ひと月ほど前に。


(よくよく見ると某D社のスピーカーが……)

 現行SOULNOTEのフルラインナップだけでなく、PMCのスピーカーをまともな環境で聴く機会も初めてだったので、期待に薄い胸を膨らませて行ってきたのである。
 ちなみにCSRの試聴室は基本的にいつでも歓迎とのことなので、SOULNOTEやPMC製品に興味のある人は行ってみるべし。


 当日聴かせてもらったシステムは、

SOULNOTE C-1
SOULNOTE D-1
SOULNOTE A-1 ×2
PMC MB2-SE



 という、CSRならではの布陣。
 駆動力の向上のため、プリメインアンプのA-1を片チャンネルで使っているというのがミソ。リモコンを使えば2台同時に音量調整ができるので困らないというアレ。あぁリモコンが欲しい。

 Rodrigo y Gabrielaとか手嶌葵のライブ音源とか色々と聴いて感じたのは、「音楽が演奏されている/歌われている情景」の顕著な再現性。
 「録音された音を忠実に再生する」を越えて、「音楽の熱量を絶対に取りこぼさない」の果てに辿り着く、「その場に居る」という感覚。「コンサート会場にいるような」なんて言葉はオーディオのあらゆる文脈で散々使い古された表現ではあるが、体の芯からそれを実感する機会は決して多くはない。

 何がこの感覚を醸成するのだろうと熱を帯びた頭であれこれと考えていた。つまるところ「場の空気感を再現するに足る膨大かつ濃密な情報量」と、「まったくスピーカーの存在を感じさせないほどの圧倒的な音離れの良さ」の両立が成せる業だ。
 視覚的に巨大な存在感を放つMB2-SEが、音楽が鳴り始めた途端に姿を消す。そして音楽だけが姿を現す。演奏者とリスナーの気持ちがつながる瞬間である。
 
 PMCのスピーカーには「Professional Monitor」の名前が示す通り、もっともっとこう……容赦なく粗を含めて音楽の細部を抉り出すような、鋭利にして峻厳なイメージを抱いていた。
 しかし今回のシステムを聴く限りでは、純然たる再生能力の高さを実感する一方で、淑やかな曲を無闇に辛口にするようなこともなく、底知れない懐の深さを感じさせた。瞬発力の高さと無駄に尾を引かない様はさすがの一言で、この辺の特性はSOULNOTEにとって我が意を得たりといったところか。PMCの獲得は互いにとってさぞ僥倖だろう。
 この中域の濃さは間違いなくホームシアターでも猛烈に活きる。映画スタジオでの採用実績も納得だ。

 A-1の価格は17万円。2台使っているとはいえ、それで370万円のMB2-SEを鳴らすのである。鳴るのである。きっとSapphireだってもりもりと鳴る。今回の試聴で一番感心したのはむしろこのA-1かもしれない。



 さて、ここでD-1に関する耳寄りな情報をひとつ。



 USB接続時の性能を上げる方法として、例えばNmode X-DP10のように、JPLAYとの接続性を機器の側から最適化する、という考えがある。実際にNmodeの取り組みは大きな効果を発揮しており、労せず高いDAC Link値での安定再生が可能になる。
 ただし、Nmodeの場合はあくまでも「再生ソフトにJPLAYを使う場合にのみ恩恵を受けられる」という話であって、他の再生ソフトは無関係、Macはそもそも無縁。

 特定の組み合わせだけでなく、もっと広い環境でUSB接続時の性能を上げられないものか…………

 ということで登場するのが「Bulk Pet」。バルクペット。ペット。

 Bulk PetはSOULNOTE D-1に入っているUSBインターフェースを作っているインターフェイス社が開発した、USBのバルク転送方式を用いた音声伝送技術
 一般的に使われているアイソクロナス転送方式に比べて、バルク転送方式は転送するデータの量と転送サイクルをコントロールでき、転送するデータをできるだけ少なくして連続的なデータ転送にすることでPCやDACの処理負荷そのものを下げて云々……

 とまぁ色々あるが、ここで重要なのは、このBulk PetはあくまでPCとUSB DACの間のデータ伝送の部分なので、「使用するPCの再生ソフトやOSを問わない」ということ。どんな再生ソフトを使っても恩恵が得られるし、バルク転送の音が気に入らなければ使わないという選択肢もある。

 そしてD-1はこのBulk Pet採用/対応機器の第一号となる。対応はドライバーのインストールで済むので追加投資も不要。
 実際に私も聴いた。これがまた結構効く。D-1がますます強くなる。


 じき正式リリースがあるはずなので、D-1ユーザーは震えて待つべし。



【レビュー】SOULNOTE D-1
 

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