【レビュー】SOULNOTE D-1 音質編

【レビュー】SOULNOTE D-2 設定・運用編



・再生環境詳細

canarino Fils × JPLAY(JPLAYStreamer・ULTRAstream/700Hz/0.01sec設定)
JCAT USBカードFEMTO

SOULNOTE D-2(NOSモード・JPLAYモード)

SOULNOTE A-2
Dynaudio Sapphire


 D-2においてはNOSモードは常時有効にすべきだろう。
 本機の音の方向性を活かすうえで、NOSか否かの差はあまりにも大きい。



・音質所感

 全開

 DACを換えただけなのにまるでアンプを換えたかのような、スピーカーの駆動力が俄然上がったかのような、音数があまりにも多すぎて圧を感じるレベルの膨大な情報量。
 今までなだらかな曲線だと思っていた音の輪郭が、実は微細な起伏とディテールに満ち満ちていたのだと感じるレベルの膨大な情報量。

 エネルギー感だの何だのを越え、ただ「生きている」としか言いようのない生々しさ。
 無から鮮烈に立ち上がり空間を貫く極大のコントラスト感。
 ギターもパーカッションも管楽器も、かつてない躍動感とともに疾走する。
 ボーカルはすべからく溌剌として生命力が溢れる。
 言うまでもなくライブ音源との相性の良さは究極的。迸る熱気と空気感の再現は尋常ではない。
 ここ最近のリファレンス音源と化している『John Butler / Ocean』などは本機の美点が顕著に表れる曲で、弾かれ、震え、空気を揺らすギターの弦を拡大して覗き込んでいるかのような感覚すら去来する。

 TOTOの「Africa」とか「Home of the Brave」とか、Flookのアルバム「Rubai」とか「Haven」とか、曲は最高なんだけどもうちょっと音に鮮度があればなあと思っていた音源がもう化ける化ける。光って弾けて心を躍らせる。録音の問題ではなく、再生システムが音源本来の鮮度を出し切れていなかっただけなのだと思い知らされる。


 オーディオ機器としての基礎性能も極めて高い。
 線の細さは皆無で、一音一音はかなり大きめ。といいつつ輪郭はまったく崩れず、音の分離感も素晴らしい。ただ、広い空間に音を丹念に散りばめた結果の分離ではなく、音楽を容赦なく全開で炸裂させたうえで、凄まじい切れ味で猛然と音を斬り刻んだ結果の分離である。すべてを出したうえですべてを聴かせる。とにかく意識される音の情報量は半端ではない。

 曲のメインであろうとなかろうと、あらゆる音がぎらぎらと存在感を主張する。
 本機で様々な曲を聴いていると、時としてなめらかさやきめ細かさだけでなく、鋭利な感触や荒々しさも意識される。しかし、そのような音を聴いても嫌悪感を抱くどころか、「死んでいる音は恐ろしくない。恐ろしいのは音が生きているからだ」的な、謎の、かつ強烈な納得感が先に来る。


 ただ、音が熱すぎるというかなんというか、あまりにも無遠慮かつアクセル全開ですっ飛んでくるので、「女性ボーカルを艶めかしく聴こう」とか「静かな曲をしっとりと聴こう」とか、そういう志向とは少々乖離するとも思える。

 例えば、『Helge Lien Trio / Natsukashii』だと、今までは「Oh…Natsukashii…」という感じだったのが、D-2で聴くと、いつもならしとやかなドラムやベースまで存在を主張しまくるので「Whooo! Natsukashiiii!!」って感じに聴こえる。
 音が空間にみっちりと溢れ、音と音の隙間が狭まるので、相対的に静寂感は減退する。空気感が濃密すぎて静寂を感じる暇がない。

 これを「音が平面的」とか「抑揚に欠ける」と表現することももしかしたらできるかもしれないが、「空間がみっちりしているのは空気感がしっかりと再生できているから」と捉えることもできよう。そして正解はおそらく後者で、私の部屋がD-2の情報量を受け止めきれていない感もある。
 いずれにせよ、かつてない音の生気と躍動によって、楽曲の新しい姿を垣間見ることの感慨は大きい。『Natsukashii』に関して言えば、「在りし日の追想に浸るひと時の安らぎ」が「久しぶりに田舎に帰省して大はしゃぎ」に化ける。

 このような印象は私がアンプにA-2を使っており、SOULNOTE同士の組み合わせによって音が灼熱しすぎた結果とも考えられる。「それこそSOULNOTEの目指すところだ!」と言われれば確かにその通りなのだろう。

 D-2を単体で見れば、音のディテールを徹底的に暴き出し、さらにそれを絶対に殺すことなく曝け出す能力を持った、極めて優秀なDACであることに疑いはない。
 我が家で聴いたことのある定価百万越えのDACと記憶の中で比較しても、音質の絶対値において劣っているとは全く感じない。



 さて、前回の記事でも最後に触れたことだし、SFORZATO DSP-Doradoとの比較も書いておく。

 私のシステムにおけるDSP-Doradoは以下のような接続となっている。



canarino Fils × JRiver Media Center
JCAT NETカードFEMTO

SFORZATO DSP-Dorado(NOSモード・Diretta/LAN DACモード

SOULNOTE A-2
Dynaudio Sapphire



 D-2には他の再生ソフトを凌駕する再生品質をもたらすJPLAYを最良の状態で使えるという強みが、DSP-Doradoには完全に予想外のポテンシャルを発揮したDiretta/LAN DACモードという強みがある。税別価格はD-2が600,000円、DSP-Doradoが800,000円(底板補強オプションでプラス3万)と、完全に別セグメントというわけでもない。
 互いに死力を尽くした興味深い比較だが、既にDSP-Doradoを使っている身からすれば恐ろしくもある。


 結論から言うと、私の再生環境における両者の絶対値互角


 LAN DACモードのDSP-Doradoはその時点で過去最高の生命力横溢な音を聴かせてくれたものだったが、D-2はさらに上をいく。
 「音そのもの」のディテール描写でもD-2がDSP-Doradoを上回る。例えば『John Butler / Ocean』では、指と弦が擦れる音の生々しさで顕著な差が出る。

 一方、静寂感、上下左右奥行方向の立体感、曲ごとの表情の豊かさといった点に関しては、DSP-Doradoに軍配が上がる。
 つまるところ、DSP-Doradoの方が「魅せ方」「聴かせ方」が巧い。

 もっとも、これらの比較はあくまでも(私の中では)限りなく高いレベルでの話である。D-2が静寂感に欠けるわけでもDSP-Doradoが生々しさに欠けるわけでもない。全能力値がカンストした状態でボーナスポイントの割り振りを考えているようなもんである。



 SOULNOTE D-2は素晴らしい……というより、凄まじいDACだ。

 渾身のNOSモードを活かすべく投入された4個のES9038PRO、超強力な電源&アナログ部、じゅうぶんすぎる対応フォーマットのスペック、忘れてはならない将来性の高さ。よくもこれだけの内容を、多くの人にとって「非現実的」ではなくなんとか「非常識」の範疇に留まる価格帯に詰め込んだものだと思う。
 そしてなにより、この再生音の凄まじさである。こんにちにおいて、間違いなく最強の一角を占めるDACに違いない。


 然るべき環境の然るべきシステムでD-2を聴いてみよう。

 生きている音が好きなら、きっと度肝を抜かれる。



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