LFE。
 Low-Frequency Effect。
 映像音声にディスクリート収録(.1ch)された低域効果音。
 そしてLFEの再生装置としてのサブウーファー。


 まず、私はサブウーファーを通常の音楽再生(ピュア)用途では使用しない。
 私の再生環境においては、Sapphireも、Audience122も、Audience52も、SC-LX85のMCACCで測定するといずれも「Large」判定となり、サブウーファーは真にLFEのみを担当することになる。
 よって、マルチチャンネルスピーカーの低音補強用ではなく、純粋なLFEの再生装置としてのサブウーファーの意義を考えられる。同時に、LFEそれ自体の意義についても。
 今後のためにも、ここでじっくりと考えておきたい。

リファレンスBD10タイトルとの組み合わせ
いろんなタイトルとの組み合わせ①
いろんなタイトルとの組み合わせ②
いろんなタイトルとの組み合わせ③
いろんなタイトルとの組み合わせ④
いろんなタイトルとの組み合わせ⑤

 ECLIPSE TD316SWMK2で色々と見た結果、一言で「LFE」と言っても、どうやら以下の三種類に分類できそうだ。



①純粋に空気を震わせる

 「ドドド」と「ゴゴゴ」。
 ほとんど音として認識できないほど低く、ひたすら空気の揺れを感じさせる類の低音。
 比較的長時間持続し、特定の効果音との時間軸的な関係性はそれほど深くない。爆発、地響き、怪物など、「巨大なもの」との組み合わせで顕著に活用される。
 音質云々を通り越して見るものの感情や心理面に直接働きかけ、映像体験の質に影響を及ぼす。「映画館のような映像体験」に密接に関係する部分。
 サブウーファーには低音の質よりも量が求められる感。


②通常の効果音を強化する

 通常の効果音(ここではLFE以外の効果音を意味し、決して低音だけに限らない)と極めて関係性が深い。
 元の効果音と完全に同期して出力される低音で、私の感覚ではさながら「隈取りをする」ように機能する。LFEによって隈取りされた効果音はさらなる立体感・存在感・威力を得る。単純な「低音の補強」ではなく、「強化」。このニュアンスは伝わるだろうか。
 効果が高い作品であれば、サブウーファー無しの状態と比べてまったく異質なレベルの音を引き出せる。銃撃や砲火の音が別物に変貌する。
 サブウーファーには低音の質と量の両立、加えて高い瞬発力が求められる。よく言われる「低域が遅れる」とは、つまるところこの部分を指したものだろうか。


③劇伴/音楽で活用される

 ②と同じように、劇伴における楽器(おおむね低弦や打楽器)の音と併用される。ミュージカル映画における楽曲のみならず、普通の映画の普通の劇伴でも結構使われているようだ。
 通常の音楽再生、もしくはマルチチャンネルスピーカーの低音補強用途でサブウーファーを使う場合の低音も、雰囲気的にはコレと似ているものと思われる。
 楽曲の性格にもよるが、低音の絶対量は効果音と比べてそれほどでもないため、サブウーファーにはひたすら質と速さが求められる。



 サブウーファーの導入に伴って映像体験に大きな効果を与えるLFEは①と②。これらに比べれば③の効果は限定的。
 そもそもAVアンプの設定で、サブウーファーがない場合はLFEがフロントに割り当てられるため、一応今までも「LFEが出ていない」ということはなかった。
 それでも、①については台詞や通常の効果音を再生しつつ「ドドド」と「ゴゴゴ」も同時に一つのスピーカーから再生するのは無茶だったのだろう。あるいは、極めて高性能なスピーカーに極めて駆動力の高いアンプを組み合わせればまた違うのかもしれないが。
 ただし、大きな効果を得るためには、LFE以外の、通常の効果音の段階で質・量ともに中低域が充実している必要があった。でなければ、LFEが音響に巧く融合せず、全体として非常にちぐはぐな印象になってしまう。そんな時はサブウーファーのボリュームを絞れば何とかなるにはなるのだが、LFEの効果も必然的に小さくなってしまう。
 ②は実際にサブウーファーを導入するまで存在を実感できなかった部分。これもやはり、LFEをサブウーファーに割り当てたことで真価が発揮されたのだろう。サブウーファーの導入に期待したのは「威力」と「迫力」だったが、威力の向上はこれに因るところが大きい。

 今後映像タイトルやサブウーファーを評価する際は、この三つの観点を使うことになりそう。


 今回の一連の視聴で、真に意味のある「空気の震える低音」を聴かせてくれたのは『GODZILLA』『インデペンデンス・デイ』。どちらも「巨大」な作品である。
 LFEによる隈取りで異次元の威力を獲得したのは『フューリー』『ALL YOU NEED IS KILL』
 ①と②のいいとこどりでとにかく効きまくったのは『パシフィック・リム』
 当然ながら、すべてのタイトルで同じような効果が得られるわけではない。効くタイトルには効くし、効かないタイトルにはからっきし。
 LFEも実に奥が深い。

 直接的な映像体験の質、効果音の威力の向上にとって、LFEとそれを専門に担うサブウーファーは意義を持つ。
 より上質な映像体験のために、サブウーファーを導入する価値は間違いなくあった。



 ……でもやっぱり、個人的にはサブウーファーの導入についてあれこれと悩む前に、まずは優れた再生能力を持つフロントスピーカーの導入を考えたほうがよい気がする。部屋の広さや置き場所の制約、他のスピーカーの再生能力との兼ね合いなどから、サブウーファーを導入しないほうがよい場合だって考えられる。
 映画しか見ないというのなら話は別だが、音楽も聴くとなれば、それ自体で低域まできっちり再生できるスピーカーを用意するに越したことはない。
 そこにLFE/サブウーファーを加えるからこそ、両者の存在が活きる。