お話はさておき。
映像と音響を浴びるための映画。
まさしくシアターのための映画。

「この艦が沈むもんかよ」
battleship


画質:9 音質:11


映像はAVC、音声はDTS-HD Master Audio

画質について。
昨今の映画として非常によくできた、一目見て「高画質」とわかる画作り。
光量的に「暗い」シーンは全編通じてほとんどなく、刺激的な光と色彩が支配的。
色乗りは濃く、けばけばしい一歩手前で踏みとどまる濃厚さ。著しく鮮やかな空と海、猛烈に健康的な登場人物の血色が印象に残る。
解像感に優れた画で輪郭線は非常にシャープ。とはいうものの、この手の映画にありがちな粒状感の過剰添付は感じられない。小手先の技に頼る必要のない素性の良さがある。
しょっちゅう起きる爆発、閃光が重厚な兵器群に輝きを与え、とにかくダイナミックレンジが広い。
言ってしまえば『トランスフォーマー』シリーズの画そのもの。ただ、被写体は変化に乏しく、ほぼ真昼の海上攻防に終始するため、視覚的なバリエーションはそれほど多くない。
圧縮に関する技術的な問題は特に感じられない。爆裂四散する鉄塊の千切れ飛ぶ破片など、破壊に伴うディティールの奔流も余裕で描き出す。
見どころ:
ミズーリの船内
自走式回転ノコギリ

音質について。
この映画では多くの艦船が登場し、多くの艦載兵器が活躍する。それぞれの兵器がどのような役割を持ち、どのような威力を持つのか、音でもって絶妙に表現されている。
対空気銃、駆逐艦の艦砲、ミサイル、敵さんの投擲爆雷(?)、そしてミズーリの40.6センチ主砲、さらにはどういう意図で作られたのかまったくわからない(褒め言葉)謎の自走式回転ノコギリ。つまるところ、“駆逐艦”の艦砲と、“戦艦”の主砲の威力はまったく違うという事実が、音でもって表現されているのである。作品上の演出とは思うが、前者が精々「でかい銃」程度の音しかしないのに対し、後者はまさしく桁違い、作中における最強の音である。画面を揺らし、鼓膜を震わし、魂を打つ勇壮なる咆哮である。
もうひとつ白眉なのが、自走式回転ノコギリ。
構造的に内部で色々ぎちぎちがちがちと回転しているようで、それ自体非常にやかましい。そしてやかましく突っ走りながら、ヘリやら橋やら船やらにぶちあたっては滅茶苦茶にぶちこわしていく。音数の多さという点では作中最大の逸材で、これでもかというほど全チャンネルに破砕音を撒き散らしながら走り抜ける。どうもこの映画、ミサイルのようなある種のハイテク兵器ではなく、“砲”とかノコギリとかパンチとか、そういう質量兵器の活躍が目立つ。
血沸き肉踊る壮烈な音、と言っていいだろう。
基本的に、でかい。
そしてでかいだけでなく、芸が細かい。盛りだくさんの爆発も大味にはならずに、吹き飛ぶ瓦礫や破片にもきちんと音が付けられている。サラウンドの活用も終始全開であり、威力と繊細さが同居した音はホームシアターの夢を叶えてくれる。
聴きどころ:
過去に恐竜的進化を遂げた超弩級戦艦と敵性宇宙人の巨大兵器との激突
自走式回転ノコギリ



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