L1についてハード、ソフト、運用と見てきたが、オーディオ的なセンスに溢れた豪華な筐体であるという一点を除き、さしたる魅力は感じられなかった。
 むしろ、“シンプル”という言葉の意味を履き違えており製品コンセプトがよくわからない、というのが正直な印象だ。

 では、L1の価値とは何か。
 シンプルを通り越してもはや“何もできない”感のあるL1に何を求めるのか。
 L1に10万以上の投資をするだけの価値はあるのか。

 筐体、サーバーソフトの完成度、運用の柔軟性/使い勝手。
 ネットワークオーディオにおけるサーバーに求めるものとして、これ以外に何がある?


 ひとつだけあった。

 音質だ。



 サーバーで音は変わるか? ハード編

 上記の記事で行った検証から、私はサーバーで音は変わるとの立場である。いやはやオーディオは恐ろしい。


 それでは、L1の音質を検証してみよう。


○比較対象

QNAP TS-119(SSD 600GB) + EL SOUNDアナログ電源


○再生環境

LUMIN S1 ←L1と一緒に再び送られてきたのでこちらを使用
BENCHMARK DAC2 HGC(プリとして)
Nmode X-PW10
Dynaudio Sapphire



 白状すると、L1は外部電源の衝撃が大きすぎて色々とやる気を失くしたので、本体も電源もカーペットに直置きした挙句、電源ケーブルもLANケーブルも付属したその辺に転がっていそうなケーブルをそのまま使用した。
 (真面目な)オーディオファンとしてあるまじき設置状態のまま音質検証を行ったことをあらかじめお詫びしておく。

 ちなみに比較対象となるTS-119は、ご存じのとおりネットワークオーディオ黎明期から“高音質NAS”として一世を風靡した感がある。僅かな駆動音も嫌ってSSDに交換し、さらに別途アナログ電源を導入している。なんだかんだ言って15万程度は投資している。
 相手にとって不足はあるまい。


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 比較はプレイリスト上に同一音源をそれぞれのサーバーから登録して行った。
 プレイリストの上がLUMIN L1、下がTS-119。
 よく見ると曲によっては再生時間が異なっているが、これはサーバーソフト(LUMINオリジナルとTwonkyMedia)の違いによるものである。コンマ○秒を繰り上げて表示するか切り捨てるかの違いだろう。
 決して不正をしているわけではない。

 音源には旬のものを入れつつ、静かな曲にやかましい曲、44.1kHz/16bitから352.8kHz/24bit、DSD 5.6MHzまで織り交ぜてある。

 まずはYes / Heaven & Earthの「The Game」から。


 …………


 ……


 ん?


 続けて残りの曲も聴いていく。


 …………


 ……


 ん!?


 聴いた印象から以下の曲も追加。


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 …………


 ……


 何だこれは。


 A1からS1にした時よりも遥かに音が良くなった。
 

 まるで別物だ!


 ギターのジューシーさもボーカルの艶やかさもディティールの表出も演奏の立体感も中低音の充実感も音像の透明感も音場の広がりも、何もかもがあまりにも違う。
 むしろTS-119とは何だったのか。
 とにかくにわかには信じ難い音の変化である。

 L1はサーバーとして見れば機能不全というかそもそも未完成もいいところだが、この音は、音だけは認めざるを得ない。
 正直言ってたまげた。某社の高音質NASと真剣勝負させたい。

 音はいい。
 音だけはいい。
 まるでパラメータを音質に全振りしたかのようだ。

 機能的にはあまりにも貧弱だとしても、高音質ミュージックサーバーという謳い文句は決して間違いではない。

 ソフト面はアップデート発展改善していく余地は大いにあるが、ハード的な音質はそうもいくまい。
 ということは、今でこそ出来たてほやほやで未完成としか言えないL1も、いずれ機能性と高音質を兼ね備えたサーバーに化ける可能性は残されている。


 L1はさしずめ

『発売!! 未完の高音質NAS!』

 といったところか。