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【BDレビュー】第219回『電脳コイル』

公開日: : 最終更新日:2017/07/05 BD・ホームシアター関連, オーディオ・ビジュアル全般

この時代において攻殻機動隊を再解釈して再構築したとも言える傑作


画質:9 音質:10


映像はAVC、音声はDTS-HDMA 5.1ch/24bit(!)

画質について。
さすが資金源がNHKとでも言うべきか、牧歌的な表層を越えた領域へのこだわりは尋常ではないし、未だにSDで作っているアニメがある中で、画質の基礎体力も頭一つ抜けていると言っていい。きちんとハイビジョンで作っている作品である。
とはいえ、微妙に甘く、全体的に1080Pなのかどうか怪しい。ひょっとしたら部分的に720Pかも。少なくとも、作画素材は一部で解像度が足りずジャギーが出る。
この作品のキャラクターデザインは基本的に「影が無い」のに加え、背景美術もそこまで細密志向ではないため、異様に豪華なアニメーターの競演による作画(≒動き)の魅力はさておき、パッと見の情報量はそれほどでもない。
本作の映像には、常に電脳的なノイズを可視化するフィルターがかかっている。映像の圧縮に伴う技術的弊害としてのノイズではなく、あくまで画作りとしてのノイズフィルターである。似たような例として、デジタル化以降のジブリ作品におけるポニョフィルター、鴉-karas-のすりガラスフィルター、怪-ayakashi-の和紙フィルターなどがある。ランダムに変化するフィルターのため、ある意味フィルムグレインのような、そうでないような、不可思議な質感を映像に与えている。放送波を見ていた時分には気付かなかった質感表現である。
そんなわけで、本作におけるディティールの主役は電脳空間である。彩度の低いごくごく日常的な風景の上に、多層構造のフィルターワークを駆使して電脳空間が表現される。現実と電脳空間のギャップはすさまじく、やわらかい現実に対して電脳空間は鋭角的かつ凄まじい勢いで文字情報や画像情報が現れては流れ、画面いっぱいに光が迸る。そういう意味で、本作における最大の見どころはハッカー同士の電脳戦に他ならない。
画質的には高水準にまとまっているが、前述のとおり全体的に彩度が低く、決してREDLINE的な派手さは無い。しかし、その一見の地味さの中には半ば変態的にまで凝ったディティールが密やかに息づいていたりするのだ。
ちなみにバンディングは少しだが見られる。しかし、ノイズフィルターのおかげで巧妙に軽減されていると言っていい。
見どころ:
4話
25話

聴きどころ:
地上波放送のアニメシリーズでDTS-HDMAの5.1ch・24bit収録なんていう作品はそうそうあるまい。そしてスペックだけの見かけ倒しにならない、真に優れた音響をテレビシリーズで実現している作品は極めて稀である。
絶対的な音質の素性の良さはダイアローグを聴けばすぐにわかる。極めて明瞭にして、声にならない口の動きも明確に捉え、演技の妙味を掬い取っている。
BGMのサラウンドミックスも非常にハイレベルであり、なんとなくサラウンドにしてみましたといった次元ではない。ダイアローグ同様オーディオ的な質感にも優れ、ハッとするような生々しさを随所に感じ取ることができる。
そして音響効果を生み出す音の数々なのだが、こちらでも電脳空間が主役になる。
サッチー、Qちゃん、メガビー、直進くん、追跡くん、2.0、心躍る電子の光は日常空間のそれとは打って変わって強烈なインパクトとダイナミズムを持って空間を跳ね回り、認識の魔術空間に音をもって彩りを添える。
個人的に、電脳空間の可視化という点で、電脳コイルは攻殻機動隊SAC 2nd GIGのさらに先の地平に到達していると思っているのだが、映像だけでなく、音響効果もまたその感覚の醸成に一役買っている。
聴きどころ:
4話
イサコ様全般



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