さて、一番難しいところにやってきた。


 fidata HFAS1の音。

 比較対象は例によってLUMIN A1とタッグを組んで「相性」という名のアドバンテージを存分に発揮した状態のLUMIN L1である。あと、噛ませ犬としてTwonky Serverの走るデスクトップPC。
 なお、試聴に際してfidataの設定は最も音が良かろう状態に変えてある。


 まず、HDDモデル。
 DELA N1Zのように自身の存在を透明にするというわけでもなく、LUMIN L1のようにオーディオ機器を加え入れたかのような露骨な音の変化があるわけでもない。
 全体的に「エネルギー感が増した」という印象を受ける。このエネルギー感は単に「押し出しが強い」ということではなく、音の情報量が増えたことによる「密度感」の上昇に起因している。S/N、音の広がりといった点もPCと比べれば雲泥の差であり、「サーバーによる音質の向上」は如実に感じられる。
 ただ、情報量の増大が得られる一方で音色の変化はほとんどないため、「魅力的な音になった」というような、端的な効果は感じられない。よって、fidataには「これがfidataの音です」というような主張は特にない。
 上記の所感はハブを介してLUMIN A1と繋いだ場合とHFAS1から直接繋いだ場合で共通。やはり、ハブを介するよりも直結の方が良い。
 結論としては、十分すぎるほどの基礎能力を認めつつも、「端的に魅力的な音になる」LUMIN L1に対して明確なアドバンテージは感じられなかった。
 ちなみに、HDDモデルということで駆動音その他が気になるところだが、至近距離まで耳を近づけて微かに駆動音が聴こえる程度で、視聴位置ともなればまったく心配する必要がないことも言い添えておく。


 続いて、SSDモデル。
 HDDモデルとSSDモデルは同時にではなく、別々の時期に試聴機を借りての評価である。また、なんとなくLUMIN L1にエルサウンドのアナログ電源を繋いでみたら普通に使えてしまったので、SSDモデルはLUMIN L1&アナログ電源との比較となった。
 SSDモデルはHDDモデルと比べて、微小領域での情報量の増大が著しい。ちょっと驚くレベルでの増大である。音の余韻や消え入る部分に耳を傾けると、もはや「ニュアンス」や「響きの良さ」で片付けられない明瞭なディテールの存在を聴いて取ることができる。主に微小領域のディテールが増えた結果、聴く側の意識というか感覚が変わるのか、HDDモデルに感じた「エネルギー感」はそれほど感じなくなった。
 LUMIN L1だとこの辺りを潔く整理整頓してしまっていて、それがL1らしい「魅力的な=メリハリのきいた音」に繋がっていることも確か。しかし、好きとか嫌いとか魅力的とかそういうのを抜きにして、純粋に絶対値としての「情報量」を考えると、アナログ電源で強化されたLUMIN L1と比べてなお、SSDモデルには明確なアドバンテージがある。
 情報量が多いと言っても「音がギュウギュウ詰め」的な窮屈さは感じず、程よい密度感で「音を浴びる」イメージを楽しめる。HDDモデルと同様、音色的には無色透明を地で行っているが、ここまで情報量が豊富だとシステムにおける存在感まで透明というわけにはいかない。むしろ、「このほとばしる情報量こそがfidataの音です!」という主張、もとい矜持が見え隠れする。
 HDDモデルを聴いた時は正直言って「こんなもんか」という印象だったが、SSDモデルは素直に感心した。少なくとも私のシステムにおいては、SSDモデルが大いにハマったということだろう。LUMIN S1と組み合わせるとすれば、HDDモデルがいいかもしれない。


 「真にオーディオ機器と呼び得るサーバー」の条件の内、「高音質」というオーディオ機器として最も基本的な要素を見事に備えたサーバーの登場を喜びたい。



【レビュー】fidata HFAS1

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