マランツ、旗艦AVプリ「AV8802」。ドルビーアトモス対応/フルディスクリート電流帰還型プリ採用

Integraから5年ぶりのAVプリ「DHC-80.6」- ドルビーアトモス/HDCP2.2対応

Marantz US – AV7702



 NeoXやらⅡZやらで無理矢理増やしてきたのとは異なり、Dolby Atmosはチャンネル数の増加が真に音響効果に直結する。少なくとも、概要を見る限りではそう読める。
 ただ、「上方における音の移動」を実現するためにはトップスピーカーが4本必要になると思われ、例えば7.1.2のシステムでは画竜点睛を欠いている感がある。だからと言って5.1.4にしたのでは、従来から構築されてきた7.1のシステムの旨味を切り捨てることになってしまう。
 あくまでDolby Atmosにおける4本のトップスピーカーは、「完璧に構築された7.1システムに追加」する形でなければ意味がないように思う。原理主義的な思考とも思うが、私がDolby Atmosで7.1.4にこだわる理由はここにある。

 となると、問題になるのはAVアンプの側だ。
 Dolby Atmosのプロセッシングが5.1.4や7.1.2までにしか対応していない製品は論外として、7.1.4に対応するとしても、AVアンプだけでシステムを完結しようと思えば11chもアンプを積む羽目になる。今期のオンキヨーのフラグシップは11chを積むという異形……もとい偉業を成し遂げたが、いくらなんでも無茶な感は否めない。ただでさえデジタルの領域が肥大化する中で、さらに11chもアンプを積むとなれば、「音質」にどれだけの悪影響があるかわかったものではない。もう無理でしょ。アトモスなんて興味ないね、という人にとっては多チャンネルのアンプは無用の長物だろうし、詰め込み過ぎて逆に音を悪くするだけだ。どうせトップスピーカーを設置するような人はよほどの物好きなのだから、そもそも全てのAVアンプに、ましてやエントリークラスにまでアトモスに対応させる必要なんてない気がする。

 だからこそ、Dolby Atmos時代にこそ、“本気の人の為の”AVプリの重要性は増すと思うのだが……べらぼうに高いAVプロセッサーの類はさておき、アトモス時代のAVプリは今のところコレくらいか。
 ニッチだなあ。そして日本じゃAV7702は出ないのか。
 仮にAVプリを導入してアトモス再生の究極を目指そうにも、肝心の効果について業界の大騒ぎと実際に導入した人の印象の間には大きな隔たりがあるようだし、どこまでの効果があるのか未だに判然としない。というより、私自身実際に聴いてみて「あれ、こんなもん?」と思ってしまったから余計始末に悪い。現状では、トップスピーカーを設置するという巨大なハードルを越えた先に得られるものがあまりにも小さいように思えてならない。

 何度も言っていることだが、実現しようとしている理念だけを見れば、間違いなくDolby Atmosは素晴らしい。サラウンドジャンキーの夢そのものだ。
 しかし、ソフトもハードも、現実は……



【Dolby Atmos導入記】 まとめ