2010年の夏頃。

 快適な音楽再生を求め、ネットワークオーディオなるものに手を出そうと考えた私は、既にネットワークオーディオという領域において不動の地位を築いていたLINNのDSなるシステムを体験しに某ショップを訪れた。

 そして打ちのめされた。
 操作性はもちろん、音質にも。

 ショップでの試聴に使われたシステムはMAJIK DS-Iに、スピーカーもLINNのMAJIK。一体型コンポ+スピーカーという非常にシンプルな構成だった。
 当時の私のシステムは、CDPからデジタル出力してDACに入れ、そこからプリ&パワーのセパレートでDynaudioのAudience122を鳴らすという、ショップのそれに比べると実に複雑なもの。

 私がショップを訪れたのは「ネットワークオーディオを体験する」ためであって、別に音質云々はどうでもよかった。
 しかし、打ちのめされた。CDP&DAC&プリ&パワー、総額で言えばMAJIK DS-Iよりも高額なシステムだったが、完敗だった。
 Audience122のスピーカーとしての能力がMAJIKに負けているとは思えない。Dynaudioびいきとか言ってはいけない。

 気が付くと、MAJIK DS-Iを買っていた。
 AVアンプからのいわゆるパワーアンプダイレクトも使えるしね。


現在のMAJIK DS-Iの様子
MAJIK DS-I_s

 悔しいことに? 嬉しいことに? Audience122は過去最高の音で鳴り始めた。
 ネットワークオーディオという方式の威力か、DSというシステムの威力か、チャクラとかいうアンプの威力か、何にせよ間違いなく音質は向上した。
 ネットワークオーディオのシステムセットアップが上手くいくかは少々不安だったが、色々と準備していたこともあって、あっけないほど簡単に繋がった。それからネットワークオーディオの可能性を追求する終わりのない旅が始まるわけだが、それはまた別の話。
 
 音質的にも、ネットワークオーディオのシステムとしても、決して高い買い物ではなかったと思う。
 特に後者。ネットワークオーディオについて極めようと思っても、もし最初に触れた製品がLINNのDSでなかったら、今のような蓄積は決して得られなかっただろう。いやそもそも、「なんだこのふざけた機器は! ネットワークオーディオなんてクソだ!」と匙を投げていた可能性さえある。その意味では非常に感謝している。
 さらに色々な意味で、こんなにもホスピタリティ精神にあふれたオーディオ機器が存在していることに感動したものだ。伊達に英国王室にシステムを納入しちゃいないということか。

 『DS』というシステムは、ネットワークオーディオの領域において、他と隔絶する完成度を有している。DSに対するLINNの絶対的な自信も頷けるし、この事実に異論を挟む気はない。
 ただ、純粋にDACやアンプ(プリ&パワー)としての性能を考えると、正直どうなの? と思わなくもない。



【システムまとめ】