*

TIDALがリローンチ ― 「ストリーミングオーディオ」の時代は来るか?

 「ストリーミングオーディオ」とは、この記事では「音楽ストリーミングサービスを音源とするオーディオの形態」を指す。
 ただし、あくまでオーディオを名乗る以上、非可逆圧縮の音源は最初から論外なので、実質的にTIDALのような「ロスレス配信」を行うサービスの存在がストリーミングオーディオの前提となる。



 というわけで、TIDALのリローンチが随分大々的に行われたようだ。

ジェイ・Zの定額音楽配信サービス TIDAL が米国ほかで開始。発表会には豪華ゲストが参加 – engadget 日本版

 これだけのアーティストがTIDALのイベントに集まったのは、「音楽はロッシーではなくロスレスで聴いてほしい」というアーティスト側の姿勢が暗に? 明確に? 示されたということではなかろうか。

 ただ、それだけに私が気になったのはTIDALのユーザー数と、「TIDALというサービスに対するengadget(の記者)の反応」である。

ちなみに、TIDAL のユーザー数は今年1月現在で1万7000人ほど。WiMPユーザーを足しても51万2000人。対する Spotify は有料ユーザーで1500万人。無料ユーザーは6000万人と言われます。


 TIDALのユーザー数は1万7000人。
 「圧縮音源とCD相当のロスレス音源に明確な差を見出せるだけのオーディオシステムを持ち、なおかつ音楽ストリーミングサービスなんてものを活用できる程度にはデジタル・リテラシーがあり、そのうえでTIDALが提供するロスレス・ストリーミングサービスの価値を認めている」人々が世界に1万7000人いるということになる。
 嘘か真か知らないが、「日本のオーディオマニアの総人口は精々1万人」なんて話を聞いたことがあるので、それを考えれば1万7000人という人数はかなり多いのではなかろうか。
 もちろん人数的にはSpotifyと比べるべくもないが、これは結局のところ「音質なんてものはたいして重要ではない」という世界的なユーザー意識の現れだろう。いちオーディオファンとしては悲しい限りだ。

 記事中のこの文言がすべてを表している。

なお、TIDAL には Spotify のような無料サービスはありません。映像コンテンツにしても、今回ゲストとして壇上に上がったアーティストを中心に映像コンテンツも提供されてはいるものの、より一層ユーザーを獲得したいのであれば、もう少し何か差別化要素が欲しいところです。

 

 音質を重要視するオーディオの観点からすれば、まず圧縮している(ロッシー)という時点で、ほとんどの音楽ストリーミングサービスは音源として論外である。
 そんななかでロスレス配信を行うTIDALの登場は、音楽ストリーミングサービスが提供する音質がオーディオファンの要求する一線を越えたことを意味し、オーディオ業界にとって一大事件ですらあった。
 すなわち、オーディオファンからすれば、「ロスレス配信」こそTIDALの絶対的な差別化要素に他ならず、月額料金が多少高かろうが「TIDALすげえ!」となるのだが、engadgetには「他に何か欲しい」と一言で片付けられてしまった。
 engadgetはオーディオ系サイトというわけではないので、むしろこのような反応が普通・正常・一般的なんだろうなと考えると、なんとも言えない気分になる。音楽ストリーミングサービスという土俵においても、やはり「音質」は強みにはならないのかと……
 TIDALが「これからMQAを使ってハイレゾ配信も始めます!」なんて言ったところで、世間一般からすれば、「は? 何ソレ」となるのがオチだろう。

 オーディオファンとして見れば、TIDALに対しては「よくぞやってくれた、いいぞもっとやれ」という称賛と応援の言葉しか出てこない。ストリーミングオーディオという可能性を大きく広げていってほしいと心から思う。
 しかし、そもそも「別に圧縮音源でも構わない」というユーザーが限りなく大多数を占める音楽ストリーミングサービスの市場にあって、TIDALのような「音質」を売りにするサービスが今後もきちんと立ち行くのか……少々不安である。
 結局ごく一部のオーディオファンにしか浸透せず、「ユーザーがちっとも増えない=儲からないからやっぱりやめた」なんてことにならなければいいのだが。

