今手元にAVアンプがないので、普段はサラウンドバックスピーカーとして使っているDynaudio Audience52とNmode X-PW1で音楽を聴く。
 ラックの裏、ケーブルの沼に潜って結線をアレコレする趣味はないので、こういうタイミングでもなければまともにAudience52を聴く機会がないというアレ。

 構成はTD307MK2Aの時と同じ。
 今回はきちんとスタンドを使っているが。


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 Dynaudioの音。
 冷気と翳りを湛えた雪のような音。
 存在感と浸透力を併せ持つ端整な音。
 そこにNmodeの強調感のない駆動力があわさって、音の端々に煌めきが見える。
 これこそ私が愛してやまないDynaudioの音。
 やはりDynaudioの中にこそ、私の求める音はあるのだな。

 普段より控えた音量でKOKIAからピロウズまで一通り聴いてみたが、高音はさわやか~に抜けていくし低音の輪郭もくっきり。悲しい環境に置かれたDynaudio特有のしょぼくれた表情はない。アウイエー。
 日頃の雑事を忘れて音楽に身を任せるにこれ以上何が必要なのだろうか、とも思う。オーディオビジュアルの夢を追いかけて、いつの間にかずいぶんとでかいスピーカーを使うようになったとはいえ、こういう感覚は大切にしたい。


 Dynaudioはいい。
 しかし、人におすすめできるかと言われると、なかなか難しい。
 なんか陰気臭いしウーファーは重いしアンプは選ぶし環境構築を誤ると絶望的にしょぼくれた音を出すし、もっと簡単に明快に万人受けする音を出すスピーカーなんていくらでもある。

 それでも、陽を浴びた雪華が極彩色に輝く様を知る者にとって、ひとたび真に鳴り始めたDynaudioのスピーカーは、他に代え難い魅力を持っている。