【2018/04/17追記】

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 言の葉の穴で扱っていた【ホームシアターでゲームをしよう!】関連のコンテンツは、今後は新サイト【Game Sounds Fun】で扱うので、そちらをご覧ください。


Game Sounds Funの発足にあたって


【追記おわり】



アイコンホームシアターでゲームをしよう!2


 恐縮だが、第1回の前にちょいと昔語りに付き合ってくれないか?


 ゲームと一言で言っても様々だが、大まかには「ゲームプレイそれ自体に面白さを見出すゲーム」と、「ストーリー要素が濃いゲーム」に分けられると思う。でもって、ファミコン時代から私が好んできたのは常に後者だった。
 格ゲーでは波動拳コマンドしか満足に使えず、シューティングでは縦でも横でも最低難易度でしかまともにプレイできず、PS以降の3Dアクションでは難易度イージーでクリアするのが精一杯。でもなぜかエースコンバットにだけは適応できた。
 「ストーリー要素が濃いゲーム」を好み、なおかつ「ゲーム好きのゲーム下手」。鬼武者もデビルメイクライも、本当に面白そうで頑張ってプレイするのだが、あまりにも下手糞すぎてストレスばかり溜まるというこの悲しさ。
 そんなわけで、私がプレイするのはRPGやらSLGやら、「ゲームの腕」があまり問われないジャンルが多かった。いやはや、90年代は本当に夢のような時代だった……

 ところがPS2の世代になり、マシンスペックや技術の向上によって「表現できること」の幅が広がったのと反比例するように、いわゆる「日本的なRPG」は私の中で輝きを失くしていった。ゼノサーガEP1はそれなりに楽しめたが、EP2で失望し、とりあえずEP3まで付き合ったが……うーむ。FF10は色々と付いていけずクリアすらできなかった。VP2の肩透かし感は大きかった。結局PS2世代の広義のRPGで何が一番楽しかったかといえば、良くも悪くもあまり技術(3D的な意味で)に依存しない、ディスガイアをはじめとする日本一ソフトウェアのSRPGだった。あとスパロボ。
 なぜ日本的なRPGを面白いと思わなくなったかという問題については、また別の機会にじっくりと取り上げたい。

 PS3も発売後間もなく購入したが、知ってのとおり発売当初は酷いソフト日照り。馴染んだ国産のゲームを遊ぼうにも、そもそもタイトル自体が存在しないに等しい状況だった。
 そんな時、意を決して買ってみたのが『RESISTANCE〜人類没落の日〜』。
 初FPSにして初洋ゲー。和ゲー、しかももっぱらRPGしかやってこなかった私にとっては大きな冒険だった。そして今思えば偏見以外の何物でもないが、当時の私はいわゆる洋ゲーというものに対し、「大味で不親切でグロくてなぜかFPSばっかり」というイメージしか持っていなかった。それでもなお手を出すほどにゲームに飢えていたのである。
 
 洋ゲーに対する負のイメージは、RESISTANCEをプレイし始めてすぐに音を立てて崩れ去ることになった。
 RESISTANCEは……衝撃的に面白かった。
 FPS初心者ゆえに数えきれないくらい死にまくり、何度放り出しそうになったかもわからない。しかし、未だかつてゲームから味わったことのない体験が、私を魅了して離さなかった。

 ここにきて初めて、私は「映画的なゲーム」の真の姿を見た気がした。
 画、音、ストーリーテリング、ゲームプレイ、それらをトータルした「体験」の質が、本当の意味で映画の領域に突入したのを感じたのである。
 ゲームを評する際の「映画的」という言葉は以前から使われており、その名に恥じない素晴らしいゲームも多々あったものの、どうにも私には「映画的」の実感が得られなかった。RESISTANCEはハードがPS3になったことで、特に画と音のクオリティが引き上げられ、体感する情報量が一線を越えたということが大きかったのだろう。
 さらに駄目押しとなったのが、当時既に構築していたサラウンド環境である。「ゲームプレイと完全に連動するマルチチャンネル・サラウンド」の衝撃たるや、初めてサラウンドで『プライベート・ライアン』を見た時や、初めてBDの映像を目にした時にも匹敵する。

 マシンスペックの向上に伴う「表現できることの拡大」にきちんと応えられる技術力。むしろ国産ゲームのお家芸だったはずの映像細部への徹底したこだわり。完全に映画の領域に突入した音響。さらに、和ゲーよりもよほど親切丁寧に設計された操作感。
 RESISTANCEをプレイし、海外のスタジオの技術と実力を目の当たりにして、私は遅まきながら時代の変化を痛感した。
 私が愛してきた和ゲーは、とっくの昔に最先端ではなくなっていたのだと……

