Dolby AtmosにDTS:X、あと一応Auro-3D。
これらオブジェクトベースの新音声規格は、先行したDolby Atmosの非常に衝撃的な登場――天井にスピーカーを取り付ける必要がある!(一応イネーブルドスピーカーも使える)――によって、あたかも「上から音がする」ことが最大の特徴であるかのように捉えられている、あるいは期待されている、そんな気がする。
無論、オブジェクトベースオーディオとはそんなに単純なものではない。
映像音響における個々の音を、位置・動き・音量といった情報を持つオブジェクトとして扱い(オブジェクトオーディオ)、これらの情報とスピーカーの位置や本数をもとにAVアンプ等でレンダリングを行い、最終的な音声を再生する。
これにより、チャンネルベース以上に優れた定位感・移動感・包囲感を実現する……というのが、オブジェクトベースの音声規格の本来の意義であり、目的である。
単に「上から音が聴こえる! すげえ!」というのが主眼なのではない。
……とは言っても、せっかく死ぬほど悩んで天井にスピーカーを取り付けたのだから、単純に「上から音が聴こえる! すげえ!」という体験をしたいのである。したくてたまらないのである。定位感・移動感・包囲感なんて言ったって、そんなもんオブジェクトの助けを借りるまでもなく、チャンネルベースでこれでもかと言うほど追い込んでいるのだから。
まったく新しい体験、文字通り次元の違う体験を期待するなと言うほうが無理なのだ。
なんてことを考えながら、Pioneer SC-LX59導入時にMCACCをかけて、その過程でトップスピーカーが鳴った。
ぼおおおおおおお……
……
…
あまり「上から」音がしているという実感がない……
ドルビーの推奨位置に近付けた結果トップスピーカーが頭の真上から結構離れているとか、「上からの音」を感じさせるためには天井が低すぎるとか、そもそも人間の聴覚は上下を判別する能力が低いとか、いろんな理由があるのだろう。
さらに、トップフロントならばフロントスピーカーの位置との明確な差異を聴き取れるが、トップリアとなるとサラウンド・サラウンドバックとの位置関係がにわかに怪しくなってくる。特にサラウンド。Sapphireに合わせて背を高くしすぎたせいだろうか。
この時点で、オブジェクトオーディオの効果に対するそこはかとない不安を覚えた。
それから自宅における初アトモスとなった『アメリカン・スナイパー』を見て、トップスピーカーの存在感の希薄さを実感することになった。
Dolby Atmos/DTS:Xといったオブジェクトベースの音声規格は、上方向までも含む、チャンネルベース以上に優れた定位感・移動感・包囲感を実現するためにある。トップスピーカーもあくまでこの目的のためにある。
一方でトップスピーカーは、それ自体で強烈な存在感を発揮することはなく、結局地味~に供されるだけなのだろうか。
超単純に「上から音が聴こえる! すげえ!」という体験をしたかったのに、残念だ。
……と、思いきや。
やっぱりソフト一本だけで判断するもんでもなかった。
手持ちのDolby Atmos収録BDを片っ端から見ていった結果、サラウンドジャンキーの夢を叶えてくれるソフトも、紛れもなく存在したのである。
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