BD風立ちぬ
好きなことを一生懸命やる。


画質:15
音質:10


映像:AVC
音声:リニアPCMモノラル 2.0ch 24bit


○画質
 BDとしては『崖の上のポニョ』から連綿と続く、デジタル制作時代のジブリの画。
 ジブリ作品ならではの、極めて繊細な粒子感を付加するフィルターは相変わらず効果を発し、デジタルならではの精細感にフィルム“っぽい”質感を与えている。
 圧縮に伴うノイズといった技術的課題はとうの昔にクリアされており、あとはいかにBDという器に最大限の情報量を注ぎ込めるかという次元の画。
 ジブリ作品のBDの到達点。
 揺るぎない技術の積み重ねに裏打ちされた盤石の安定感。
 空の青と夢の緑に、心が躍った。

○見どころ
 飛行機の質感
 計算尺のディティール
 すべての美術


○音質
 本作のサウンドはモノラル×2であり、そもそもの時点で空間的な音の構築は期待しようがない。
 また、明らかな演出意図に基づいたものだとは思うが、音のダイナミックレンジもかなり抑えられているという印象を受ける。
 そのため、同じ2.0ch収録の『紅の豚』と比べると、映画音響としてのダイナミズムは明らかに劣っている。散りばめられた音数はそれほどでもなく、飛行機のエンジン音も、空を裂いて翻る様も、音だけで観る者を昂揚させるようなものではない。
 ただ、この作品の音が目指したのは鉄火舞い散るドンパチではなく、あくまで飛行機を取り巻く“人間”の心の機微を描くことだと思うので、“あえて”ダイアローグにフォーカスを当てたモノラル音声というのはアリだと感じた。また、初期のジブリBDに感じた“声の過剰なハリ”は本作ではすっかり改善されており、滑らかで、自然で、かつ存在感があるという実に素敵な声を聴かせる。
 これはこれでよいのだと思わせるに足る、非常に完成度の高い音である。

○聴きどころ
 プロポーズ
 すべてのダイアローグ


○総評
 主演声優を見た時は「DAICON FILMかよ!」と思ったが、なかなかどうしてしっくりはまっている。プロポーズに到る一連のダイアローグは必聴。
 作品のテーマに「戦争と飛行機」を選んだあたり、やはり引退作として並々ならぬ思いがあったのだろう。そして作中では、「戦争は嫌いだが、それでも戦車や飛行機が好きで好きでたまらない」という監督の内面が物凄くストレートに表現されている。そのせいだろうか、作品全体に気張った感じも気負った感じもなく、物語の展開が非常にスムーズだった。幾度となく登場する夢の草原は、飛行機を愛してやまない監督自身の夢でもあったはずだ。
 BDとして見ても、画は盤石にして極めて優秀、音は残念ながらマルチチャンネルを駆使した映画音響の醍醐味、というものからはだいぶ外れているが、高品位なダイアローグは一聴に値する。
 心のこもった作品だからこそ、その想いを最大限受け止めるべく、可能な限りの高画質・高音質で鑑賞したい。
 本作のBDは、その夢をきっと叶えてくれる。



○再生環境(詳細はコチラ

・ソース
OPPO BDP-103

・映像
Victor DLA-X30
KIKUCHI SE-100HDC

・音響
Pioneer SC-LX85
Nmode X-PW10
Dynaudio Sapphire
Dynaudio Focus200C
Dynaudio Audience122
Dynaudio Audience52



【BDレビュー】総まとめ