TOHOシネマズ日本橋のスクリーン8では、2ウェイの本格的な天井スピーカーが8~10ペア程度設置されていた。
 Dolby Atmos対応スクリーンなのだから天井スピーカーがあるのは当然である。
 問題はその角度だ。

 家庭用のDolby Atmosでは、天井スピーカーは真下に向けて設置することになっている。
 しかし、劇場の天井スピーカーはどれも上下の角度が付き、完全に視聴者に向くようになっていた。私は部屋の真ん中に座っていたが、まさに視線とスピーカーのバッフル面が正対するように角度調整がされていた。ん? 劇場の場合天井スピーカーは真下を向かなくていいのか? それともTOHOシネマズ日本橋だけのイレギュラー的な設置なのだろうか? まったくわからん。
 ただ一つ言えるのは、そこで聴けたDolby Atmosの音が実に素晴らしかったということ。規格や規定はどうあれ、少なくともその配置によって生み出される体験のレベルが非常に高かったことは間違いない。
 もし、家庭用のDolby Atmosのスピーカー設置においても、天井スピーカーの視聴位置に向けた角度調整が許容されるのだとしたら、音の指向性的にだいぶ設置の自由度が上がるはず。気休め程度かもしれないが。

 また、映画館で耳にしたDolby Atmosにおける天井スピーカーは、決して雰囲気再生程度のものではなく、明確に存在感のある音を再生していた。ただ単に天井にスピーカーがあればいいということで、非常に小さなスピーカーを設置しただけでは、劇場で味わったような存在感を実現できるとは到底思えない。それどころか、全体のレベルを著しく下げてしまう可能性すらあるのではなかろうか。
 ただ導入するだけでは意味がない。
 効果と価値を実感体験できなければ意味がないのだ。
 天井スピーカーは、物理的に設置可能という条件を満たしつつ、さらに十分な音響再生能力を備えている必要がありそうだ。いやはや、またハードルが上がってしまう……



【Dolby Atmos/DTS:X】オブジェクトベースシアターへの道・まとめ

・スピーカーの配置
・スピーカーの配置②――天井にスピーカーを設置できない場合
・スピーカーの選択
・AVアンプの選択
・世界初のアトモス収録ソフト「トランスフォーマー ロストエイジ」を“普通に”聴く
・嫌な予感
・家庭用アトモスを聴く
・ようやく映画館でアトモスを聴く