※この記事のデータ等は2012年2月28日時点のものです



●イントロダクション
『eLyric』とはアメリカのオーディオメーカー、PS Audioがリリースしているネットワークオーディオのコントロールアプリである。PS Audioとはご存じのとおり、ネットワークブリッジを追加することでネットワークプレーヤーになるPWDというDACを発売している。eLyricは基本的にはPWD用の純正アプリという立ち位置だが、LINNのKinskyと同様、UPnP/DLNA対応の汎用アプリとして動作する。さらに試してはいないが、『eLyric Music Manager』というPC用音源管理・再生・サーバーソフトも自前で用意しているという徹底ぶり。その意気やよし。

価格はiPod Touch/iPad共用で850円。

さて、私は前に「メーカーが提供するコントロールアプリの出来も含めてネットワークプレーヤーの商品価値である」という意味のことを言ったが、果たしてこのことをきちんと理解しているメーカーは一体どれほどあるのだろうか?


●検証環境
無線LANルーター:Buffalo WZR-HP-G450H
NAS:QNAP TS-119 firmware version 3.6.0 Build 0210T
サーバーソフト:TwonkyServer version 6.0.38
レンダラー:MAJIK DS-I
コントローラー:iPad2


●インターフェース&コントロール
まず、eLyricは“横画面”専用である。

いかした起動画面。
s_App再生画面 002


基本インターフェース。各要素に含まれるアイテムの数が表示される。
左上に使用中のサーバー名、上には検索ウィンドウがある。
s_App再生画面 003


楽曲を選択するとこんなウィンドウが出てきて、再生時の扱いを聞いてくる。
「Play Now」は問答無用でいますぐ再生、
「Play Next」はプレイリストの次の曲に割り込み登録、
「Add to Queue」はプレイリストの最後に追加、
「Add to Favorites」はアプリ内で管理するお気に入りに追加(イマイチ使い道がない)、
「Replace Queue」はプレイリストのクリアと追加のセット。
s_App再生画面 004


再生が始まると、左下にアルバムアートがぴょこんと出てくる。
そしてこのウィンドウを押すと……
s_App再生画面 005


!?
s_App再生画面 009
ちなみに音源のスペックの表示機能は無し。(Fragile 96kHz/24bitと表示されているのは私がそういうアルバムタイトルにしているだけ)


プレイリストの確認、使用する機器の確認は右下の「Playlist」「Devices」で行う。
s_App再生画面 006
s_App再生画面 007


右下の「Help」は大したもので、PS Audioに関する説明からUPnPの説明、機器の接続の仕方に到るまでのガイドが現れる。ちなみにそれぞれの項目を選択するとブラウザが起動する形になる。
s_App再生画面 008



●機能
・再生:〇
・一時停止:〇
・停止:×
・曲送り:〇
・サーチ:〇
・ランダム再生:×
・リピート再生:×
・プレイリストでの再生管理:〇
・プレイリストの保存:〇
・検索ウィンドウ:〇
・アルバムアート拡大:〇
・音源のスペック表示:×
・音量調整:〇
・ミュート:×
・機器の入力切替:× (DS使用時)
・電源オンオフ:× (DS使用時)
・機器の再検索:〇

機器の入力切替や電源オンオフといった機能は、純正であるPWDとの組み合わせでは項目が現れるかもしれないが(こういうことはよくある)、DS使用時では不明。

その他に特筆すべきは、アルバムアート拡大時、再生中の楽曲のアーティスト情報がwiki的にぶわっと表示されること。どこぞの音楽情報サイトから引っ張ってきているらしいが、これがかなりヒットする。SSにあるように、私が敬愛する光田康典氏といった日本人アーティストも結構ひっかかるし、試してみたところ初音ミクやら巡音ルカやら、はては同人音楽界隈まで拾ってくる。
日本人アーティストもひっくるめて全部英語表記なのでアレだが、私の知る限りeLyricにしかない素敵な機能である。
s_App再生画面 010


また、「Devices」において“再検索”ボタンがあるのはポイント高し。何かの間違いで機器が見つからない場合は往々にしてあるもので、この機能があるかないかでアプリの再起動の手間が省けて非常に助かるのである。
s_App再生画面 007


なお、レンダラーにiPadを選ぶとAirPlayも使える。わりとどうでもいい。


●操作感
速度検証:33.8秒  ※速度検証の詳細についてはこの記事を参照
SongBook Lite、ChorusDSに続く速さであり、これは操作していてストレスをほとんど感じないレベルのレスポンスを実現しているということに他ならない。
インターフェースもそつなく洗練され、再生に必要な機能も過不足なく備えており、アルバムアートの取得も速く、さらにスクロールもじゅうぶん滑らかと、かなり高いレベルにある。強いて言えば、ひとつの画面で再生操作からプレイリストの管理までできると申し分なかったのだが、逆に言えば弱点といえばそのくらいしかない。
安定性も問題なし。常識的な運指で使う限り、落ちることも固まることもなかった。



●まとめ
「メーカーが提供するコントロールアプリの出来も含めてネットワークプレーヤーの商品価値である」という意味のことを言ったが、果たしてこのことをきちんと理解しているメーカーは一体どれほどあるのだろうか?

答え:殆ど無い。でも、PS Audioはわかっている。

PS Audioは先行するSongBookやChorusDSをかなり研究したのだろう。操作感や機能も含めて、使っていて不満を覚えないレベルに仕上げられている。しかも汎用アプリとして機能する。この辺、無様な国産純正アプリとは大違いである。


5段階評価――3あれば及第点

・インターフェースの洗練度――4
・情報の一覧性――3
・速度――4
・機能性――3
・安定性――4

これで850円はお買い得である。
完実電気はもっとこのアプリの存在をプッシュすべき。



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