Dolby Atmosが登場して以来、「いつかは我が家にもオブジェクトオーディオを!」と意気込み、その「いつか」が一向に訪れないまま今に至っている。
 相変わらずソフトが増えないこと、特にアベンジャーズしかり、スター・ウォーズしかり、本当にDolby AtmosないしDTS:Xで収録してほしい作品が肩透かしで終わったことも、「いつか」が遠のく大きな原因となっている。最大の原因は単に先立つものがないということだが。サブウーファーとかハブとかに資金が飛んでいってしまって……

 そうこうしているうちに、気付けばUHD BDがいよいよ本格的に立ち上がりつつある。ここで俄然注目に値するのは「UHD BDにはオブジェクトベース音声が収録されている」という事実である。『チャッピー』やら『マン・オブ・スティール』やら『ローン・サバイバー』やら『インデペンデンス・デイ』やら、内容的にも音質的にもぜひ手元に置いておきたい作品が、UHD BDならばDolby AtmosまたはDTS:Xで音声が収録される。しかも『オデッセイ』なんかはエクステンデッド・カットで早くも二度目のUHD BD化、それに伴って音声もDolby Atmos化された。
 Dolby Atmosがローンチされて間もない頃、一向に収録ソフトが増えない状況を見て、「もしやオブジェクトオーディオはBDをスルーしてUHD BDのプレミアム感の醸成に使われるのではないか……?」なんてことを考えもしたが、あながち間違いともいえない状況になってしまった。

 というわけで、どうせ4Kディスプレイも持ってないんだし製品も高いし、UHD BD再生環境はオブジェクトオーディオ対応を果たしてからゆっくり導入しようと考えていたのが、状況は完全に変わった。実にタイミングよく登場したパナソニックのUHD BDプレーヤーが与えた影響も大きい。UHD BD再生環境の方がオブジェクトオーディオ環境よりも安く導入できるようになり、おかげで両者の優先順位は完全に拮抗した。

 そもそも4Kディスプレイを持っていないのに……と思わなくもないが、ソフト、UHD BDへの投資は無駄にならない。プレーヤーさえあれば、画質的には真価を発揮できないとしても、今のプロジェクターでも問題なく見ることはできる。私の場合、思い返せばBDだって最初はフルHDではなくハーフHDのテレビで見ていたわけだし、ソフト側のオーバースペックはこれが初めてではない。どのみち4Kディスプレイは後でいい。

 あるいは、やっぱりオブジェクトオーディオ環境を先に導入して、今までのソフト資産をアップミックスして面白がるのが先か……


 UHD BDか先か、オブジェクトオーディオが先か。

 持たざる者ゆえの悩みは尽きない。



【Dolby Atmos】 オブジェクトベースシアターへの道・まとめ 【DTS:X】