●イントロダクション
NA7004で国産ネットワークオーディオプレーヤーの先陣を切ったマランツだったが、同時に用意されたアプリの『Wizz App』は正直、どこをどう間違えればこうなるのか分からない、歴史に名を残すレベルで酷いアプリだったように思う。(双子であるデノンのアプリも同様)
その後色んなメーカーからネットワークプレーヤーだのアプリだのが出ても、ろくすっぽ改善されないまま長い年月が流れ、最近になってようやく、ようやく本格的なアップデートが為された。Wizz Appの名は黒歴史として封印したのか、名称まで変えての再起である。
デモモード目当てで落としてみたところ、なんと汎用アプリとして動作することが分かったので、さっそく今回の無差別級検証に参加願うことにした。
ちなみに検証は当初DSで行ったが挙動が怪しいため、foobar2000を用いた。

アプリは無料。残念ながらiPad版は無し。NA11の為にもiPad版を早急に出すべき。
5月中旬にはアンドロイド版が出るらしい。


●検証環境
無線LANルーター:Buffalo WZR-HP-G450H
NAS:QNAP TS-119 firmware version 3.6.0 Build 0210T
サーバーソフト:TwonkyServer version 6.0.38
レンダラー:foobar2000 UPnP Renderer
コントローラー:iPhone3GS


インターフェースの階層構造が錯綜しているため、
非常に長い記事となっているがご容赦願いたい。


●インターフェース&コントロール

起動と共にマランツのアイコンたる丸窓が出現。
読み込みの後、最初に設定画面が現れる。
「アプリ設定」は操作音を鳴らすか否かとか。デモモードは文字通りで、初回起動時にいきなり画面右上の「完了」を押すとデモモードに移行するようだ。
mara1


「デバイス」を押すと、ネットワーク上のレンダラーの一覧が表示される。DSにパイオニア製のAVアンプにfoobar2000。このアプリが汎用的に使えることの証拠である。再検索ボタンも用意されている。
レンダラーを選択すると、今度はサーバーの選択となる。ここでも更新ボタンがあるのだが、右上ではなくリストの上部にある。
mara2


あとは毎度おなじみ、サーバーの階層を下って目当てのアルバムまでたどり着くだけ。
Wizz Appでは不可能だった、ブラウズ時のアルバムアートのサムネイル表示もきちんと出来ていることに注目。さらにいえば、“一度に7個の項目しか表示できず、スクロール自体がそもそも不可能”というトンデモ仕様もようやく消滅している。
mara5


音源を選択し、いざ再生。
再生が始まると、アルバムアートをフィーチャーした再生画面へとスムーズ……に移行する。画面左上の「←」でブラウズ画面に戻る。
再生停止一時停止に曲送り、リピート(一曲&全曲)など、再生に関する操作ボタンは基本的にこの画面にまとめられている。なお、タイムバーとサーチはfoobar2000では機能せず。
mara4


再生画面でアルバムアートを押すと、画面いっぱいに拡大される。もう一度押せば元に戻る。
画面いっぱいに表示されて目には楽しいのだが、この状態では操作ボタンがアルバムアートとかぶって非常に不細工である。
mara6

寄り道ではあるが、例によって双子のアプリである『Denon Remote App』と再生画面を比較をしてみた。
拡大時比較
マランツとは……いったい……
さらにいえば、この画像はセコイうえに一部捏造である。

