画質:8 音質:10


映像はVC-1、音声はドルビーTRUEHDの16bit

画質について。
ポストプロセスのデジタル化・高画質化が進行した時代にフィルムで撮影するとかくも清廉な映像になる、という見本である。同じ監督ということで、当然のように画作りは続編である『ダークナイト』と共通する。80年代・90年代のフィルム撮影の映画ではなかなかお目にかかれない見通しのよさ、強靭な暗部、柔らかい光の表現を存分に味わえる。
限りなく重要な黒は要所要所でしっかりと全黒にまで沈み込み、忌々しい色かぶりや黒浮きは最小限に抑えられている。
画質的な完成度としてはやはりダークナイトのそれに準じるが、こちらはHなんとかとの同時リリースだったため、時折画が甘くなったり、暗部にノイズがちらついたりと手抜きの弊害がそこかしこに見て取れる。しかたなくない。
ノーラン版バットマンの続編が出たら、ダークナイトとあわせてリマスターでもしないかしら。

音質について。
BGMがマルチチャンネルに目一杯ちりばめられ、重厚な音楽が全編に渡って体を包み込む。銃声に乏しい映画ながら、その分肉体のぶつかり合い、各種秘密道具の炸裂、バットマンの飛翔、バットモービルの爆走など、音響を面白くする要素には事欠かない。時に重苦しく時に鋭く時に激しく、BGM同様マルチチャンネルを格調高く活用した非常に質の高い音を聞かせる。
前半のとある施設の爆破シーンなどは、ダークナイトにおける病院の爆破シーンの音における原型とも取れる。細かい破片の飛び散る音と小規模の炸裂音が数え切れないほどに積み重なり、究極的に大破壊を表現する職人芸的な音が聴ける。
画質的にも音質的にも、ダークナイトに到る偉大な序章といえる。



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