*

【BDレビュー】 第231回『紅の豚』

公開日: : 最終更新日:2013/12/15 BD・ホームシアター関連, オーディオ・ビジュアル全般

画質:9 AVC

ラピュタ以降、耳をすませばで、ジブリにおけるフィルム作品のBD化は完成されたように思う。
目を見張る情報量、突き抜ける解像感……といったものは、ない。ただし、色あせない。不満がまったくない。
100インチの画面で見ても、画質面で気になる部分が何も出てこない。かつて作られたフィルムをスキャンしてデジタル化し、そこからBDに落とし込む。過去230回もレビューを書いてきて心の底から思ったことだが、その工程で最も重要なのは愛情だ。それも口先だけの愛情ではない。愛ゆえに最上の最善を尽くす、そういった姿勢が必要だ。そして口先だけの愛情が幅を利かす残念な日本のBD市場において、ジブリは極めて愛に満ちたソフトを出してくれる。東宝盤とクライテリオン盤の『七人の侍』を見比べてみるといい。多少高くてもなんら問題はない。
「なんかぼけてる」「なんか汚い」「なんかノイジー」「なんか……」
画質に対し、この手の感情が湧いて邪魔されないだけで、どれだけ鑑賞の質が高まるというのか。計り知れない。
海が青い。空が碧い。描かれたすべてが見える。素晴らしい。
雲だと思っていた、空に浮かぶ点だと思っていたものが、実は散っていった飛行艇だと気付くシーン。そこに、この作品がBD化した真価がある。
ただし一か所。じいさんが請求書とにらめっこしているシーン。ほんの一瞬だけど、画面にガタがきた。そこで一点減点。

見どころ:ホテル・アドリアーノとマダム・ジーナ


音質:14 リニアPCMステレオ

感激した。
ステレオ音響でもって心震わす瞬間を生み出すことは、現実的にサラウンドよりもずっと難しい。映像の補完に加えて純粋な演出として極めて有効な、「真後ろからの音」を使えないからだ。
ところがどっこい、紅の豚は、下手なサラウンドの映画よりも、はるかに音響的醍醐味に満ちている。高品位なダイアローグに支えられ、劇伴も効果音も2本のスピーカー間を自由闊達に動き回る。空戦時の音はステレオが目指す究極、「2本のスピーカーだけで空間情報のすべてを再現する」という領域に達しつつあると思えた。かつてステレオ音響の映画で音質10点をつけた『グラン・ブルー』よりも、さらに一歩先を行く仕上がりだ。
この辺の妙味はシアターだけでなく、2chステレオにも投資してきたからこそ得られたもの。そしてだからこそ、「ステレオ収録の映画は素直にステレオで見るべし」と言える。
瞬間的な爆発力はないにせよ、音圧の不足は一切感じなかった。というよりも、劇伴にせよ効果音にせよ、音の盛り上がりは今まで見たジブリ作品の中でまちがいなく最高である。近作であり、サラウンドをきちんと活用して空間を構築した『借りぐらしのアリエッティ』をも凌駕している。いつもいつも音響的には盛り上がりに欠け、煮え切らない感のあるジブリ作品で血沸き肉踊る昂揚が得られた。エンドロールの『時には昔の話を』も、純然たる高音質で素晴らしい余韻を提供してくれた。
実に楽しい時間だった。

