狭義のネットワークオーディオとは、「NASに音源を置き、LAN経由でプレーヤーにストリーミングし、スマホやタブレットで再生をコントロールする」ということになる。
 とすると、狭義のPCオーディオとは、「PC内のストレージに音源を置き、USBケーブルでDACに繋ぎ、PC画面上で再生をコントロールする」ということになる。

 最近、狭義のネットワークオーディオは狭義のPCオーディオに比べると圧倒的に盛り上がりで負けている。始まった時点で既に優勢ではなかった気もするが、それはそれ。とにかく最近はパワーバランスの傾きが顕著である。

 私は馬鹿の一つ覚えのごとくネットワークオーディオネットワークオーディオと叫んでいるが、極端な話、別に狭義のネットワークオーディオが廃れたとしても一向に構わない。
 なぜなら、ネットワークオーディオの本質とは「スマホやタブレットで再生をコントロールする」こと、すなわち「再生システムのコントロールをネットワーク越しに独立させる」ことだからである。オーディオ系の雑誌や文章で「ネットワークオーディオにおける快適さ」といった言葉が使われる場合、その快適さは99%この方法論に拠るものだと言っていいだろう。
 NASとかLANとかはコントロールに無線LANが必要になる関係で付随してきたものとも言える。大事なのは役目であって、NASとかLANとかのハードウェアそのものではない。

 音楽再生における快適さを追求すると、必然的にネットワークオーディオの方法論にたどり着くというのが私の持論だ。いくらPCオーディオが隆盛するとしても、常にPCディスプレイの前に座って操作しなければならない状況が好ましいとは到底思えない。再生機器としてPCは起動していても、せめてリラックスして音楽を聴く時くらいはディスプレイから離れてくつろぎたいと思うのは私だけだろうか。その時こそ、ネットワークオーディオの方法論の出番である。事実、MediaMonkeyやらJRiverやらといった一部のソフトは、ネットワーク経由で外部端末から再生をコントロールする機能を実装している。

 狭義のPCオーディオに、「コントロールの方法論」として融合することによって、ネットワークオーディオは存続する。その場合、もはやNASとかLANとかのハードウェアは問題ではなく、「いかに操作性を洗練させ、快適さを実現するか」ということがネットワークオーディオの命題になるだろう。



 ちなみに、狭義のネットワークオーディオと狭義のPCオーディオを包括する領域をどう呼ぶかは非常に難しい。ネットオーディオとかデジタルファイルミュージックとか色々呼ばれているが、どうも私にはしっくりこない。強いて言えば、海外で言われている「file-based audio」という呼称が一番しっくりくる。
 とにかく、ディスクではなくPC上のファイルを音源とするオーディオの手法において、ネットワークオーディオとかPCオーディオとか細分化する以前に大きな問題がある。

 それが「音源」である。
 ネットワークオーディオだろうが、PCオーディオだろうが、扱う音源そのものは同じものだからだ。
 「音源をどのように管理運用するか」こそ、全ての鍵となる。逆に言えば、それさえしっかり出来ていれば、ネットワークだろうとUSBだろうと縦横無尽にシステムを構築できる。



 というわけで、これから先は

・世界一美しいネットワークオーディオ環境を構築するために必要なこと

 に続く。


 ……続かなかった。

 とはいえ、この記事を書いた時のスピリットは【音源管理の精髄】シリーズに引き継がれたので、乞う御期待。



ネットワークオーディオTips