画質:10 音質:10


映像はAVCでビットレートはかなり高め。
音声はドルビーTRUEHDとDTS-HDMAの両方を16bitで収録。二つ収録するのは無意味っつってんだろ!

画質について。
押井守の映像製作に対する意図が事細かに見て取れるレベルの画質。
2D作画と3CGIをコンポジットすると情報量の差が映像の断層として見えてヤダヤダ!→3DCGIの部分はフォーカス甘くして微妙にぼかせばいんじゃね?→甘くなりました。でも、こんな小手先で馴染みが出たかどうかは正直謎。実際問題、こんなものが押井守の見出した“2Dと3Dを融合させる方法”なのだとしたら実に情けない。ポストエフェクトによって2Dを本気の3Dと同じ次元にまで引き上げた鴉-KARAS-を見習え!
フルデジタル製作だと原理的に撮影時の明暗によって画質差なんて生じ得ないけれど、そうなるとフィルムらしさが無くなってヤダヤダ!→夜、闇の部分だけフォーカス甘くすればいんじゃね?→甘くなりました。確かに、闇の中にぼんやり浮かび上がる建物にライトを当てるとしゃきっとフォーカスが合う、なんて表現はなかなか面白い。
映像云々はさておき、デジタルアニメの画質としては最上位である。画面はきりりと透徹し、ノイズは皆無、マッハバンドは気にならない、圧縮に伴う諸々の害悪はまず見られない。
しかし、画質的には完璧ながらとにかく映像的に小奇麗にまとまりすぎている感があり、イノセンスのように突出した映像美というものは無い。映像、画質において「うおおーッ、すげぇーッ」と言えるものは無いのだ。
よって、10点“満点”である。

音質について。
押井守は音を演出手段としてきちんと作品に取り込める、日本人としては稀有な監督の一人であると思っている。
そして実際、スカイクロラの音響も実によくできている。作品世界は決して画面の中だけではなく、画面の外にも空間が広がっているのだという当たり前の事実を、きちんと音響でもって表現できているのだ。
細かい音をきちんと散りばめた上で、音楽を含めて“空気感”や“雰囲気”といったものを表現しようという試みも見事に成功している。基本的に、スカイクロラの音響効果は完璧であり、何の不足も欠陥も無い。イノセンス同様、実に理詰めに精緻に組み上げられた見事な出来栄えである。
面白いのは、作品の音全体に遍在する“空虚さ”だ。基地での生活に付与された微細で繊細な音の数々、空戦シーンの迫力ある爆音、どれもこれもどこか白々しい――空しく、虚ろである。この辺りは音楽との関係も大いにあるだろうが、とにかく音全体から作品に込められたテーマが垣間見えるというのは素晴らしいことに思う。
たとえそれが、五感を震わせ血沸き肉踊るようなものではなくとも、作品の空気にぴたり合致する、まさに完成された音であるといえよう。
よって、10点“満点”である。



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