テレビにおいては「解像度が4Kであることはもはや優位性ではない」とでも言わんばかりに、「その先」の価値としてHDRに焦点が当たった印象を受けた。
 4K化という意味で大きく遅れているプロジェクターにも嬉しいニュースがあった。

 それにしても、兎にも角にも猫も杓子もHDR。
 はいはいハイダイナミックレンジハイダイナミックレンジ。

 ハイダイナミックレンジは単に明るいということを指すのではない。それはわかる。
 ハイダイナミックレンジをより高度に表現すべく、今回のCESで発表されたテレビではLEDバックライトのエリア分割数が大幅に増えたものが多い。より緻密なエリア駆動ができるようになるので、画質的な恩恵は大きい。これは素直に喜ぶべきことだ。

 ただ……

 結局単なる輝度競争にしかなっていないように見えるのは気のせいだろうか。
 作る側も、伝える側も、言及するのはほとんど最高輝度のことばかり。
 ULTRA HD PREMIUMは最高輝度だけじゃなく黒レベルも規定しているというのに。

 だいたい1000nit以上なんて数値……
 これはあくまでピーク輝度であって映像の平均的な輝度はもっともっと下だろうが、それでも従来より格段に上がっていることは想像に難くない。
 現状使っているテレビやプロジェクターでさえ相当輝度を落として見ていて、それでもなお眩しすぎると感じることがあるのに、これ以上輝度を上げられても正直困る。
 「お使いのテレビでHDRをきちんと表現するには輝度を最大値に設定する必要があります」なんてことになれば、もう目が潰れるんじゃないか。

 ん? 照明下においては輝度が高いほうが間違いなく高画質?
 いや、少なくとも画質を云々するなら完全暗室以外の環境はあり得ない。


 眩しいディスプレイより黒が黒いディスプレイが欲しい。
 ずっと昔にとあるレビューを信じてコントラスト比4万対1のプラズマを買ったらコントラスト比2200対1の液晶よりもよほど黒が浮いていたなんて笑い話、もう二度と御免である。



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