【BDレビュー】第318回『ガールズ&パンツァー 劇場版』

 ガルパン劇場版の音声はステレオ・5.1chに加えてDTS HEADPHONE:Xが収録されている。
 DTS HEADPHONE:Xは何やら革新的な技術として大々的にPRされているが、要はヘッドホンでもサラウンドのような音が楽しめるという、まぁいつものアレである。

 スピーカーを使ったリアルなマルチチャンネル・サラウンドを実践している手前、経験上この手の宣伝文句は正直言って「あっそふーん」程度にしか思わないのだが、せっかく入っているのだからと試してみた次第。

 音声特典からDTS HEADPHONE:Xを選択して、SC-LX85にいつものK701をぶっ挿していざ視聴。使うヘッドホンとして実力不足ではあるまい。
20160605ガルパンヘッドホン01

 音声仕様としてはあくまでDTS-HD Master Audioの2chということになるようだ。
20160605ガルパンヘッドホン02


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 何よりもまず、サラウンド感云々よりも耳を傷めないかと心配になった。
 スピーカーで味わっているレベルの迫力を出そうと思えば確実に耳が死ぬ。
 さらにダイナミックレンジが容赦なく広いため、会話や日常的な効果音がきちんと聴こえる音量に設定するだけで戦闘時にはとんでもないことになってしまい、上手い落としどころを見つけるのがなかなか難しい。
 BDに付属する「鑑賞の手引き」にも書かれている通り、くれぐれも音量の出し過ぎには注意である。

 そして肝心のサラウンド感。
 とりあえず、DTS HEADPHONE:Xであれば、ヘッドホンだけでシアター並みのサラウンドを楽しめるようになる……なんてことはない。この手の売り文句に過剰な期待を……抱くなとは言わないが、あくまでも、「のような」、である。
 そう前置きしたうえで、通常のステレオ音声と比べて効果があることは確かだ。

 空間が一回り大きくなることで、前方180度の音の定位感が明瞭になり、音が空間を動き回る感覚も強まる。
 「後方へ/後方から・回り込む/突き抜ける」音については残念ながら(もしくは当然のことながら)リアルサラウンドのような鬼気迫る移動感は得られない。が、響き成分が補強されるおかげで聴き応えは確実に増す。耳が危うい。

 というわけで、ガルパン劇場版に収録されているDTS HEADPHONE:X音声は、サラウンド感を楽しむというよりも、むしろヘッドホン用に調整・最適化された音声として意義が感じられる。そして耳の健康には要注意。

 本当にサラウンドで楽しみたいなら、スピーカーで聴こう。
 サラウンドはいいぞ。



【BDレビュー】総まとめ