画質:10☆ 音質:10


映像はAVC、音声はリニアPCMステレオの16bit

画質について。
冒頭のモノクロシーン。もういっそ全編モノクロでもいいや、と思わせる仕上がりに舌を巻き、その後の出来に大いに胸を躍らせることになる。
そして“現在”。
まったくもって見事としか言いようが無い。
あらゆる色に生気がみなぎり、人間たちには精気が溢れ、目映いばかりの輝きが全編に満ちている。深い愛情に裏打ちされたデジタルレストアの結果か、80年代の作品としては望外の精細感と情報量をフィルムの奥深さの中に包み込んだ画は、近年の映画に対しても同じ土俵で比較し得るだけの素晴らしい仕上がりとなっている。
もちろん、細かく見ていけばやはり場面ごとに画質のばらつきはあるし、暗部にはそれなりにノイズも散見される。
しかし、千変万化する海の表情をこれだけ生命感溢れる画で立て続けに見せられると、もはやそんなものはどうでもよくなってしまう。
80年代の作品としてこれほどまでに画質で感動したのはブレードランナー以来。
結局のところ、旧い作品を蘇らせるのは作品に対する“愛”以外のなにものでもないということのいい証明である。

音質について。
ステレオ収録ながら、音響の作り方は抜群に巧みで、サラウンド感は十二分。後ろを振り向いてしまったり音声フォーマットを確認するようなことも何度かあった。
音響の巧みさ以外にも特筆すべきなのはオーディオ的な完成度の高さ。
目を瞑ればそのまま良録音のCDと言ってしまえるだけの素晴らしい音質で、劇伴としての質の高さもあいまって、映像の浸透力をますます高めている。
マルチチャンネル・サラウンドではなく、ステレオ音響の到達点として、非常に評価できる内容となっている。



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