というわけで、色々と聴いてみた。


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 A1と比較すると、


 ノイズフロアが非常に低い。ただ、単に高S/Nというよりも、機器の側で強烈にノイズを消し去っているように感じる。
 「サラ・オレイン / Canta Con Me~あの日の歌」は、A1ではホールに漂う空気感が微細な音の粒子として聴こえていたのに対し、S1ではもはや音として認識できない。「Yes / Roundabout」の冒頭のサーノイズも明らかに小さく抑え込まれている。
 この音源にまで踏み込むノイズの徹底的な排除が、はたして良いことなのか悪いことなのかは、私には判断できない。

 しかし、容赦ない高S/N化により、さらに微細な領域のディティールが掘り起こされているのは間違いない。
 また、静寂の度合いが深まったことによって音の立体感がさらに増している。そのため音数豊富な曲になればなるほど、ひとつひとつの楽器が際立つのが分かる。

 A1は従来のネットワークオーディオプレーヤーのイメージを覆す、圧倒的に“熱い”音を聴かせて私の度肝を抜いたが、S1の音はそれとは異なる。
 端的に言って、A1のような熱さはない。

 A1と違ってボーカルが勢いよく張り出すこともなければ、中音域が楽しげに炸裂することもない。特に「The Winery Dogs / Elevate」を聴いた時にその差は顕著に現れた。これはやかましめの曲に限らず、“歌”の要素がある曲全般に言える。
 S1はあくまで冷静に、緻密に、こともなげに整然と音を提示する。

 音場はA1に比べると奥行方向に展開し、若干左右にも広い。膨大な情報量を受け止めるに十分な空間の広さがあり、音が飽和してしまっている感はない。非常に見通しがいい。
 「Jennifer Warnes / Rock You Gently」など、元々構築美に優れた曲では、凄まじく精緻な空間が出現する。


 A1が“熱い音”なら、S1は……何だろう、“知的な音”だろうか。
 高S/N追求路線や奥行き方向への音場展開など、私が“ハイエンドオーディオ”に抱いている個人的イメージに近い。

 どちらも極めて高いレベルではあるものの、確かにオーディオ機器としての性能はS1がA1を上回っているように思う。


 ただ、ここまでくると……クラシックや静かで耽美な曲しか聴かないというならさておき……“どっちの音が好きか”で選んでもいいような……



 一週間通電してみて、だいぶ印象も変わった。
【インプレッション】LUMIN S1



 余談ではあるが、S1で聴いて一番オオッと唸ったのはコレ。
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 続く。