オーディオ用PCのcanarino Filsでお世話になっているPCショップのオリオスペックから、JPLAY FEMTOがプリインストールされたファンレスPC「LIVA Z2」と、USB DAC「SMSL Audio SU-8」をセットにしたパッケージが登場した。
「JPLAY FEMTOを使ってみたい……けどインストールや設定をうまくできるかどうかわからないし、オーディオ用に使えるPCもない……」という層への贈り物である。
JPLAY FEMTOをプリインストールし、なおかつ
Kernel Streaming、ULTRAstreamエンジン、DAC Link 1000Hz (最高値)と、JPLAY FEMTOが最も高音質となるように設定済みです。その他にも、JPLAY FEMTO製品版設定マニュアルに記載していない各種設定を行ってあります。
PCM768kHzまで、DSD256まで、全てのフォーマットで安定した再生を確認しています。
というのがミソだろう。
組み合わせるUSB DACを限定したからこそ可能な企画である。
セットとなるUSB DACはSU-8のほかにSOULNOTE D-1も選択でき、こちらの動作も確認済みのようだ。
ちなみに、「JPLAY FEMTOスペシャルパッケージ」という名称ではあるものの、LIVA Z2それ自体は様々なソフトをインストールしてオーディオ用PCとしてそのまま使用できるし、SU-8も色々な用途でUSB DACとして使用できる。決してJPLAY FEMTOしか使えない組み合わせではない。
私はむしろ、このセットはJPLAY FEMTOを通じて「とりあえず手持ちのPCを使うPCオーディオ」のユーザーを、「オーディオ用PCを使うPCオーディオ」の地平に誘うということに意義があるのだと思っている。
・外観
二台のセット。
小型のファンレスPCにUSB DACなので、二台並べてもラック一段に収まるサイズ。
LIVA Z2は前後にUSB端子がある。
HDMIは2系統あるが、HDMI2.0端子だとうちのテレビ(LG OLED55B6P)との接続では画面が映らなかった。HDMI1.4端子は問題なし。
アダプターは19V仕様。余力があればまっとうなアナログ電源を用意してやりたいところだが……
SU-8は安価なUSB DACながら、ES9038Q2Mをデュアルで搭載、トロイダルトランスによるリニア電源など、なんとも豪華な仕様である。この辺はやはりお国柄と言うべきか。ついでにリモコンも付いてくる。
筐体の質感も悪くない。
バランス出力を搭載し、電源入力は3P仕様である。
・運用
各機器の接続については、マニュアルがしっかりしているので特に言うことはない。
とりあえず初回起動時だけは設定が必要なので、そこを見ていく。スクリーンショットは画面直撮りである。悪しからず。
右下の「テシコン」社アイコン(XMOS USB Driver Control Panel)を左クリック
Buffer Settingsは選択可能な最も小さい数値(8 samplesだった)
「スピーカー」を左クリックし、選択肢がある場合はSMSLの文字を含むものを選択
音量スライダーを最も右に動かし100に
その後、SMSLの文字を含まないものを選択(この場合はLG TV)
初回設定は以上。
JPLAY FEMTOは自前のインターフェースを持たないため、実際の再生操作は別途スマホ/タブレット端末からコントロールアプリを使って行うことになる。
よって、それを含めてJPLAY FEMTOを使おうと思っている人なら、さすがに上記の設定でつまづくなんてことはないはずである。
JPLAY FEMTOはそれ自体でfemtoServerというUPnPサーバー機能を持っているため、別途サーバーを用意する必要はない。こんな具合にLIVA Z2に音源を入れたUSBメモリを挿せば、それで事足りる。
組み合わせるオーディオ用サーバーとしてはfidata/Soundgenicが使用可能だが、まずはUSBメモリなりHDDなりを繋げるところから始めても問題ない。
というわけで、ここでfidata Music Appを起動する。
画面右下、JPLAY FEMTOを選んでいることを確認。
画面左上の「femtoServer」で、LIVA Z2に繋いだUSBストレージ内の音源をブラウズする。
色々あるが、「d:\」からUSBメモリの中に入れた。
この時は、「テスト音源セット」の中に音源が色々入っている。
PCM 768kHz/32bit、
DSD256ともに再生を確認した。
再生は安定しており、シークも可能。
操作に対するレスポンスは良好である。それもそのはず、LIVA Z2のCPUはPCとして見ればアレだが、オーディオ機器として見れば相当なハイスペックである。RoonのCoreを動かそうなんて考えなければ、これで充分なのだろう。
fidataからの再生も、femtoServerからの再生同様に安定している。
femtoServerは音質最優先という理由でフォルダビューしか対応していないため、JPLAY FEMTOでタグを活かそうと思えばSoundgenicかfidataを導入するのがよい。今回のセットなら、価格的にまずはSoundgenicのHDDモデルの導入が選択肢になるだろう。
さて、JPLAY FEMTOはOpenHomeに対応していた前バージョンのJPLAYStreamerとは異なり、DLNA準拠である。
色々とユーザビリティの面で問題が出てきそうなところだが、少なくともコントロールアプリにfidata Music Appを使っている限り、さすがにOpenHome対応プレーヤーほどの至れり尽くせり感はないにしても、JPLAY FEMTOはまともな音楽再生機器として使い得ると言っておきたい。ギャップレス再生も問題なく機能する。
・所感
まず、SU-8はバランス出力の方が断然高音質なので、可能な限りアンプとはバランス接続をおすすめする。
アンバランス出力はなんとも腰高な音という印象が拭えない一方、バランス出力は中低域に俄然厚みが増し、エネルギー感もおおいに高まる。
音源は手持ちのUSBメモリを直挿しという、最もお金をかけない使い方で聴いた状態でも、LIVA Z2とSU-8のセットはペア約10万円という価格を納得させるだけの音をじゅうぶんに聴かせる。情報量にせよレンジの広さにせよ空間の見通しにせよ、明らかな不満が生じる部分はない。
この再生音は、たとえファンが唸りを上げる普段使いのPCに10万円するUSB DACを繋いだところで得られるかどうか。やはりオーディオ用PCはファンレスに限る。
LIVA Z2そのものの拡張性はほとんど望めないにしても、アナログ電源はもちろん、他にも各社から出ているUSB出力改善アクセサリーを使うなどすれば、まだまだ伸びしろはある。むしろ、ほとんど何もしていない状態で、これだけの音を出せるのなら立派と言うべきだろう。
JPLAY FEMTOを用いたPCオーディオでいかなる機能性・操作性・音質が実現するのかを確かめるうえで、このパッケージには大きな価値が認められる。全部自分で揃え、自分で設定するのも手だが、「全部入りですぐに始められる」セットの存在は、間違いなくJPLAY FEMTO、ひいてはPCオーディオのハードルを下げる。
また先述したように、LIVA Z2とSU-8のセットはそれ自体で汎用的に使用可能なので、将来的により上位クラスのUSB DACを導入するような場合でも、使い道が失われることはない。
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