と、ここまではいいのだが、このアプリ、とにかく操作ボタンと階層構造が錯綜しており、インターフェースをまとめきれていない。

ブラウズ画面右下に出てくる「↑」を押すと、“サーバーの最初の階層”まで一発で戻る。
mara7


右下の……真ん中のアイコンを押すと、プレイリストの管理画面に移行する。
mara8


右下の……右のアイコンを押すと、メディアサーバーの選択画面まで戻る。
mara9


左上にギアのアイコンが出ている時に押すと、一番最初の設定画面に戻る。
mara10


ちなみに、これらのアイコンがどういう規則で表示されたりされなかったりするかは、正直なところよくわからない。検証する気も失せた。



さて、ここまできて、ある程度分かっている人なら疑問に思うことがあるはず。

「現に、“今再生している音源のプレイリスト”はどこ?」

……残念なことに、「そんなものは無い!」が答えである。信じられん。



さて、“現に今再生している音源のプレイリスト”とは、つまり、
playlist5
playlist6
playlist7


こういうもののことである。

普段使いで、特に意識せずとも、音源を選択すれば自然と機能するプレイリスト。


Marantz Remote Appには(むろんデノンのにも)、これが無い。


ただ音源を選択するだけでは、勝手にアルバム単位での再生になり、かつその場合、“今どんなプレイリストで再生されているかを知る術が無い”のである!

ネットワークオーディオにおいて当たり前のように行っている、数多のアルバムから好きな曲を好きなだけ送り込んでザッピング再生するという行為が、このアプリにおいては明示的にプレイリストを編集・保存しなければ行えない。
この点において、この最も重要な点において、Marantz Remote Appは悪名高きWizz Appから何の進歩もしていない。Wizz Appはプレイリストを作ることすら不可能だったが、それはもはや論外すぎて語るに値しない。

どうしてこうなったのか。

そんなわけで、プレイリストをいちいち作って保存する作業が始まる。
「プレイリストを追加」から、てきとーに名前を付けて保存。
playlist1


ブラウズ画面が出てくるので、目当ての音源を選択したら、右上の完了を押す。
ちなみにこの時、プレイリストに登録する音源を選択しても、色が変わるわけでもなく印がつくわけでもないので、きちんと登録されているのかどうか非常に分かりづらい。
playlist2


ここで完了を押しても、実はまだ完了ではない。

ここにきて登録した曲の一覧が表示され、あらためて完了かどうか聞かれる。左上の「+」を押すと登録のためのブラウズに戻る。
で、ようやくプレイリストが完了。編集削除もこの画面から。
playlist3


ネットワークオーディオにいて非常に重要な、“色んなアルバムの色んな曲をザッピングして聴く”ためには、このなんとも面倒な工程を“その都度”繰り返さなければならない。
playlist4


メディアサーバーから選曲して再生するとアルバム単位でしか再生できない。
ザッピングして再生するためには、その都度プレイリストをひとつひとつ作成編集保存しなければならない。
なんのためのネットワークオーディオプレーヤーなのか。

どうしてこうなったのか。


D&Mのアプリ設計者はネットワークオーディオのなんたるかを未だに分かっていないようだ。



●機能

・再生:〇
・一時停止:〇
・停止:〇
・曲送り:〇
・サーチ:不明(foobar2000Rendererでは使用不可)
・ランダム再生:×
・リピート再生:〇
・プレイリストでの再生管理:×  ←←←←←
・プレイリストの保存:〇
・検索ウィンドウ:〇
・アルバムアート拡大:〇
・音源のスペック表示:×
・音量調整:〇
・ミュート:×
・機器の入力切替:〇(デモモードで確認、おそらく純正機器なら可能)
・電源オンオフ:〇(デモモードで確認、おそらく純正機器なら可能)
・機器の再検索:△(精度悪し)



●操作感

速度比較は以前と環境が違いすぎるので省略。
ひとしきりプレイリスト絡みで文句を言ったが、アプリを操作している感じは決して悪くはない。
Wizz Appから見違えるように見た目は綺麗になったし、スクロールもなかなかにスムーズ。レスポンスも十分早い。アルバムアートも綺麗に見られる。
詰めの甘い部分は散見されるが、少なくとも見た目や操作感については及第点である。



●まとめ

5段階評価――3あれば及第点

・インターフェースの洗練度――論外
・情報の一覧性――論外
・速度――3
・機能性――論外
・安定性――3

プレイリスト絡みの致命的な仕様と階層構造の錯綜。インターフェースの酷さが全てを台無しにしている。現状ではまだ、“見た目だけは綺麗なアプリ”でしかない。
逆に言えば、そこさえなんとかしてしまえば、下地は出来上がっているのですぐにでも化ける。
頑張れ、国産ネットワークオーディオプレーヤー!



ネットワークオーディオTipsまとめ