ここんとこ猿無双が続いているので。

77話「怪猿が征く」
78話「雪国の神」
79話「院内銀山」


 パイン一味の鉄砲玉(?)こと、刀を持った怪猿・サダムネ。


56話「亀裂」
57話「遣らずの雨」


 この辺で実力の片鱗は見せていたが、とうとう最新の展開でアオ(アラハバキ)をノしてしまった。
 コイツはいったい何者だ、という話である。

刀を盗んだ白猿

大山十郎の家には先祖から伝来する名刀貞宗があった。毎年六月にこれを虫干しすることになっており、主人が座敷に出して番をしていると、白猿が現れ、あっという間にこの名刀を盗み去った。翌日家来たちを伴って山狩りをすると、芝原に三十疋ほどの猿が集まってその真ん中に白猿が貞宗を腰に差していた。全員で斬り入ったら、大勢の猿は逃げ去ったが、白猿は貞宗を抜いて侍たちにかかってきた。白猿は傷を負うこともなく、鉄砲を撃っても効かず、山奥へ逃げ去った。

  『秋田の昔話・伝説・世間話 口承文芸検索システム』より引用



 で、この『秋田の昔話・伝説・世間話 口承文芸検索システム』が使っているのがこの『奇話珍話 秋田巷談』。



 この本を読めば、名刀・貞宗の加護のおかげか、昔話の時点でサダムネが異様な強さを持っていたことがわかる。
 さらに時を経たサダムネが刀以外にもどれだけの力を手にしているのか、今後の物語が気になるところである。貞宗に伍する武器を作れる者なんてそうそう……あっ(察し)
 むしろそれを殴り倒せるマタギとはいったい……

 それにしても作者のLV3氏はよくもまあこんなところからネタを引っ張ってきたなと脱帽せざるを得ない。



 さて、神様セカンドライフにおいては、サダムネは秋田県湯沢市(旧雄勝町)の院内銀山で燻っていたようだ。

 かつては日本一の銀産出量を誇って深い山中で栄華を極め、明治天皇さえ訪れた院内銀山も、往時の面影がまったく感じられないほど森に呑み込まれてしまった。



 昼なお暗き御幸坑。


 今では金山神社が存続するのみ。この神社だけは廃れさせてなるものかという地元の意思で、金山神社は比較的良好な状態で保たれている。



 昨今では「心霊スポット」という括りで扱われがちな院内銀山。
 院内銀山に限らず、鉱山の栄華は数多の鉱夫の働きと、おびただしい死によって支えられてきた。
 繁栄の礎となった彼らの労苦に感謝し、手を合わせこそすれ、彼らの眠る地に敬意もなく踏み入った挙句心霊スポット呼ばわりする気が知れない。
 
 サダムネは神になりたかったのだろうか。
 ならば、もはや祀る者亡き院内銀山に居たところでその願いは叶うまい。



 ちなみに院内銀山については、『菅江真澄と歩く 二百年後の勝地臨毫 出羽国雄勝郡』第八章「光ことなる錦秋の宮」で登場しています(宣伝)



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