 はたしてストリーミングオーディオの時代は来るのだろうか。
 せめて「音楽はロスレスで聴く」という文化が廃れないことを願う。



TIDALがもたらすもの

CES2015の「Streamer」に見るネットワークオーディオプレーヤーの復権

【音源管理の精髄】 目次 【ネットワークオーディオTips】

スポンサーリンク


関連記事

no image

【BDレビュー】 第176回『ツイスター』

「ツイスター」といえば、この映画かサガフロのスカイツイスター 90年代のこの手の映画は「いよいよ本

記事を読む

【イベントレポート】オーディオラボオガワ KITHIT・LUMIN試聴会 & ネットワークオーディオ講座

 去る3月14日、山形のオーディオラボオガワでKITHIT・LUMIN試聴会 & ネットワークオーデ

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第87回『ゴッドファーザー PART2』

画質:4、条件付7 音質:7 映像はAVC、クソ長いためビットレートは25Mbps付近で頭

記事を読む

【ネットワークオーディオTips】QNAP TS-119でKazoo Serverを使う

LINN - SOFTWARE Available for Windows and Mac ope

記事を読む

【Munich HIGH END 2016】Dynaudio The New Contour

The New Contour - Dynaudio  そうそう、こういうのでいいんだよこ

記事を読む

no image

【BDレビュー】 第69回『ブレードランナー』

画質・実写場面:7 特撮:10☆ 音質:10 映像はVC-1でビットレートは10台後半が中

記事を読む

【BDレビュー】第279回『猿の惑星:新世紀(ライジング)』

 色々とおまけつき。  それはそうとパッケージデザイン酷過ぎない? ポスターじゃあるまいし……

記事を読む

【アプリ紹介】Kinsky iPad版

↓↓↓再検証したのでこちらをご覧ください↓↓↓ コントロールアプリの検証 2014 『Kins

記事を読む

fidata HFAS1

fidata アイ・オー、オーディオNAS新ブランド“fidata”設立。ハイエンド機「HFA

記事を読む

UHD BDまであと少し……?

UHD BDまであと少し! BDAのチェアマンであるVictor Matsuda氏は、今回のラ

記事を読む

スポンサーリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサーリンク

『オペラ座の怪人』のUHD BD

オペラ座の怪人 4K ULTRA HD&ブルーレイ(3枚組) 初回限定

【インプレッション】Playback Designs Merlot DAC 外観編

Playback Designs Merlot DAC - ナスペック

【菅江真澄紀行文・本編紹介】第一章「栗駒の心臓を御室に見る」

クラウドファンディングサービス「FAN AKITA」でプロジェクトを実

NetAudio vol.25で記事を執筆しました

 この手のおしらせはしばらく放置していたが、これからはマメにやっていこ

「FAN AKITA」のプロジェクトで目標金額を達成しました

小町ゆかりの地「真澄と歩く」出版プロジェクト - FAN AKITA

MQAのソフトウェアデコードって……

MQA Decoding Explained - Audio Stre

LUMINがRoon Readyになったような

 ん?  !?  常時起動の単体Roon Serv

3,000,000PVを達成しました

 言の葉の穴は2017年1月5日をもって3,000,000PV

canarino Fils × JCAT USBカードFEMTO

 canarino Filsの導入当初は、ちょいと思うところがあって、

TIDAL MASTERS with MQA

TIDAL MASTERS TIDAL is deliverin

Roon 1.3のプレビュー

Coming over the hill: the monstrous

言の葉の穴 2016-2017

 「言の葉の穴」読者の皆様、あけましておめでとうございます。  昨年

言の葉の穴 2016年のハイライト 創作・地元ネタ編

 もうすぐ終わるので振り返り。  オーディオだけではないのである。

言の葉の穴 2016年のハイライト オーディオ・ビジュアル編

「言の葉の穴」的2015年のAV関連ニュース10選  独断と

2016年の心残りその2 まだ見ぬOPPO Sonica DAC

OPPO Sonica DAC そして素晴らしいのは、この手の製

2016年の心残りその1 LUMIN、未だRoon Readyならず

Roon Ready、ネットワークオーディオ第五の矢  LU

2015年の心残りは2016年でどうなったのか

2015年の心残りその1 ESOTERIC N-05 紹介記事

【BDレビュー】第341回『帰ってきたヒトラー』

画質:8 音質:8 (評価の詳細についてはこの記事を参

シン・ゴジラのUHD BD

「シン・ゴジラ」が'17年3月22日BD/UHD BD化。初公開映像満

【BDレビュー】第340回『DOOM / ドゥーム』

画質:6.66 音質:13 (評価の詳細についてはこの

→もっと見る

PAGE TOP ↑