画質:15☆ Magnificent 音質:9


映像はAVC、音声はDTS-HDMAの24bit

画質について。
アバターを見ている最中は、「ああ綺麗だな」で終わる。
アバターを見た後、トランスフォーマーリベンジとか慰めの報酬を見ると「やっぱり綺麗だな」と思う。
その後で改めてアバターを見ると、
「!?」
となる。
何かが決定的に違う。
この作品の画質は本質的に従来の実写作品とは決定的に異質である。
もはやアバターを実写映画と呼ぶことは不可能だろうし、アバターという作品自体がそう呼ばれることを放棄しているようにも思う。そして現実世界の切り取りと再構築をやめたことによって、画質面でも新たな領域へと足を踏み入れた。
実写作品として現実世界に依拠する必要はもはや無く、想像力と創造性の赴くままいくらでも“美しいもの”を生み出せる。この手の映像が表現として実写作品を越えるかどうかはさておき、少なくとも画質においては完全に凌駕していると言わざるを得ない。WALL.Eのような漫画的表現の作品ではなく、あくまで等身大(巨人ではあるけれども)の人型生命体の目線で作られた映像だけになおさら、真に迫る。
通常3DのCGIを実写に入れ込む際には実写部分との整合性を図るために何かしらの処理をしているはずだが、アバターではそんなプロセスが存在しないがために、超高解像度で作った超ハイポリゴンの3Dモデルが超高精細な背景の中を自由自在に動き回るという、ある意味CGI本来の魅力をストレートに表現できているとも言えよう。
WALL.Eの画質を「さわれそう」と表現するなら、アバターのそれは「そこにいる」とでも言うべきか。アバター症候群なんてものが生じても仕方が無いのかもしれない。
現実世界を超えるリアリティーの表出、未知の実体感。
この作品の画質を語る上で、私の語彙はあまりにも足りない。
神々の間に人知れず歩み入り、静かにその玉座へ。
ところで、何故かテレビに映すよりもプロジェクターで映す方が精細感の点でも良かった。普通は逆なのに。

音質について。
新たな天地開闢とも言うべき画質に比べれば、音質はそれほどでもない。
超大作にふさわしい練りこまれた音響ではあるものの、映像のテンションには到底追いついていない。起こっている事象に対して全体的に音が軽くて鈍くて威力が無い。はっちゃけ方が足りない。お行儀が良すぎる。
音響設計としては近作の水準値を軽く上回る出来ではあるものの、音そのものに魅力がそれほど感じられないのは残念すぎる。
まあ、更に更に大音量でもって迫力が出るようなデザインの気もするし、うちの機材がしょぼいだけの可能性もある。
ちなみにアバターの音響を作ったスタジオではディナウディオのモニタースピーカーを使っている模様。

画質評価で15↑を付けようにも、音質でも15↑を付けられるようなソフトが無いと評価のバランスが悪いということで自粛していたが、晴れてプライベート・ライアンという王者が帰還したことにより音質でも15↑が進呈され、アバターの視聴記を書くことが出来た次第。



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