【ネットワークオーディオの基礎知識】『NAS』の正体――そもそも 『サーバー』とは何か

 さて、最大限の情熱を傾けてライブラリを構築した。

 次はサーバーだ。
 ところでサーバーって何だ?
 NAS?? PC??? ナス?????

 ネットワークオーディオの文脈におけるそれぞれの意味。
 ひとつひとつ見ていこう。

 
 
■サーバー

 音源の在り処。音源を保存し、プレーヤーに音源を配信するもの。
 ブラウズの際にアプリに表示される音源の情報も、基本的にサーバーから送られてくる。
 機器そのものというよりは、「機能」あるいは「役割」という認識が相応しい。

 NAS、PC、さらに最近ではスマホもサーバーになる。

 
 
■NAS

 Network Attached Storage、ネットワークに繋げて使うストレージという製品ジャンル。実質的にはストレージ関係に機能を絞ったPCのようなもの。色々なメーカーの色々な製品がある。
 ネットワークオーディオにおいて「サーバー」と言われれば、基本的にNASのことを指すと考えていいくらい、「NAS=サーバー」というイメージが出来上がっている。

 しかし、後述のとおりPCをサーバー化すれば、ネットワークオーディオを実践するうえでNASは必ずしも必要ではない

 とはいえ、再生時にPCが介在しない形態のネットワークオーディオを実現しようと思えば、機器としてのNASの存在が重要になる

 なお、全てのNASがサーバー(ネットワークオーディオにおける)になるというわけではない

 
 
■PC

 ネットワークオーディオの利点として「再生時にPCが介在しない」ことがよく言われるが、それはあくまで「PCで完璧に作り上げた音源が、PC以外のサーバー(多くの場合NAS)に保存されている」ことが前提であって、再生という最後の最後以外では基本的にPCが必要になる。
 リッピングも、音源の管理も、タグの編集も、基本的にPCがないと何もできない。最近ではリッピングから音源の管理編集までPCレスで可能なオーディオ機器(製品ジャンルとしては「ミュージックサーバー」と呼称される)も登場しているが、そこにPCのような自由度や効率はない。

 なお、サーバーソフトを導入すればPCもサーバーになり、単体サーバーとしてのNASがなくともネットワークオーディオが可能になる。

 
 
 ……ん?

 サーバーソフト?

 そう。サーバーソフトである。

 
 
■サーバーソフト

 サーバーをサーバーたらしめているソフト。PCにおけるOSのようなもの。
 すなわち、サーバーソフトの入っていないNASはサーバーとして機能せず(大抵の場合何かしら入っているが)、サーバーソフトが入ればPCもサーバーになる

 実際の運用において、サーバーソフトの違いはハードウェアの違いよりも遥かに重要。まったく別のハードウェア(NASやらPCやら)でも、中で動いているサーバーソフトが同じであれば同じように機能する。逆に、まったく同じハードウェアでも、中で動いているサーバーソフトが異なればまったく違う振る舞いをする。サーバーソフトのバージョンが違えば、また色んな部分が変わってくる。

 
 
 このように、サーバーにとって非常に重要であるにも関わらず、今の今まで、私の知る限り、ネットワークオーディオ界隈のメディアではほとんど触れられてこなかった。「音源をどのように見せるかはNASによって異なる」とか、そんな無責任なことが書かれるのが精々である。
 そこんとこをきちんと調べて書くのがメディアの、オーディオ業界の仕事じゃないのか? こんなだから結局、馬鹿を見るのはいつだってユーザーだ。

 さらにたちの悪いことに、NASを売っているメーカーも「何が入っているのか明記していない」場合が非常に多い。つまり、「NASを買ったはいいがサーバーとして使えない」という場合もあり得るわけで、誰も何も言わないけど大問題だぞこれ。

 
 私はどのようなサーバーソフトがあって、それぞれどのような挙動をするのかは知っているが、残念ながら「どのNASにどのサーバーソフトが入っているか」までは把握していない。肝心のメーカーがほとんど公表してない現状では、実際に使ってみない限り知りようがない。

 ちなみに、QNAPにはTwonkyが入っている。QPKGとしてMinimServerも入る。実際に使っているからこれはわかる。

 あと、2年ほど前の時点では、バッファローのNASの一部もTwonkyが入って“いた”。これも実際に使ったことがあるからこう言える。といっても、現時点でメーカーとしてTwonkyが入っていると明言しているのは例のオーディオ用NASだけなので、その他のモデルについては不明。

 
 最近だと「オーディオ用NAS」とか言って、文字通り桁違いの、びっくりするような価格帯の製品も登場している。
 で、その手のオーディオ用NASの評論記事を読んでみれば決まって「素晴らしい高音質でぶったまげた」という言葉が並ぶ。いやそうじゃないだろ。中身はどうなってるんだ中身は。使い勝手はどうなんだ。サーバーソフトは何を使ってるんだ。TwonkyやらAsset UPnPやらMinimServerといった汎用ソフトなのか、それとも独自仕様なのか。特に自宅でネットワークオーディオを実践している(らしい)評論家先生は、自分の使っている環境と比べて何も感じないのか。自分の音源を持ってきて聴いてるんじゃないのか。サーバーソフトを含めた諸々のユーザビリティをろくすっぽ吟味もせずに製品をすすめるのか。信じられない。

 
 
 ……収拾がつかなくなるので、この辺りでまとめよう。

 サーバーとは、「音源の保存と配信」という役割であり、サーバーソフトが入ったNASやPCといった機器がそれを担う。

 つまり、

 PCもサーバーとして運用できるので、ネットワークオーディオにおいてNASは絶対に必要というわけではない。

 ただ、

 音楽再生の際にPCなんて使いたくない! と思えば別途NASが必要。

 しかし、

 リッピングやら音源の管理やらタグの編集やらNASにデータを移す時やら、たとえ再生時には不要でも、結局はどこかでPCは必要となる。

 
 次回、「サーバーに関するありがちな誤解」。
 今回の記事の内容をきちんと把握したうえで読んでほしい。

ネットワークオーディオの三要素:【サーバー】【プレーヤー】【コントロール】【2023/10/29追記】  良い機会だと思って、記事をリニューアルした。 https://audio-renaissan...

 
 

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