わたしは映画通になりたいわけではない。
深淵な映画全般の知識も無ければ、作品の衒学的文学的な評論など出来はしない。

ただ、『AV』という要素によって好きな映画がもっとずっと面白くなることを知っただけなのだ。
わたしに出来るのは、その『AV』の部分の評価だけである。
そしてそれならば、わたしはわたしの言葉で語ることが出来る。



……サファイアを迎え入れて、リアルスティールを見て、このことを再確認した。


画質;15☆ Dreamed Dream Picture
音質:10※


映像はAVC、音声はDTS-HDMAの7.1ch・24bit

画質について。
デジタルが夢見た画質。
それも、アバターのようにCGIの箱庭の中でオマケ程度に人間が介在する映像ではなく、あくまで“実写”でもって実現されたものである。
今までこの視聴記で、実写映画として画質評価15点を付けたのは、「アイ・ロボット」「007 慰めの報酬」「ウォッチメン」「スピリット」「トランスフォーマー リベンジ」「プライベート・ライアン」の6本。天井越えの究極評価を与えたのは「アバター」の一本。
わたしにとって、究極の画質を考えるうえで「ノイズが無いこと」は非常に大きな要素である。いわゆるフィルムグレイン的なものが作品に特有の質感を与えることは大いに理解できるし、映像作品である以上その手のものは大いにあってしかるべきだと思うのだが、人間の目で見る世界にはそもそもノイズなど存在しないからだ。その点、アバターはそもそもがCGの塊なので、他の実写作品と異なり粒状感を付与して解像感を高めるといった小手先を弄する必要が無い。その結果の究極評価とも言える。15点をつけた実写映画は、どれも基本的に粒状感をもってディティールを際立たせる方向にある。
そしてリアルスティール。この作品の画には、ノイズが無い。少なくとも、粒状感として認識される類の質感は無い。しかも、そのうえで、私が知るあらゆる実写作品の中で最も豊かなディティールに満ちている。無敵である。
色彩は陽性かつ鮮やかなもので、万人が一目で美しいと感じられる光景に満ちている。かつてスパイダーマン3の画質に感激したことを思い出す。
ロボットなどの無機物の切れ上がるディティールはもちろん、なにより素晴らしいのは自然物の描写。ハイビジョンという枠組みから溢れ出しそうな情報量に満ち、かつそこから受ける印象はあくまで暖かく、そして“やわらかい”。それは映像にありがちな強調感やうさんくささの無い、まさに肉眼で目にするがごとき画なのである。このレベルの画はダークナイトのIMAXシークエンスで目にして以来である。
古き良きアメリカーナの風景やメタリックなロボ・ボクシング会場まで、恐るべきディティールと神がかり的な繊細さをもって全編を描き切るのだ。
デジタルが夢見た画質。
リアルスティールは4K撮影だそうだが、やはりと思った。
見どころ:
すべてのドット

音質について。
映像のハイライトとしてはやはり鋼が火花を散らすロボ・ボクシングなのだが、この作品の主題はあくまで家族ドラマにあるのだろう、音響の作り方はアクション映画というよりはドラマ寄りである。
そのため、全編通じて素晴らしく力の入った音を聴かせるものの、音響それ自体が主役になるようなシーンは無い。あくまで音楽とダイアローグが主体にあり、その大枠の中で戦いが盛り上がるといった具合である。鋼の拳が激突する様はわたしが期待していたほどの盛り上がりは無かったが、丁寧な劇伴のミックスや場を埋め尽くす大歓声の分厚い包囲感のおかげで、非常に楽しい時間を過ごすことが出来た。
魂を揺さぶる威力は無いとはいえ、ロボットの動きは7.1chを縦横無尽に生かして動き回る実に巧みなものであり、空間の構築としては満点である。
後半のスタジアムでの激闘は、少々優しいグラディエーターとでも言おうか。
ダイアローグも非常によく磨き込まれてオーディオ的美点を持っているのだが、わたしの再生環境の問題なのか、50:00~52:30にかけて声にピー音が混じっていた。ソフト由来だろうか。ハード由来だろうか。そこだけが気になる。
聴きどころ:
アトムVSツイン・シティズ
アトムVSゼウス、第5ラウンド



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