サラウンドを組んだ時、鴉の次に見たのがこの映画だった。
映画音響の魅力に取り付かれた本当の始まりかもしれない。


画質:15 音質:15☆ Magnificent




映像はAVC、音声はDTS-HDMAの24bit

画質について。
技術的に完璧に仕上げられた上で感情を揺り動かす、文句なしの画質評価15点満点。
馬鹿の一つ覚えに連呼される「フィルムライク」という言葉に、一切の空虚な言説なしに実体を与え得る至極の画質。
純粋な画の情報量や色彩の豊かさ、フィルム撮影ならではの透明感に関して言えば『ダークナイト』のIMAXシークエンスや『コンタクト』に分があるが、全編を貫く揺るぎない完成度という点では『プライベート・ライアン』に及ばない。
IMAXを抜きにすればフィルム撮影の頂点に位置する膨大な情報量、DVDとはまったく別物の豊かな色彩、それらがノイズの介在しない大粒のフィルムグレインと合わさって、これ以上無い画の完成度を生み出している。BD化にあたり、DVD時代から何度も何度も何度も何度も見てきたシーンの中に数え切れないほどの発見があった。「なるほど、こいつの足はこんな具合にもげていたのか」という具合に。
ちぎれとび血にまみれた手足の断面を克明に容赦なく描き出したと思えば、次の場面ではフランスの青空と緑を清々しく映し出す。
美しい映画である。

音質について。
王者の帰還!
四年前、初めてサラウンドで体験したこの映画の音響は忘れたくとも忘れられるものではない。
揚陸艇から身を出した瞬間に襲い掛かる銃撃の雨。前後左右に上下、あらゆる方角から降り注ぐ鉄火にどれだけ興奮したことか。
機関銃を映したカット。カメラワークと共に動く銃に伴い、銃声もまたセンターからレフトへ。たったそれだけのことにどれだけ驚いたことか。
銃弾を浴びて悲鳴を上げる兵士を横切るカット。断末魔がセンター→ライト→サラウンドライトへと流れていく様にどれだけ衝撃を受けたことか。
どこにも書いていなかった、誰にも教えてもらえなかったサラウンドの妙味を身をもって味わった瞬間だった。
それから四年!
いつの間にやらスピーカーは大型化し7本に増え、ディスプレイは大型化するどころかスクリーンとなり、ついにBDという器に溢れんばかりに注がれた最高の美酒を再び呷る時が来たのだ。
王者の帰還!!
DVD時代に数え切れないほどに浴び続けた、あの場面のあの弾丸、あの爆風、あの激震、全ては全く異なる次元で蘇った。遥かな音響的高みにおいて、鉄と火と水と血と声がしぶきを上げる。うなりを上げる。私を打ちのめす。あの音の中心にいる私は一体何度死ねばよいのか。音響的な巧みさは言うまでもなく未だ頂点に君臨する上に、ロスレス音声を手に入れ、音それ自体の瞬発力や威力もBDにおける玉座を手にしてしまった。むこう10年間の音響リファレンスは決まってしまった。『プライベート・ライアン』以降に誕生したあらゆる映画音響の傑作を薙ぎ倒してなお余りあるこの偉容と貫禄。『ダークナイト』も『ヘルボーイ2』も『ランボー最後の戦場』も、これを前にしてしまっては裸足で逃げ出すほか無い。かつて画質において蜘蛛男3が“10点満点”の上限をぶちぬいたように、彼らに与えた“15点満点”もついに破られる時が来てしまった。
限界突破!
この趣味を初めて本当に善かったと!! 心から思う!!!



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