前日:天明4年12月28日/平成31年2月7日


天明4年12月29日(新暦換算:2月8日)

秋田県湯沢市柳田

柳田の草彅家に滞在している


【秋田の假寢】

 夜が明ければ、“いねつむ日”だということで、早く寝かせようといって、ともに、鼻を鳴らして、肘枕にうたたねをした。この“いねつむ”というのは、「秋の田の かりそめふしも してけるか いたつらいねを 何につままし」と、藤原成國の詠んだ歌のこころにぴったりだ。秋田の縣においては、ことさらおもしろい。

 鶏も年を惜しむのだろうか、声の限りに鳴いている。故郷を想えば二百余里を過ぎ、旅に出てから二年目の年を迎える。



 『菅江真澄遊覧記』の解説によれば、「いねつむ日」とは「大晦日には寝ないで起きていて正月を迎え、正月元旦になって寝る。これを稲をつむといっている。広く各地に見られることば」だそうだ。まったく聞いたことがない。というより、「大晦日には寝ないで起きていて」どころか思いっきり寝ているようなのだが、これはいかに。

 とにかく、真澄は大晦日に二度寝していたようだが、私は寒波襲来でそれどころではなかった。



 というわけで、『齶田濃刈寢』は本日で幕を閉じる。

 岩手県から秋田県に入り、在りし日の象潟を見て、由利本荘市を通り、峠を越えて羽後町に入り、湯沢市柳田の草彅氏の家に滞在して、菅江真澄は年を越す。

 そして明日からは、『小野のふるさと』が始まる。

 菅江真澄32歳、秋田の旅は続く。



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●『齶田濃刈寢』本文・参考文献

『秋田叢書 別集 第4』 秋田叢書刊行会, 1932
『菅江真澄遊覧記1』 内田武志・宮本常一編訳, 東洋文庫, 1965

記事中の【見出し】は『秋田叢書』にあるものをそのまま使っている



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翌日:天明5年1月1日/平成31年2月9日――『小野のふるさと』のはじまり



【記事まとめ】『齶田濃刈寢(あきたのかりね)』――菅江真澄31歳・秋田の旅
初めて秋田の地を踏んだ菅江真澄と歩く、234年後のリアルタイム追想行脚

『菅江真澄と歩く 二百年後の勝地臨毫 出羽国雄勝郡』
江戸時代後期の紀行家・菅江真澄の描いた絵を辿り、秋田の県南を旅した紀行文


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