたBDはHなんとかのせいで、映像面でも音声面でも煮え切らない仕様になってしまったが、『許されざる者』の映像ソフトはUHD BDで、ついに完成形となったのである。
買おう。
○再生環境(詳細はコチラ)
・ソース
Panasonic DMP-UB90
・映像
LG OLED55B6P
・音響(センターレス6.1.4ch)
Pioneer SC-LX59(AVプリとして使用)
Nmode X-PM7(フロント)
Nmode X-PW1 ×4(フロント以外の全チャンネル)
Dynaudio Sapphire(フロント)
Dynaudio Audience122(サラウンド)
Dynaudio Audience52(サラウンドバック)
ECLIPSE TD307MK2A ×4(トップフロント・トップリア)
ECLIPSE TD316SWMK2(サブウーファー)
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