聴きどころ:劇中歌、劇伴のすべて


もののけ姫のBD化が死ぬほど楽しみだ。



BDレビュー総まとめ

スポンサーリンク


関連記事

【音源管理の精髄】 再生ソフトを用いたPCのサーバー化――最も簡単なネットワークオーディオの形 【ネットワークオーディオTips】

 NASとサーバーに関するありがちな誤解に関する記事の中で、「NASがなくてもネットワークオーディオ

記事を読む

【BDレビュー】第300回『ぼくのエリ 200歳の少女』

 足かけ8年以上、とうとう300回到達。  今までにいったい何千枚のBDを見てきたかわからないが、

記事を読む

【ハイレゾ音源備忘録】 toe / For Long Tomorrow

・アーティスト / アルバムタイトル toe / For Long Tomorrow ・購入

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第70回『時をかける少女』

画質:15 音質:8 映像はAVCで30台後半中心の超ハイビットレート。 音声はドルビーTR

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】ネットワークオーディオとストリーミングサービス

 spotifyに加えて最近ではApple MusicやらAWAやら、音楽ストリーミングサービスがま

記事を読む

ホームシアターでゲームをしよう!

続編:【ホームシアターでゲームをしよう!】はじめに 【ホームシアターでゲームをしよう!

記事を読む

ネットワークオーディオのユーザビリティの行き着く先

 ネットワークオーディオでは、「サーバー」・「プレーヤー」・「コントロール」の三要素が独立している。

記事を読む

サラウンドジャンキーに送る“シューテムアップ”BD10選

 【BDレビュー】300回到達 & UHD BDローンチ記念。  この記事における「シュー

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第91回『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』

画質:10 音質:10+α(7.1ch収録のため) 映像はAVCでビットレートは基本30台

記事を読む

【BDレビュー】第331回『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

画質:10 音質:12 (評価の詳細についてはこの記事を参照) 映像:AVC 音声:DT

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

『オペラ座の怪人』のUHD BD

オペラ座の怪人 4K ULTRA HD&ブルーレイ(3枚組) 初回限定

【インプレッション】Playback Designs Merlot DAC 外観編

Playback Designs Merlot DAC - ナスペック

【菅江真澄紀行文・本編紹介】第一章「栗駒の心臓を御室に見る」

クラウドファンディングサービス「FAN AKITA」でプロジェクトを実

NetAudio vol.25で記事を執筆しました

 この手のおしらせはしばらく放置していたが、これからはマメにやっていこ

「FAN AKITA」のプロジェクトで目標金額を達成しました

小町ゆかりの地「真澄と歩く」出版プロジェクト - FAN AKITA

MQAのソフトウェアデコードって……

MQA Decoding Explained - Audio Stre

LUMINがRoon Readyになったような

 ん?  !?  常時起動の単体Roon Serv

3,000,000PVを達成しました

 言の葉の穴は2017年1月5日をもって3,000,000PV

canarino Fils × JCAT USBカードFEMTO

 canarino Filsの導入当初は、ちょいと思うところがあって、

TIDAL MASTERS with MQA

TIDAL MASTERS TIDAL is deliverin

Roon 1.3のプレビュー

Coming over the hill: the monstrous

言の葉の穴 2016-2017

 「言の葉の穴」読者の皆様、あけましておめでとうございます。  昨年

言の葉の穴 2016年のハイライト 創作・地元ネタ編

 もうすぐ終わるので振り返り。  オーディオだけではないのである。

言の葉の穴 2016年のハイライト オーディオ・ビジュアル編

「言の葉の穴」的2015年のAV関連ニュース10選  独断と

2016年の心残りその2 まだ見ぬOPPO Sonica DAC

OPPO Sonica DAC そして素晴らしいのは、この手の製

2016年の心残りその1 LUMIN、未だRoon Readyならず

Roon Ready、ネットワークオーディオ第五の矢  LU

2015年の心残りは2016年でどうなったのか

2015年の心残りその1 ESOTERIC N-05 紹介記事

【BDレビュー】第341回『帰ってきたヒトラー』

画質:8 音質:8 (評価の詳細についてはこの記事を参

シン・ゴジラのUHD BD

「シン・ゴジラ」が'17年3月22日BD/UHD BD化。初公開映像満

【BDレビュー】第340回『DOOM / ドゥーム』

画質:6.66 音質:13 (評価の詳細についてはこの

→もっと見る

PAGE TOP ↑