高音質サーバー。
は?
サーバーで高音質もクソもあるわけないでしょ?
何寝言言ってんの?
ごもっとも。
私自身、実際の運用やサーバーソフトの挙動についてまるで触れないまま「高音質」という言葉を乱用する製品/輩はくたばってしまえと思っている。そんなものは「快適性」を振りかざしておきながら実際は糞仕様満載のネットワークオーディオプレーヤーと同じだ。滅んでしまえ。サーバーの本懐はあくまで音源を保存・配信することにあるはず。そこにきちんと光を当てないくせに高音質もクソもあるものか。
そのうえで、あえて言わせてもらうと、サーバーで音は変わる。
なぜサーバーで音が変わるかなんて私は知らないし、そもそも音が変わるということ自体単なる私の気のせいという可能性も決してゼロではないが、少なくとも私の聴覚はそう判断した。
というわけで、この記事で扱うのは「高音質サーバー」という可能性についてである。「理想のサーバー」ともまたちょっと違う。両者は必ずしも同一ではない。
さて、偉大なKLIMAX DSの登場によってネットワークオーディオという領域が形成された結果、にわかにNASの存在に注目が集まった。「ネットワークオーディオにPCは不要です!」という大嘘が当時(今でもそうだが)まかり通っていたこともあり、とにかくPC以外でサーバーに成り得るものとしてNASが必要だったのである。
はじめはどのようなNASがネットワークオーディオに適しているのか、当事者であるLINNですら手探り状態だったと思う。
おそらくは様々なトライ&エラーが繰り返された結果、少なくとも私がDSを導入した2010年には、とあるNASがデファクトスタンダードのような扱いになっていた。
QNAP TS-119である。
かくいう私も販売店にすすめられるがままTS-119を導入した。
ファンレスだから静か(HDDのシーク音がする時点でやかましいことこのうえない)、他の製品と比べて動作が安定している(比べたことがないから実際にどうなのかは不明)、金属筐体だから高音質(なおACアダプタからは耳に聴こえるレベルのノイズを出しまくり)ということだった。高音質とも言われていたが、まだ「安定している」という点の評価が高かったように思う。
なお、その時点で、RipNAS StatementやZIGSOW ZSS-1といったぶっちぎりに高額かつ「高音質サーバー」を謳う製品も存在していた。いつの間にか消えていったが。
その後、「高音質サーバー」というジャンルは停滞した。
精々HDDよりSSDの方が音がいいといった情報や、既存のNASを使ってみたらたまたま音が良かったという情報が出てくる程度で、純粋に高音質だけを志向した製品というのはなかなか現れなかった。日本に入ってきていなかっただけかもしれないが。
それが最近になって、にわかに活況を呈するようになった感がある。
国内における盛り上がりはDELAの華々しいデビューに拠るところが大きいと思うが、それだけではない。
IOデータが気合いの入った製品開発を発表したし、LUMIN L1も登場した。integrita audiophile music serverにAmare Musica DIAMOND music server、こんなのもある。ReQuest Audio The Beastは……どちらかと言えばサーバーよりもプレーヤーの趣が強いが一応入れておこう。
色々ある。そのどれもが、既存製品を使ったらたまたま音が良かったというものではなく、最初から高音質を狙って作られた製品である。DELA N1Zがかわいく見える価格の製品だって存在する。「売れる」とさえわかれば参入するメーカーももっと増えるだろう。いや、売れるかどうかは知らないが。
DELAが発表された時、TS-119の電源を変えたことでサーバーによる音の変化を経験していたとはいえ、私もはじめは70万のNASなんて頭おかしい……と思った。
今でも金額に対するそんな馬鹿な感は残っているが、「高音質サーバー」というジャンル、あるいはその根底にある思想に可能性を見出すようになった。
端的に言ってしまえば、ネットワークオーディオにおけるサーバーとはすなわちPCオーディオ(≒USBオーディオ)におけるPCのようなものだ。ハードとソフトと両面からPCそのものの高音質化を図る動きがある以上、同じ情熱がサーバーに向けられるのも当然と言える。何でもできるがゆえに混沌としたPCより、音楽配信に特化したサーバーの方がよほど高音質化させやすいような気もする。
そもそも、PCオーディオだろうが、ネットワークオーディオだろうが、音源をデジタル・ファイルとして扱うことに変わりはない。
高音質だの何だのはとりあえずどうでもいいのだ。
大切なのは音源であり、音楽である。そしてサーバーこそ、今まで大事に積み上げてきた音源の保存と配信を担うものだ。特にネットワークオーディオの方法論において、「サーバー」「コントロール」「プレーヤー」は三位一体を成し、どれか一つが欠けても成立しない。確かにサーバーは地味な存在だが、決して疎かにしていいものではない。
これこそ、「高音質サーバー」という物議を醸す言葉の裏に隠された、「音源の保存と配信を担うサーバー」に投資する意味である。何もおかしくはない。そしてもちろん、オーディオである以上、高音質は大歓迎。
なぜそこまでするのかと聞かれれば、その時は「自分が今まで積み上げてきた音源を愛しているから」と答えればいい。
【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】
【ネットワークオーディオTips】高音質サーバーという可能性
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