画質を取るか、迫力を取るか
画質が迫力を凌駕する瞬間


 いわゆる2Wayシアター。
 「テレビ」と「プロジェクター&スクリーン」の両方を備え、時と場合によってそれぞれを使い分けるシステム。

 かつては、システムのシンプルさやクオリティの追求という観点から、テレビとプロジェクターであれば、迷うことなくプロジェクターを選択していた。液晶テレビもプラズマテレビもプロジェクターも「完全な黒」を実現できない以上、プロジェクター&スクリーンが実現する「大画面」が圧倒的な強みを持っていたからだ。そんなわけでVictor DLA-X30を導入して以来、私のシアタールームにテレビの居場所はなかった。

 しかし、UHD BDの登場とともにディスプレイに4Kの解像度とHDR対応が求められ、さらに有機ELが現実的な選択肢として登場したことで、テレビとプロジェクターの関係は大きく変わった。
 プロジェクターで満足のいく4K/HDRを実現しようと思えば、六桁では収まりそうもない投資が必要になる。それに対し、有機ELではその数分の一の価格で完璧な4K/HDRに対応し、しかもプロジェクターでは到底実現し得ない「完全な黒」が手に入る。大画面=迫力だけでなく、人並みに画質も求めていた手前、「どちらか選べ」と言われた時、プロジェクターを積極的に選ぶのが非常に難しくなってしまったのである。

 LG OLED55B6Pを導入するにあたって、DLA-X30を使い続けるか否かは正直なところ非常に悩んだ。一応OLED55B6Pを導入した後も使えるようにはしておいたが、出番がなくなるようならさっさと取り外すつもりでいた。

 こうして(天吊り金具から取り外すのが面倒だったこともあり)2Wayシアターの形態になったわけだが、実際のところ、DLA-X30は今でも活躍している。
 4K/HDR環境が求められるUHD BDをプロジェクターで見ることはほとんどなくなったとはいえ、そうでないBD、そしてゲームなんかだと、画質よりも大画面の方が最終的な楽しさに寄与する場面が多い。逆に視点移動の激しいゲームをスクリーンのような大画面で遊ぶと猛烈に楽しい反面猛烈に疲れるという問題もあり、難しいところだ。
 ちなみにゲームに関しては、常に画面に表示される諸々の情報が有機ELに焼き付きを起こすのではないかという懸念を捨てきれず、積極的にテレビに映せていないという別の理由もあ。


 55インチに出現したスライム


 100インチに出現したスライム

 
 どちらに迫力があるかと言われたら、そりゃもちろん、100インチだろう。
 昨今の映像が進化したゲームは、大画面の恩恵を如実に受ける。


 結局、「クオリティの追求のためにテレビとプロジェクターのどちらかに一本化しなければ」と悩むより、「両方使えるなら両方使ってしまえ」と考える方がずっと楽だし、楽しかった。システムの複雑化? 何を今さら。
 
 「2Wayシアターだと! どっちつかずでクオリティを追求できないシステムなんて!」などと、僅かでもそんな風に考えてしまった己の不明を恥じねばなるまい。


 ……とは言いつつ、「75インチくらいの有機ELテレビを入れればさすがにプロジェクターは要らないんじゃないか?」とか、「高級プロジェクターを導入して壁と天井を完全に真っ黒にすれば有機ELがなくても画質的に満足できるんじゃないか?」とか、先立つものもないくせにそんなことを考えている自分もいる。

 さて、夢を見るのも大概にして、プロジェクターでDOOMでもやるか。



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