最近のオーディオ雑誌等を読んでいると、“USB出力を搭載したネットワークオーディオトランスポート”に関連して、「USB DACを使ってネットワーク再生が可能になる」「USB DACがネットワークオーディオプレーヤーとして使える」というような文言を目にする。
 そして「革新的」とか「業界を大きく揺るがす」とか言われているようだ。

 少し思ったことをまとめてみる。


 この手の文言が増えた直接的な理由はこのニュースだろう。

<音展>バッファローのNAS“DELA”が大きく進化、オーディオプレーヤーとしても使用可能に

 またタイムリーなことに、こんな新製品情報もある。

Aurender、USB-DAC直接接続できるDSDネットワークトラポ「X100L」

 あと、コレにももっと注目すればよかったのに。やはりネームバリューの差か。

高橋敦のオーディオ絶対領域【第85回】USB-DACがネットワークプレーヤーに変身! SOtM「sMS-100」を試してみる


 「USB DACを使ってネットワーク再生が可能になる」
 「USB DACがネットワークオーディオプレーヤーとして使える」
 “ネットワーク再生”なるものがいったい何を指すかはさておき、まぁ言いたいことは分かる。
 要は、「USB DACを用いる狭義のPCオーディオの形態のまま、ネットワークオーディオ的なコントロールが可能になる」ということだ。

 これは別に革新でも何でもないし、驚くようなことでもない。

 例えばMPDしかり、JRiverとJRemoteの組み合わせしかり、そんなことはとっくの昔に可能になっていたからだ。業界的にメジャーではないことも確かだが。
 “USB出力を持ち、ネットワークオーディオ的なコントロールが可能で、なおかつ一般的なPCではない”というまどろっこしいハードウェア――もとい、純粋なオーディオ製品の存在が、DELAの登場で脚光を浴びたのは事実だが、その製品だけを見て「夢のような」とか言われても困る。夢ではない。既に実現しているのである。

 ところで、単体のNASとしても機能する(というよりそれが本懐で、ネットワークオーディオトランスポートとしての機能はあくまでオマケ)DELAや、今回のAurenderの新製品などは、業界はいったいPCオーディオとネットワークオーディオのどちらにカテゴライズするのだろうか。USB出力を持っているからPCオーディオだろうか? それともネットワーク接続が必須という点でネットワークオーディオだろうか? 私にはわからない。そしてこんなことを考える時点で不毛な気もする。気にするだけ無駄なのである。

 いまいち言いたいことが上手くまとめられなくてアレなのだが、何にせよ、DELAが業界に空けた風穴は大きい。
 特に、なんだかんだ言って「ネットワークオーディオの快適さ」に憧憬を抱いていた(ように思われる)PCオーディオの領域にとって、大きなインパクトだったようだ。
 重要なのは、実質的なUSBオーディオと化したPCオーディオの領域も、コントロールの方法論としてのネットワークオーディオの恩恵を受けられるという事実が広まることだ。前から言っているように、再生機器に何を使うかは問題ではない。
 「PCオーディオ=実質的なUSBオーディオ vs 狭義のネットワークオーディオ」という不毛極まる対立の構図がさっさと終わり、私が言うところの「快適な音楽再生を実現する方法論としてのネットワークオーディオ」が浸透することを期待する。


 さ、その前に音源をしっかり管理運用してライブラリを構築しよう。

 すべてはそこからだ。



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