画質:14
音質:9


映像:AVC
音声:リニアPCM 5.1ch 24bit


○画質
 『時をかける少女』もそうだし、『サマーウォーズ』もそうだが、細田監督のアニメ作品のキャラは、作画において基本的に影がない。『獣兵衛忍風帖』とか『バンパイアハンターD』とかとは大違いである。また、妙に凝ったグラデーションやらテクスチャの類もない。その結果、デジタル制作のアニメで宿命的にありがちなバンディングは、本作においては皆無に等しい。あとはもう最初からHDで作っている高品位な映像があるわけで、必然的に評点はうなぎのぼりである。
 少々画面に変わり映えが少なかった前作とは異なり、本作の画は実に変化に富んでいる。殆ど緑の介在しない東京から、どこだか分からない田舎の山里、さらにはその山に突っ込んでいき、「もののけ姫かよ!」と一瞬思ったほどの緑の描写まで、次から次へと画面を彩る。
 極端に鮮やかな映像ではなく、思い起こすのはジブリ的な繊細さ。作中で幾度か挿入される夏の入道雲なんかはまさにそれ。
 映像的なハイライトは作中に二度ほど用意されている、“主観視点で突っ走っていく”シーン。音響におけるハイライトでもあり、心が躍った。
 ただし一点、雨のシーンの雨(誤植ではない)のシャツに、妙にノイズが出ていたカットが二つほどあった。別に大したことではないが、15点でないのはそれが理由である。

○見どころ
 吹き散らした雪に陽が当たって煌めくシーン
 稜線を駆け抜けた果てに見た泉の青


○音質
 いわゆるアクション映画ではないので、血沸き肉踊るドンパチは端から期待してはいけない。
 とはいうものの、静寂の使い方が非常に上手なこともあり、作品全体を通しての音響的なダイナミクスは大いに感じられる。都会の雑踏や雨の音など、マルチチャンネルの活用でも手を抜いている感はない。音楽も要所要所で大いに盛り上がる。
 ダイアローグはかなりくっきりと聴こえてくるが、刺さる感じもなく好印象。
 上でも書いたが、音響的ハイライトも主観視点で突っ走っていくシーン。主観視点になると、映像の展開と音の展開が完全に視聴者の感覚と一致するので、上手に作り込めばとてつもない没入感と臨場感が得られる。というわけで、話は変わるがFPSをやる人はぜひともサラウンドシステムを導入してほしい。
 声優陣の演技に耳を傾けて、しっかりと力の入った音響をじっくりと味わうべし。

○聴きどころ
 狼の視点で雪道/尾根を駆ける
 雨上がりの遠吠え


○総評
 監督の前作は個人的にあまり響かなかったのだが、本作は大当たりだった。
 作品としてはもちろん、BDとしてシビアにクオリティを見ても、画質・音質ともに申し分ない。
 決して安い買い物ではないが、ライブラリに加えるだけの価値は大いにある。


○再生環境(詳細はコチラ

・ソース
OPPO BDP-103

・映像
Victor DLA-X30
KIKUCHI SE-100HDC

・音響
Pioneer SC-LX85
Nmode X-PW10
Dynaudio Sapphire
Dynaudio Focus200C
Dynaudio Audience122
Dynaudio Audience52




 祝・BDレビュー250回。
 足かけ6年と7か月。
 ここのところネットワークオーディオ関連記事に時間を割いていたのと、特に最近になって著しく時間が無くなったこともあってBDレビューはあまり書かなくなっていた。
 4Kが音を立てて立ち上がりつつある昨今、今までのレビューの蓄積はHD時代の決算という点で意味があるはず。手を抜かずに書いていくことにしよう。

 そして、どんな形になるにせよ、【BDの次】が楽しみでならない。



BDレビュー総まとめ