 技術的な差は広がる一方だった。
 DMC4やMGS4なども、和ゲーならではの良さと高度な技術、映画的な感性がきちんと融合していて面白かった。しかしそれ以上に、私自身はすっかり洋ゲーの……いや、洋ゲーが次々に繰り出す強烈な体験の虜になっていた。

 真に「映画的なゲーム」が遊べるようになり、私はそれこそ90年代の国産RPG全盛期以来長らく失っていた「ゲームっておもしれー!!」という新鮮な感覚を取り戻すことができた。
 RPGでレベル上げをしてラスボスをボコボコに封殺するのと、サラウンド環境で悲鳴を上げながら異形の怪物と撃ち合うのとでは、ゲーム体験としてはまったく別物である。ただ、どちらも面白いという意味では同じである。そして面白さにおいて、PS3を契機に出会った数多の「映画的なゲーム」は、紛れもなく巨大な絶対値を有していた。当時は「ゲームはとうとうここまできたのか」と、いちいち感激しながら遊んでいた記憶がある。そしてこの感激は現在進行形で続いている。
 なお、必ずしも洋ゲー=映画的なゲーム、というわけではない。日本に入ってくるのはほとんど上澄みなのでアレだが、洋ゲーにだってクソゲーは腐るほどあるだろう。

 「映画的なゲーム」に対して批判があることも承知している。
 「グラフィックだけ良くても意味がない」とか、「ゲームとしてはつまらない」とか、「カットシーン(ムービー)が長すぎてゲームプレイの時間が短い」とか。
 ただ、これらの批判はどうも一面的な気がしてならない。
 ゲームが視覚メディアである以上、グラフィック、もとい映像表現にこだわることは今も昔もこれからも必要不可欠である。グラフィックの手を抜けばゲームが面白くなる、なんてことはない。もちろんゲームプレイの重要性は百も承知だが、ゲームプレイを充実させることはグラフィックを軽視していい理由にはならない。大切なのはバランスである。
 ある程度の映像表現が求められるタイトルで、2016年にもなって初代PSのような3Dグラフィックで「ゲームはグラフィックじゃない!」と声高に叫ばれてもちょっと困ってしまう。
 得てして洋ゲーはグラフィック偏重とのイメージを持たれがちだが、実際にそんな低い次元に留まっているゲームははじめから評価されずに淘汰されている。全てがそうだとは言わないが、実際の操作感についても、洋ゲー=大味という構図はとっくに崩れ去っている。例えばGOWをプレイしてみるといい。見た目と裏腹にあまりの新設設計できっと腰を抜かすぞ。
 ついでに言えば、私は映画も愛しているのでカットシーンがどれだけ長かろうがまったく気にならない。カットシーンだろうがゲームプレイだろうが、要は面白けりゃ何でもいいのだ。たとえほんの一瞬でも、プレーヤーの意思を介入させる余地があり、それによって展開に何らかの影響を与えるなら、それはやはりゲームなのである。

 テトリスもマリオカートもドラクエもHALOも、全部ゲームである。全部面白い。ただし、それぞれ立ち位置が違う。
 ゲームプレイそれ自体に面白さを見出すゲームとストーリー要素が濃いゲーム。例えばテトリスとHALOを同じ土俵で評価することはできない。どちらかが良くてどちらかが悪いということではない。どちらもゲームであり、「どちらも良い」のである。もし悪いものがあるとすれば、それは立ち位置に関係なく「純粋に面白くない」ものであるべきだ。
 妙な偏見は抜きにして、「映画的なゲーム」は、もっと純粋にゲームとして評価されてもいいのではなかろうか。
 ここでどさくさに紛れてタイトルを回収させてもらうと、ホームシアターはあらゆるゲームを面白くする魔法の道具である。でもって、映画的なゲームは画と音の情報量の豊富さから「面白さの伸びしろ」が他に比べて非常に大きい、ということも伝えたい。


 確固たる技術力をベースにした映像表現と、優れた映像表現があるからこそ可能になる、それと不可分に結び付いた濃密なストーリーテリング
 私はこの二つの要素を高い次元で(ここ重要)両立したゲームこそ、「映画的なゲーム」と呼びたい。「映画」という言葉を使うことがはたして適切なのかという問題はあるが、結果的に得られる体験の質が似ていることも確かである。
 そして映画だからこそ、映像が凄いだけでも駄目、話が凝っているだけでも駄目なのである。見た目が技術的に洗練されていてもストーリー要素が薄い・存在しないゲームは、その時点で映画的なゲームには成り得ない。その意味で、「ストーリー要素が濃いゲーム」の現時点における到達点こそが「映画的なゲーム」なのだと言える。


 そして2013年、「映画的なゲームの究極形」と思えるタイトルが登場した。

 この企画を思い付いた時から、記念すべき第1回のタイトルはコレしかないとずっと思っていた。


 というわけで、予告。


ホームシアターでゲームをしよう!01The Last Of Us


 乞う御期待。



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