『第9地区』の監督の新作だってんなら……もう見るしかないでしょうよ



画質:13
音質:7


映像:AVC
音声:DTS-HD Master Audio 7.1ch


 画質について。
 『第9地区』は、機械的には高画質だけれど「生理的に“綺麗”と思えるシーンがほとんど登場しない」という素敵な映画だった。エビとキャットフードと肉片を迫真の情報量で見せ続けられたら、高画質と評価できても綺麗とは思えないだろう。
 それに比べると本作は、もちろん汚い部分は汚いが、綺麗と思えるシーンが大幅に増えている。そりゃ「エリュシオン」だもの、綺麗じゃなかったら偽物だ。むしろ両者の映像的・視覚的対比こそ、この映画の大きな柱だろう。
 情報量や解像感といった画質の基礎体力は素晴らしいものがある。4Kマスターに偽りなし。さらに輝く迫真のディティール、前作から続く監督のパワードスーツ愛――今作のそれはパワードスーツというよりは強化外骨格といった趣だが――を存分に堪能できる。
 一方で、理想郷たるエリュシオンの輝かしさ神々しさも実に鮮烈だ。汚濁にまみれた地上とは打って変わった色彩と清涼感。楽園かくあるべきといった映像だ。

見どころ:
人物全般のアップ時における迫真のディティール
エリュシオン……もといエリジウム


 音質について。
 ぱっとしない。
 7.1chというチャンネル数はきちんと活かされているし、音数も多いのだが、なんというか、決定的に噛み合わない。盛り上がるべきところでちっとも盛り上がらず、なんとも気の抜けた印象を受けてしまう。
 音と音の間の空間が広く、どこか空虚な広がりを感じさせる音はそれなりに面白い。
 しかし、戦闘やアクションにおける重厚感が圧倒的に足りない。特に銃声。『第9地区』の時も思ったが、この監督は重い銃声を使う気がまったくないらしい。
 Blu-ray.comでは絶賛されているが、残念ながら私の環境では真価を発揮できなかったようだ。

聴きどころ:
特になし


総評:
 画質は4Kの足音が聞こえてくるようで、文句なしに素晴らしい。
 ただし、音質は私の環境で聴く限りイマイチ通り越して残念な出来だった。さすがに『アイアンマン』よりはマシだが……



【BDレビュー】 総まとめ