※この記事は2012年10月18日に書かれたものです

ヤマハ、192/24対応/ALAC再生可能なネットワークCDプレーヤー「CD-N500」

新たな起爆剤となるか。

2年ほど前、マランツのNA7004で幕を開けた国産ネットワークオーディオプレーヤー(以下NAP)の歴史。

NA7004は“初の国産機”として革新的存在だったことは疑うべくもないが、ネットワーク経由での192kHz/24bit非対応、ギャップレス非対応といった弱点を抱え、そして未だに克服できずにいる。ところでNA-11はどうなったのか。
ネットワーク絡みの設計を共有しているらしいデノンのDNP720SEも、未だにNA7004と同じ弱点を抱えている。

それから約1年後、パイオニアがN-50を発売。
192kHz/24bit対応をひっさげ、国産NAPの真打になるかと思われたが、蓋を開けてみればギャップレス再生非対応に加えて悲惨な出来のコントロールアプリと、ネットワークオーディオに必要不可欠な“快適性”という点ではまるで褒められたものではなかった。

一方で、NA7004とほぼ同時期に発売されながらも、その陰に隠れてあまり目立っていなかった感のあるヤマハのNP-S2000は地道に着実にアップデートを続け、気が付けば192kHz/24bitに対応、アップルロスレスに対応、ギャップレス再生にも対応と、国産機としては頭ふたつ抜けた機能を獲得するに至った。コントロールアプリも(国産メーカーという括りの中では)よく出来ている。
(一応同じレベルの仕様として、麒麟児・スフォルツァートDST-01がある)
そして今回、6万円台にしてCD再生機能も備えたNAPを発売。勿論、ネットワーク再生についてはフルスペックである。

マランツにデノン、パイオニアからオンキヨーに到るまで、AVアンプやミニコンでは徐々にネットワーク再生機能を向上させながらも単品コンポーネントは完全放置、という異常な状況が長らく続いていた中で、今回のヤマハの新製品は間違いなく快挙。先達であるNP-S2000を放置することなく機能を向上させ続け、そして新製品であるCD-N500も同じレベルの機能を搭載する。
“ネットワークオーディオにおける新旧製品の間の機能面での断絶”を乗り越えた快挙なのである。

ただ、あえて言わせてもらえば、ここまできて、ようやく、ようやく、ようやく、機能面ではLINNのDSと同じ土俵に上がっただけなのである。
ことあるごとにDSの名前を出してしまって大変恐縮なのだが、コントロールアプリや周辺ソフトウェアを含む包括的総合的な操作性&快適性、エンジニアリングとマーケティング双方における洗練、メーカーがユーザーに提供できるノウハウなど、ユーザー・エクスペリエンスにおいて未だに圧倒的な差があるということは紛れも無い事実。
またユーザーを取り巻く環境としても、ネットワークオーディオに関するノウハウの提供や整備といったものはメーカー・メディアを含めほとんど手付かずのまま。PC/ネットワークオーディオ界隈の専門雑誌等も出ているが、ネットワークオーディオに関して言えば結局単発的・虫食い的な情報の提示に終始しているように思える。

NA7004の発売から既に2年以上。日本におけるネットワークオーディオの現状は私が夢見た状況からは程遠い。
“結局DSを買うしかない”という状況からさっさと脱し、色んなメーカーから様々な価格帯の“機能的には全部入り”のNAPが手に入り、気にするべきは音質とブランドのみ。そして導入にあたってのノウハウも完璧に整備されている。そんな夢が叶う日はいつか来るのだろうか。

ヤマハには今回のCD-N500の発売に当たって賞賛の意を示すとともに、ヤマハを含む国産メーカー、そして日本のオーディオ業界にはネットワークオーディオの発展のためにより一層の奮起を期待したい。

私も『ネットワークオーディオ』にオーディオの未来と可能性を見出した一人のユーザーとして、使いこなしに関する様々な情報を微力ながら発信していこうと思う。



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