ホームシアターにおけるプロジェクターの行く末


 上の記事ではいささかプロジェクターの将来について悲観的なことを書いたが、最近エプソンから素晴らしい新製品が発表(より正確には国内投入)になって心躍っている。

EH-LS10000

 レーザーを光源を消灯することで全黒画面時に完全な黒を実現、コントラスト比無限大。
 例えば宇宙空間といった、黒と白が同居するような画面でどれくらい黒が沈むかは実際に見ていないので分からない。しかし、画面に光る部分がわずかでもあれば視覚的にはそっちに引っ張られるため、感覚的には相当漆黒に近くなると思われる。
 何より、全黒画面時とはいえ、プロジェクターで完全な黒だなんて夢のような話だ。
 とりあえず、某所で目にした三管プロジェクターの画と較べてどうなのかが気になる。



 一方で、ほぼ時を同じくしてLGから有機ELテレビの国内投入が発表された。

LG OLED TV

 LGというメーカーに対する云々はとりあえずさておいて、まずは有機ELテレビがついに買えるようになったことを喜びたい。
 日本メーカーから有機ELテレビが発売される日は来るのだろうか。



 私が「画質」というものに意識を向け始めた頃、家にあったのはハイビジョンブラウン管テレビだった。
 とある液晶テレビを買った時、ブラウン管とのあまりの落差に愕然としたことを今でも覚えている。
 次にとある液晶テレビを買い、まあこんなもんかとそれなりに満足した。
 次に「黒が沈む」とのレビューを見てとあるプラズマテレビを買ったが、以前使っていた液晶テレビにすら劣る酷い黒浮きを目の当たりにしてプラズマに失望した。
 次にDLA-HD350を買い、プロジェクターでもこんなに黒が沈むのかと感激した。しかし当時は部屋が狭すぎて結局プロジェクターの継続使用は断念した。
 次にKDL-46HX900を買い、LEDバックライト部分制御のおかげでついにブラウン管以来の「完全な黒」を手に入れた。もっとも、完全な黒と言っても全黒画面時に限られていたが。
 そしてDLA-X30を買って今に到る。「完全な黒なんて不可能だ」と割り切ってさえしまえば、もはや何の不満もない。

 「画質」ということを考える時、私は今なおブラウン管の呪縛に囚われ続けている。
 ブラウン管の無限の黒が忘れられない。
 「高画質なテレビ」なんて言葉を聴いても、「どうせブラウン管に較べりゃ大したことないだろ」とさえ思ってしまう。
 BDというソフトの画質は間違いなく長足の進歩を遂げ、4Kの登場によって解像度も向上したが、純然たる黒の表現力という点で、真にブラウン管を凌駕した薄型テレビは存在する・したのだろうか。それこそXEL-1くらいしか思い付かない。KUROでさえ黒が浮いていた。

 黒。とにかく黒が欲しい。
 この欲求はブラウン管の終焉とともに諦めに変じて久しいが、エプソンのレーザー光源プロジェクターとLGの有機ELテレビの登場によって状況は変わった。
 はたしてブラウン管の呪縛から私を解放してくれるだろうか。


 プロジェクターか、テレビか。
 ますます悩ましい。