まずT1。
○再生/比較環境
LUMIN A1
LUMIN L1(HDD 2TB)
Nmode X-PM7
Dynaudio Sapphire
T1、D1ともにケーブル等可能な限りA1と環境を揃えて聴いた。
アンプとはバランス接続。
同一メーカーの上位機種を使っているのと、他にプレーヤーとなる機材がないので、どうしても「A1との比較」になってしまうことをあらかじめ言っておく。「クラス」とか「価格帯」とか、そんなものは知らんし比べようもない。
LUMINファミリーはプレイリストを共有できるので、音質比較も著しく快適に行える。
とりあえずこんな感じで。
……
…
A1に肉薄……とは言い難い。
全体的な音調そのものは電源投入直後のS1を思い出した。
清澄で、少し淡泊。音にキャラクター的なものはほとんど感じない。
真っ先に熱さと厚さを感じさせるA1とはまずここで異なる。
静寂と、静寂があるからこそ際立つ鮮鋭感はS1/A1から引き継いだ美点。
A1からS1を経て、ある意味コレが「LUMINの音」になったということだろうか。
音の質感、解像度はA1とかなり近いレベル。しかし、微かな「にじみ」あるいは「ゆらぎ」を感じる。「ぼやける」とは言わないまでも、音の輪郭描写には差がある。このことはS/Nにも影響を与えているようで、A1の方がS/Nでも一枚上手である。
音場はA1に比べて小さい。特に左右の広がりが減る。奥行きはA1と同じレベルで出ているように感じる。
A1との最大にして決定的な差は「声」の魅力である。
S1と比較してもなお独自の魅力として輝くA1の「声」からすれば、T1の声は、何とも……普通である。
ハイエンドオーディオ的な清廉さ、口元の動きが浮かび上がるような再現力はさも当然の如く有していながらも、やはりA1のような独自の魅力はない。まあS1にもないから無理を言っても仕方がないのだが。
何にも増して声の魅力に惹かれてA1を導入した身としては、無いものねだりとは知りつつも気になる部分である。
「声」の魅力を除き、差はあるにしても、一つ一つの要素ではT1はA1に近しいものを持っているようだ。この辺は、A1と同じ基板ならではと言ったところか。
しかし、同じ基板を使ったところで、それ以外の様々な要素で最終的な音がまるで違ってくるというのがオーディオの恐ろしさ。
T1に微かに感じる「にじみ」・「ゆらぎ」はまず間違いなく、そして他の音質的差異も結局はA1とT1の「筐体の違い」に収斂するのだろう。もしかしたら、幾度となく強調している「A1の声の魅力」とは、A1の基板があの強靭な筐体に収まることでこそ生じた妙味なのかもしれない。
個々の要素で肉薄したとしても、総じて見ればA1とT1には明確な差が存在する。
特に、「とにかく歌を聴きたい!」という人々にとって、その差は越えられない壁となる。
順当に、「音調的にはS1の系譜、音質的にはA1の下位機種」という印象。
好みとしてS1≧A1になることはあっても、あくまでA1>T1。
そして個人的に、価格的にも、「T1を導入するだけの資金があるなら是非A1を!」と言いたい。
○参考
【レビュー】LUMIN A1
LUMIN D1 音質編
【インプレッション】LUMIN T1 & D1
LUMIN T1 音質編
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